EQの知識をなかなか実生活で活かせないと悩んではいませんか?
今やビジネス社会や教育現場で必須のコミュニケーションスキルとなったEQ。しかし、知識を実際に行動として活かせている人はそう多くありません。
そこで、本記事ではEQを高める方法について、具体的な実践方法やEQの伸ばし方に関する書籍の紹介も交えながら紹介していきます。
EQとは「感情知能」
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略称で、自分と相手の感情を理解しシチュエーションに応じて自分の感情を統制できる能力を指します。ここでは、EQが注目を集める理由やEQとIQの違いについて解説していきましょう。
EQが注目を集める理由
最近EQが注目を集めている理由の一つとして、ビジネス社会におけるコミュニケーション能力の重要性が再認識されていることがあげられます。『Psychology Today』に掲載された記事によると、職場でのパフォーマンスが高い人の90%はEQが高く、仕事ができない人ほどEQが低いという結果がわかりました。
つまり、EQを高めることは、日常生活のみならず、チームとしての目標達成や成果の安定的な生産にも寄与するということ。EQの向上によって、「できるビジネスパーソン」に近づけられる可能性を見出せる点が、多くの人を魅きつけている理由だと考えられます。
EQとIQの違い
EQと間違えやすい言葉にIQがあります。IQとは「Intelligence Quotient」の略で、EQと次のような相違点があります。
- 測定対象(EQは自分や他人の感情を認識する能力を、IQは情報処理能力を測る)
- 先天性か後天性か(IQは先天的な知能だが、EQは後天的な能力なので大人になってからも伸ばせる)
- 【2021】IQとEQの違いは?IQとEQで分類する4つの人の特徴
EQが高い人の特徴
では、EQの高い人には具体的にどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、EQの高い人が持つ主な6つの特徴を紹介します。ご自分と照らし合わせながら読み進めてみてください。
特徴①:何ごとも諦めない
EQの高い人は何ごとにも粘り強く取り組み、結果をだすための努力を怠りません。EQの高い人は自分の感情をしっかりとコントロールできるため、一時の感情に流されずに最善を尽くせます。
特徴②:素直に間違いを認める
EQの高い人は自分の間違いに気づいたら誤魔化したり人のせいにしたりせず、素直にミスを認める勇気があります。EQの高い人にとっては、間違いの言い訳を探す思考自体が時間のムダなので、自分の正当性を感情的になって証明するよりも、素早い軌道修正を優先するのです。
特徴③:ネガティブな状況でも冷静
EQの高い人は失敗を冷静に受け止める心の強さがあります。したがって、他人から批判されたりトラブルがあったりしたとしても、動揺したり感情的になったりすることはありません。ネガティブな状況であっても、間違いを即座に分析して改善点を見出し、次に活かす行動を取ります。
特徴④:人の話を聴くのが上手
EQの高い人は、自分のどのような感情が相手の話の趣旨を冷静につかむ上で邪魔になっているかを把握しているため、事実と自分の解釈を区別しながら人の話を聴けます。
特徴⑤:違う価値観に寛容的
EQの高い人は自己を認識する能力が高いので、自分の価値観や準拠枠で他者を判断しません。ゆえに、自分の価値観とは違う人の考え方や行動も受け入れながら偏見をもたずに耳を傾ける姿勢があります。
ビジネスにおける交渉のもつれや人間関係のトラブル対処においても、相手を否定することなく適切な方向に物事を導けるスキルを持っているのです。
特徴⑥:厳しい現実を誠実に伝える
EQの高い人は組織にとって都合の悪い事実を隠さずに誠実に伝えます。厳しい現実もよい結果と同じくらい重要な事実だと認識しているため、自分や他人の感情に流されることなく誠実な対応が取れるのです。
EQが低い人の特徴
一方で、EQの低い人の特徴は何でしょうか?この章では、EQが低い人の持つ主な特徴を6つ紹介します。
特徴①:共感性が低い
EQの低い人は他人がどう感じるかより自分の感情を優先させる傾向にあり、他者の弱さや苦しみに寄り添うことが苦手です。
特徴②:他人のミスを許せない
