EQとは、自分や他者の感情を、状況に合わせてコントロールする能力です。こころの知能指数とも呼ばれ、数値で表すことのできない非認知能力と言われています。
EQは、家庭で工夫することで大きく伸ばすことも可能です。今回は、EQとIQの違いについて解説しと、それぞれの特徴と高める方法を紹介します。
EQとは「こころの知能指数」
「EQ」ということばを耳にしたことはあるでしょうか?
EQは「Emotional Intelligence Quotient」の略称で、日本では「こころの知能指数」と訳されます。アメリカの心理学者である、ピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏が提唱した理論であり、自分の感情をコントロールしたり、相手の気持ちを理解したりすることで、人間関係を良好にする能力です。
EQの高い人は、その場の状況に応じ自分の感情をコントロールして、他者と接することができます。また、他者の気持ちの動きにも敏感で、思いやりを持って接し方ができるため、衝突を避け良い人間関係を構築できる能力です。
それらのことから、EQの高い人は多くの人に好かれ、信頼を得られる傾向にあります。
IQとは「頭の良さ」
EQよりも、「IQ」の方が長く使われ、耳に馴染んでいる用語かもしれません。IQとは「Intelligence Quotient」を略した言葉であり、論理的・合理的思考に基づいた行動ができるかなどの、いわゆる「頭の良さ」と示す概念です。
IQは生まれ持っての能力が大きく関わるといわれており、伸ばすことは難しいといわれています。
EQの高い人の特徴
EQの高い人とそうでない人には、どのような違いがあるのでしょうか?実は、EQの高い人には、共通して見られる好ましい特徴があります。その一例を挙げてみましょう。
コミュニケーション能力が高い
EQの高い人は、自分の感情をコントロールし、その状況に合わせた表現に変えられるため、他者とのコミュニケーションに長けています。また、自分の言動によって相手がどのように感じる可までを考えているため、トラブルや行き違いが起きにくいのです。
普段から自分自身が強く意識せずとも、相手のことを思いやった言動を取るので、「思いやりのある人」として認識されています。
自分の強みや弱みを知っている
EQの高い人は、自分の内面から目をそらさずに見つめるので、自分のことをよく知っています。自分の強みや弱みを認識し、できないことは他者の力を借りることも厭いません。
そして、ありのままの自分を認め、肯定しているため、多少の失敗で挫折することがないことも特徴です。失敗しても「自分には向いていないだけ」と、ポジティブに切り替えてチャレンジします。
自分の感情をコントロールできる
EQの高い人は、状況に応じて自分の感情をコントロールします。もしも相手のことばに感情が揺さぶられることがあっても、冷静さを保ち、無用にぶつかることがありません。感情的になれば、人間関係も仕事も、すべてのことが上手くいかなくなることを知っているのです。
また、自分の言動から、相手がどのような感情を抱くかに敏感です。特にリーダー的な立場にある人は、必要に応じた表現を用いて、組織の牽引につなげます。
変化を恐れない
とかく変化の激しい世の中ですが、EQの高い人はどのような変化も恐れません。世の中に、変わらぬことなど何一つないと知っているからです。
変わって行く状況を柔軟に受け入れ、自分の為すべきことを見つけて力を注ぎます。そのため、変化に適応するためのストレスを受けにくいのも、EQの高い人の特徴といえるでしょう。
相手の感情に振り回されない
EQの高い人は、相手の感情に振り回されることはありません。相手に深く共感し、同情することはあっても、自分まで流されてしまうことはないのです。自分の感情と他者の感情との境界線をしっかりと持っています。
IQの高い人の特徴
それでは、IQの高い人の特徴も紹介しましょう。EQとは異なる特徴が見られます。
理解力がある
IQの高い人は理解力に長けています。整理されていない会話や説明の中でも重要な部分をすぐに探し出し、認識します。難しい話でも本質を見抜き理解できることが多く、複数回説明を受ける必要がありません。
情報処理能力の高さの表れでもあり、学校やビジネスの場でも優位に生かすことが可能です。会話もうまく、論理的にわかりやすく相手に伝えられます。ただし、感情よりも真実を伝えることを優先する部分があります。
思考が論理的
IQの高い人は、論理的思考ができるのが特徴です。感情によって考えが左右されることがなく、順序立て、筋の通った考えができます。頭の回転も速く、優先順位を付けることも上手です。
判断力がある
IQの高い人は、高い判断力を持っています。感情に左右されないため、論理的に課題解決を行い、素早く判断します。
判断までの時間が短く効率的であることからも、他の人よりも多くの作業や高難易度の仕事に取り組めるでしょう。
