EQという言葉を耳にしたことはありますか?EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、日本語では「心の知能指数」と訳されています。心の知能指数はビジネス社会で成功するうえで必須とされており、近年注目が集まっているスキルです。
しかし、心の知能指数とは何か明確に理解できている人は多くありません。そこで、今回は心の知能指数について、能力の特徴や指数の高め方などを紹介します。
心の知能指数とは
EQとは、心理学者のダニエル・ゴールマンが世界に広めた感情知能に関する能力です。この章では心の知能指数とは何か、知能指数(IQ)との違いや能力の測定方法とあわせて解説していきます。
心の知能指数の要約
心の知能指数(EQ)とは、自分と他者の感情を理解し、状況に応じて適切にコントロールしたり表現したりできる力です。具体的に心の知能指数とは、次のような指数を指します。
- 自分自身を奮い立たせ、失敗しても粘り強く頑張れる力
- 突発的な感情をコントロールし、目先の利益や快楽に飛びつかない力
- 自分の気分をうまく調整して客観的に対応できる力
- 他人の弱さや苦しみに共感できる力
心の知能指数(EQ)と知能指数(IQ)の違い
心の知能指数は、EQの測定で明らかにすることが可能です。EQの測定方法はいくつかありますが、代表的な測定方法としては「質問回答」や「行動観察」などがあります。ただ、EQは新しい概念なので、定義や測定方法については未だ研究段階です。
ちなみに「EQ測定-A Real Me」は有名なEQ測定の一つです。この「EQ測定-A Real Me」はダニエル・ゴールマンによって作成された測定方法で、10の質問に回答して測定値を導き出します。
「自分のEQがどれくらいあるか知りたい」という人は、他にもインターネットから無料で簡易的にEQを測定できるツールがあります。興味のある人はチェックしてみてください。
心の知能指数の測定方法
心の知能指数(EQ)と混同されやすい指数に知能指数(IQ)があります。心の知能指数(EQ)と知能指数(IQ)の相違点は「測定している対象」です。
心の知能指数(EQ)は「自分と他者の感情を理解し、状況に応じて適切に感情をコントロールしたり表現したりできる力」を測定します。一方、知能指数(IQ)は論理的思考力や記憶力など、学力の測定が主な目的です。
学校教育ではIQの高さが成績や進路に影響を与えますが、ビジネス社会においてはIQよりもEQの高さが重要視されています。なぜなら、ビジネス社会でIQはEQがあってこそ活かされる能力だからです。
また、知能指数(IQ)は先天的な特性が強く、能力は遺伝である程度決まっています。しかし、心の知能指数(EQ)は後天的な能力なので、大人になってからも自分のやる気次第でいくらでも伸ばせすことが可能です。
心の知能指数の高い人の特徴
心の知能指数とは何かが理解できたところで、ここからは能力の具体的な特徴について解説していきましょう。ここでは、心の知能指数が高い人が持つ6つの特徴について解説します。
特徴①:批判を冷静に受け止める
心の知能指数が高い人は自分の感情をコントロールする力に長けているため、批判があっても冷静に受け止める強さと客観性があります。
特徴②:自分の間違いを素直に認める
心の知能指数が高い人は自分に非がある場合、素直に間違いを認めた方が早く問題解決ができるとわかっています。ゆえに自分のプライドを守る行為に固執しません。
特徴③:話を聞くのが上手
心の知能指数が高い人は自分が話したい内容より、相手の話したい内容を優先します。また、相手が言葉では言い表せない感情も汲み取れることが特徴的です。
特徴④:他者への好奇心が強い
心の知能指数が高い人は他者への好奇心が強いため、人間観察をよく行ったり、周りのちょっとした感情の変化に気づきやすかったりします。
特徴⑤:他人のミスに寛大
心の知能指数が高い人は他人にミスがあっても「自分にもあり得るミスだ」と寛大に受け止める傾向にあります。
特徴⑥:変化を受け入れる
心の知能指数が高い人はドタキャンや予定の変更にも冷静に対応できるため、状況の変化に応じた柔軟性があることが特徴的です。
心の知能指数の低い人の特徴
一方で心の知能指数が低い人には次の6つの特徴があります。それぞれ解説していきましょう。
特徴①:すぐ感情的になる
心の知能指数が低い人は自分の意のままにならないと感情的になり、怒鳴ったり泣いたりして相手をコントロールする傾向にあります。
特徴②:自己中心的な言動が多い