EQの低い人は自分にとっての常識が絶対なので、他人の間違いや考えを否定し、柔軟性や寛容性が乏しい傾向にあります。
特徴③:グチが多い
EQの低い人は会社や学校で自分の思うようにいかないと、他人に不平不満をぶつける傾向にあります。
特徴④:協調性が低い
EQの低い人は協調性が低く、他人への思いやりが欠けるわがままな行動を取りやすい傾向にあります。
特徴⑤:すぐ感情的になる
EQの低い人は感情をうまくコントロールできないので、すぐに感情的になって喜怒哀楽を表現します。
特徴⑥:プライドが高い
EQの低い人は自分の意見が絶対に正しいと思っているので、周囲の考えや空気を読まないで自我を押し通す傾向にあります。そして、自分の意見を否定されるとプライドが傷つけられたと感じて過剰に怒りを表します。
今すぐできる!EQを高める7つの習慣
先述したとおりEQは後天的な能力なので、成人後も能力を高めることが可能です。ここでは、EQを高めるために今すぐ実践できる7つの習慣について解説します。
習慣①:感情日記をつける
自分の感情を日記につけて可視化すると、自分の行動と感情との関連性を見出せます。
感情日記を書く際には、通常の日記のように出来事や気持ちを漠然と書くのではなく、「どうしてこの行動を取ったのか?」「なぜそのような気持ちになったのか?」という理由も一緒に記入しましょう。行動や感情の理由を一緒に書くと、自分のネガティブな感情や行動を、冷静かつポジティブな視点で見直せるからです。
対人関係における怒りや葛藤などのネガティブ感情への捉え方は難しいものです。しかし、感情の可視化ができるとコントロール力や他者に伝える力も伸びるので、EQがアップしていると自覚できるでしょう。
習慣②:相手の良い部分を見つける
相手のよい部分を見つけて認める習慣を持てると、自分の潜在意識に働きかけながらEQを高められます。なぜなら、ポジティブな特徴を探そうという意識が働くことで、無意識にポジティブなことへのアンテナが立って、脳が良い情報を収集しようするからです。
ただし、「相手のよいところを見つける」といっても、嫌いな相手の部分についてまで自分の本心を押し殺して褒める必要はありません。相手がもつ「素敵な部分」「見習いたい部分」など、ちょっとした面に目を向けることから始めてみましょう。
周囲からの敬意を集めたいのなら、前提として「相手を尊敬する」という姿勢が大切です。高いEQを持つ人は「自分にはない相手の良い部分を素直に認められる」ことが、結果として自分の成長や他者とのよい関係を構築するために重要だと知っているのです。
習慣③:1日10回感謝の言葉を口にする
感謝やポジティブな感情は、身体をリラックスさせる効果があると言われています。感謝を伝えることによって人間に幸福感を自覚させる物質である「セロトニン」「オキシトシン」「エンドルフィン」の3つが活性化されるためです。
とりわけ、エンドルフィンは感謝する側と感謝される側、両方の心身にとって幸福をもたらすと言われています。小さなことでもお互いに感謝しあえる関係は、人間関係を良好にさせるうえで有益な習慣です。
習慣④:アサーション
アサーションとは、「相手をイヤな気持ちにさせないで、立場を尊重しながら自分の主張をしっかりと伝える」というコミュニケーションで、EQ向上にも活かせるスキルです。
自己主張が苦手な人が自分の気持ちにウソをつかずに優しく「ノー」と相手に伝える際に、アサーションは役立ちます。相手の頼みを断る行為は、相手の人格を否定するのとは違います。
自分の本心に反する行為を続けてムリをしないためにも、自分の意に反する依頼を承諾したくないときには、アサーションを活かした「ノー」の言い方を実践してみましょう。
アサーションを考慮した断り方としては、「自分にとって大切なものは何か」を明確にすることがポイント。そして、「本当は断りたくないのですが」などと、丁寧に前置きをしてから断る理由を伝えると、断られた相手側の気分を害すことなく円満に対処できるでしょう。
習慣⑤:人の話をしっかり聴く
相手の感情の理解は相手の思いを言葉で直接聴くことが最も有効であるため、人の話をしっかりと聴く習慣はEQを高めるうえで役立ちます。人の話を聴く際には、特に次の観点に関心を持って聴いてみましょう。
- 相手が話しているときの気持ち
- 自分が相手にかけられる言葉
- 自分が相手にかけるべきではない言葉
- 自分はただ話を聞いてあげるべき可能性
加えて話を聴く際は、次のような姿勢を意識してみると、より相手から「話をしっかり聴いてくれている」と感じてもらえます。
- 適切なタイミングの相槌
- 理解をしめる言葉の反復
- 適度に相手の目を見る。
このように話を聴く際には言葉だけでなく、非言語の面もふまえながら相手の気持ちへの共感を示すことが重要です。非言語は他者の認知に言語以上の影響を及ぼす場合もあります。
「自分の話をしっかり聴いてくれている」と姿勢を言語と非言語の両側面を聴き手が意識することで、「あなたの話を聴きたい」という熱意が相手に伝わりやすくなります。
習慣⑥:純文学を読む
純文学を読むと、EQにおける「共感力」が高められます。
アメリカのニュースクール大学で、書籍を読ませるジャンルごとに被験者を分け、「他者に感情移入ができるかどうか」のチェックテストを実施しました。その結果、純文学のジャンルを読んだ実験のグループのみ共感力が飛躍的に上がることがわかりました。
つまり、「共感力を手っ取り早く高めたい」という人は、純文学を読む習慣を持つと、他者の感情理解が高まるとも言えます。
習慣⑦:マインドフルネス
マインドフルネスをして瞑想をしながら内省の時間をもつと、EQとIQの両方の能力を伸ばせます。
マインドフルネスには、ストレスや不安を取り除き、心を休める効用があり、仕事のパフォーマンスや生産性があがると実証されているからです。たとえば、脳機能面では集中力や記憶力が向上し、マルチタスクで仕事に集中できるようになります。
マインドフルネスの方法は次のとおりです。
- 背筋を伸ばして座り、目を閉じる
- よい姿勢を保持し、4秒間心の中で数えながら息を吸う
- 4秒後に約2秒間軽く息を止める
- 息を止めた後、6秒間かけてゆっくりと息を吐く
- 息を吐き切った後、自然に息を2秒間止める。
一連の動作をおこなううえでのポイントは次のとおりです。
- 力みすぎると苦しくなるので身体に力を入れすぎない
- 呼吸のみに意識を向け、浮かんだ感情や思考は手放す
このようなマインドフルネスの時間を、毎日20分間習慣づけると、EQ向上にも高い効果が期待できます。
EQを高める方法が学べる本
EQを高める方法をさらに深く学びたい人は、EQを実践的に伸ばす方法について特化した書籍にあたってみてください。
この章では、EQを高める方法が学べる本について紹介します。
EQ 2.0 :「心の知能指数」を高める66のテクニック
画像引用元:Amazon
「EQのテストを受けて、本書を読んでトレーニングし、6カ月後に任意で再度EQテストを受けて変化を確認する」という本です。巻末にEQテストを受けるためのコードが付属しており、アクセスしてテストを受けると、自分のEQの改善点が読むべき本のページと一緒に表示されます。
本書は、EQを利用したテクニック本というよりは、自分自身のEQを診断して内省するのに有用です。したがって、EQについて多少の知識はあるが、なかなか生活の中で行動に活かせていない」という人が自分の現在地を知り、中長期的にEQを伸ばすのに役立ちます。
EQトレーニング
画像引用元:Amazon
著者の高山直氏はEQ理論の提唱者の1人であるサロベイ・メイヤー博士と協力し、日本独自のEQ理論を推進してきた人物。本書は、現代で求められるEQスキルを紹介しながらEQの鍛え方について論じています。
また、書籍には自分のEQを測定できるテストが付属しているため、自分のEQがどれくらいかを知ったうえで鍛え方を試せます。再度EQテストを受けることで、訓練の効果も確認可能です。
EQは時代ごとに進化しているため、EQについてすでに知っている人でも新しい学びを得られる1冊でしょう。
まとめ
今回は、EQを高める方法について、具体的な実践方法やEQの伸ばし方に関する書籍の紹介も交えて紹介してきました。要点は次の通りです。
- EQはIQとは違い大人になってからでも伸ばせる後天的な能力
- EQを高めるには7つの方法があり、習慣づけることで効果を発揮する
- EQを伸ばすための実践方法については専門の書籍にあたってみるのも良い
EQはビジネスパーソン必須のコミュニケーションスキルでありながら、誰でも後から伸ばせる能力です。最初のうちは習慣づけが大変かもしれませんが、生活に取り入れやすい手段から実践することで着実にEQの向上を実感できるでしょう。