心の知能指数が低い人は自分第一主義なので、自分が良ければ他はどうでも良いという自己中心的な言動の多い点が特徴的です。
特徴③:他人のミスを許せない
心の知能指数が低い人は自分のミスは甘く、他人のミスには厳しい傾向にあります。
特徴④:プライドが高い
心の知能指数が低い人はプライドが高く、他人から自分が批判されるとすぐに物事を投げ出すことが特徴的です。
特徴⑤:一般常識やルールを理解できない
心の知能指数が低い人は自分基準でしか物事を考えられません。ゆえに、一般常識やルールだとあり得ない言動を取る場合があります。
特徴⑥:グチや悪口が多い
心の知能指数が低い人は他人に対して協力的ではないため、グチや悪口が多いことが特徴的です。
心の知能指数を高める方法
心の知能指数は後天的な能力なので、大人になってからでも高められる能力です。ここでは、心の知能指数を高める代表的な方法について4つ紹介します。
方法①:感情日記をつける
感情日記とは毎日の行動や感情を紐付けた記録です。感情日記をつけると感情をコントロールして自分を大切にできたり、自分の隠れた思い込みに気付いて幸福度を高めたりできます。感情日記をつける行為はEQの要素における「自己認識」に強く作用する方法です。
感情日記には「短期的な観点」と「長期的な観点」の2種類があります。短期的な観点とは、毎日の感情をコントロールしてポジティブに生活するうえでの視点です。そして、長期的な観点とは感情の背後にある信念や思い込みを見つけて自分を変える視点を指します。
感情日記をつけると、短期的な観点から自分の感情をスッキリさせてより良い方向に誘導させられます。そして、長期的な観点からは自分の根本にある信念を見つけて自分を変えることも可能です。
ステップ①:感情の吐き出し
感情日記の書き方は次の3ステップで簡単に完結します。まずは、自分の内側に抱えているモヤモヤを吐き出すように、思うままに感情を書き出しましょう。
- 今どんな気持ち?(感情)
- 何があった?(状況)
- 何を考えたらその気持ちになった?(思考)
このような3つのポイントをイメージして書くことが大切です。
ステップ②:感情の見直し
感情をうまく吐き出して気持ちがスッキリしたところで、一度書いた文章を読み直してみましょう。その際には、次のようなポイントに着目してみましょう。
- スッキリ感情を出しきれているか?
- 吐き出した感情に納得できるか?
読み直しをすると自分の感情に対する客観的な視点が生まれて、自分の感情と向き合えます。
ステップ③:感情の書き直し
自分の文章に違和感がある場合は、心の中のモヤモヤがスッキリするまで文章を書き直してください。日記を書き直す作業は物事を捉え直すして認知の歪みの矯正に寄与します。書き直す際のポイントは次の通り。
- 感情の本当の原因は何か?
- どんな言葉選びがしっくりするか?
- どんな表現に書き換えたらスムーズか?
書き直しは自分の心の奥底にある信念や思い込みに気付けるというメリットがあります。
方法②:ノンフィクション小説を読む
EQにおける重要な能力の一つに「共感力」があります。そして、この共感力は「フィクション小説に夢中になると上がる」と、リンカーン大学のマティス・バル教授の実験研究により明らかになりました。
マティス・バル教授は被験者らに「フィクション小説を読ませた後にどれくらい熱中したか」を測定。結果、物語に夢中になった人ほど共感力が上がり、あまり熱中しなかった人の共感力は上がらないとわかったのです。
共感力を上げるためのフィクション小説の読み方のポイントは一つ、「1週間続けてフィクション小説を読み続ける」です。ある程度長い時間をかけてフィクション小説を読むと共感力は養われます。
「仕事に役立つ本以外は時間のムダ」「普段からビジネス新書しか読まない」という人も、試しにフィクション小説にもチャレンジしてみてください。ビジネスで役立つ共感力を高められます。
方法③:マインドフルネスを習慣づける
マインドフルネスとは、今の気持ちや身体状況をあるがままに受け入れる習慣づけで、「今、この瞬間」を大切にする生き方に寄与します。マインドフルネスは欧米の医療や教育、ビジネスの場で実践されているストレスマネジメントの手法の一つです。
また、マインドフルネスはEQにおける自己認識能力や自己管理能力の向上にも役立ちます。
マインドフルネスへの導入
マインドフルネスの方法はいくつかありますが、ここでは誰でも今すぐ簡単に実践できるマインドフルネスの方法をみていきましょう。導入の手順は次の通りです。
- 効果的にマインドフルネスを実践するには、導入段階でリラックス状態にあることが重要です。
- 背筋を真っ直ぐに伸ばし、イスに浅く腰掛けてください。その際、顎は前に出たり引きすぎたりしないように注意しましょう。
- 目を軽く閉じてください。
- 鼻から7秒息をゆっくり吸います。呼吸の動きに意識を向けてください。
- 呼吸を吐く時は鼻から10秒かけてゆっくり吐き出しましょう。このときの呼吸の動きに意識を向けてください。
この呼吸の一連の流れを、3回〜5回ほど行ってください。
マインドフルネスの方法
導入段階が終わったら、次はいよいよマインドフルネスの呼吸法に入ります。導入段階から間をおかずに実施しても構いません。手順は次の通りです。
- 目を閉じたまま脱力します。手は両膝の上に置きましょう。
- 自然に呼吸します。
- 心と体を落ち着けて呼吸に意識を集中させてください。
- 呼吸から意識がそれて雑念が出てきた時は、雑念を追わずに物事をただ流しましょう。
- 再び呼吸に意識を戻します。
- 再び雑念がきた時は雑念に対してラベリング(自分の不安やイライラへの評価)を行ってください。
- その気づきをサラサラと川に流す様子をイメージしましょう。
- 再び呼吸に意識を戻してください。
この流れを10分〜20分くらい繰り返すと徐々に雑念が減っていき、呼吸に意識が戻ってきます。ただ、一度ではなかなか雑念を消すのは難しい場合もあるでしょう。雑念を消すのが難しい最初のうちは、3分〜5分ほどの短時間からマインドフルネスを習慣づけてみてください。
方法④:傾聴スキルを学ぶ
「伝え返し」は傾聴スキルを習得するうえでの基本です。なぜなら、伝え返しにより相手の話す内容を理解できる土台に立てるからです。
伝え返しは、おうむ返しとは異なります。おうむ返しは相手の言葉を単に繰り返すコミュニケーションです。一方、伝え返しは聴き手が話を聴きながら理解できたと思っている内容が、話し手にとってしっくりくるか確認するコミュニケーションです。
伝え返しをマスターできると、より深く相手の感情を理解することが可能です。伝え返す際には「〜ですよね?」と確認の意味を込めた語尾を使用してください。
疑問形で伝え返すと「私にはまだわかっていないことがあるはず」という、共にわかり合おうとする謙虚な姿勢を示せます。逆に、「〜ですね」と断定的な語尾の使い方は、傾聴のスタート地点で使用すると相手が「自分の気持ちを決めつけられた」と受け取る場合があるので避けましょう。
ただし「〜ですね」という表現も話の終わり部分で相手の話の要約として利用するのは効果的です。
心の知能指数について学べる本
心の知能指数についてさらに知識を深めたい人のために、2冊の本を紹介しましょう。
EQ こころの知能指数
1冊目はダニエル・ゴールマンの著書『EQ こころの知能指数』です。「人間の能力はIQでは測れない。ダニエル・ゴールマンの、「人生を成功に導くかはEQ(心の知能指数)の高さによる」という考え方が世界に衝撃を与えるきっかけになった本です。
EQとは何なのか、調査や事例がまとまっている本なので、この著書だけで心の知能指数に関する基本的な知識を習得できます。「とりあえず心の知能指数について知りたい」という人におすすめです。
心の知能指数を高める66のテクニック
2冊目は、トラヴィス・ブラッドベリーとジーン・グリーブスの著書『心の知能指数を高める66のテクニック』。この本は「実践的に心の知能指数を伸ばしたい人」におすすめです。心の知能指数について4つの能力に分けて説明してあり、それぞれの能力をどのようにして高めるかについて書かれています。
書籍にはオンラインテストのパスワードがついているため、自分のスコアや特徴を把握も可能です。自分のスコアがわかると、特に高めるべき能力と方法が明確にわかります。「自分の感情を認識して管理したい」という人は、本書でEQスキルの習得が可能です。
まとめ
今回は、心の知能指数とは何なのか、能力の特徴や指数の高め方などをについて解説しました。要点は次のとおりです。
- 心の知能指数とはEQの能力における指数である。
- 心の知能指数が高い人は自分や他者の感情を的確に把握し、管理したり表現したりができる。
- 心の知能指数を高めるには「感情日記」「マインドフルネス」「傾聴」が効果的である。
心の知能指数は知能指数とは違い、大人になってからでも高められる能力です。EQは特にビジネス社会で重宝されるスキルなので、本記事を参考に心の知能指数を高める習慣づけをしてみてはいかがでしょうか?
なお、EQを高めることに興味がある方は、こちらを参照してみてください。