好奇心が強い
IQの高い人は、物事の本質を理解しようとします。そのため、いつでも「なぜ?」と疑問を持っており、調べることで知識を深めます。
多くの事柄に関心があり、多岐に渡って深い知識を身に着けている人も少なくありません。
記憶力が高い
IQの高い人は飲み込みが早く、記憶力が抜群に良いことも特徴です。物事の本質を理解するため、聞いたことは忘れず、短い時間で覚えたことを長期に渡って記憶します。
EQの高い人はIQを活かせる
IQの高い人は有能であり、能力の高さから、仕事でも一定の成果を出すことができるでしょう。
しかし、仕事とはスタートからゴールまでを自分1人で走り抜くものではありません。多くの人が過程ごとに関わり、一つの物事を完成まで導きます。
人が介在するその過程を、スムーズかつ効率的に構成するのは、EQの高い人材です。人と人との関係を作り、無用な軋轢(あつれき)を生まず、より効率的な流れを作って行くには、人間関係を良好に保つ能力が必要です。
IQの高い人材が、持っている能力をより発揮するためには、EQの高い人材の確保が必要なのです。
家庭でEQを高める方法とは
IQは生まれ持った能力が大きく関わるといわれています。
しかし、EQは後天的な能力であり、どの年齢・段階であっても、適切なトレーニングをすることで伸ばすことが可能な能力です。EQを伸ばすためには、次のような工夫が効果的と考えられています。
子どもを否定しない・ほめる
子どもを叱ることは、しつけの一環としても必要です。しかし、むやみに叱ることは、自己肯定感を下げてしまいます。
自己肯定感とは、ありのままの自分を自分自身が肯定的に受け止めることです。自己肯定感が低い子どもは、失敗を恐れて積極性を失い、自分に自信を持てなくなります。
叱るべきこと、そうではないことを見極めて、子どもと接しましょう。
夢中になれる環境を作る
子どもが何かに夢中になっている時は、集中力が高まっているときでもあります。夢中になるというのは一つの才能であり、全ての子どもが夢中になれるわけではありません。
EQを高めるには、高い集中力を持つことも欠かせないため、この「夢中」になれる力を伸ばすことが大切なのです。
夢中になっているときには、子どもも思わぬ力を発揮することがあります。子どもが夢中になれるような環境を作ってあげるようにしましょう。
子どもの話を良く効く
普段から、子どもの話を良く聞くように心がけましょう。
子どもは、他の人に話をすることで、客観的な視点を持ち、自己分析できるようになります。自己分析ができれば、自らの考えを整理できるようになるでしょう。
話を聞いてあげる時は、相槌を打ったり、頷いてあげたりしましょう。何かをしながら話を聴くことはNGです。真摯に向き合う時間を作りましょう。
毎日日記をつける
毎日日記をつけてみましょう。起きたことに加え、そのときに自分自身がどう思ったかを書いていくのが理想的です。どんなとき、どんなきっかけで、自分の中にどんな感情が生まれるのかを知るきっかけになります。
深い愛情を注ぎ育てる
無償の愛を与えられて育った子どもは、深い安心感の中で心身共に成長します。間違いや失敗をしても「嫌われない」と知っていることから、自分の不得意なことも受け止め、次へとチャレンジできるでしょう。
忙しくても、できるだけ一緒に子どもと過ごせる環境づくりが大切です。たとえその時間が短くても、子どもとコミュニケーションを取り、愛情を伝えることが重要なのです。
親がお手本としてやって見せる
子どもに何かさせようとするときには、まずは親がお手本として取り組んでみせるのが一番です。
たとえば、これまで読書が好きではなかった子どもに対して「本を読みなさい」と言っても、反発するだけで効果は得られないでしょう。
親子関係においては、子どもの意思を尊重することも重要です。
自分から「やりたい」と思って取り組む以外のことは、身に着きにくいのも確かでもあります。そんなときには、親が決まった時間に読書をしてみてはいかがでしょうか?すると、子どもも近くに座って、お気に入りの本を読むようになるかもしれません。
落ち着いた環境を提供する
ざわざわした落ち着かない環境で読書や勉強ができないのは、大人も同じです。そのため、子どもには落ち着くための環境を提供しましょう。静かな部屋で好きな音楽を聴いたり、本を読んだりすることで、精神的に安定します。
スキンシップをとる
親子間のスキンシップは、非常に重要なコミュニケーションです。良いことをしたときや、目標が達成できたときなどには、思いきり抱き締めてあげましょう。
成長と共に子どもは照れを感じ、スキンシップは減る傾向にありますが、ハイタッチでもいいので触れ合う機会を持つようにします。EQを育てるには、スキンシップによる愛情表現は不可欠なのです。
家庭でIQを高める方法とは
先天的な要素が強いと言われているIQですが、成長段階で伸ばすことも可能です。最後に、家庭でIQを高める方法を紹介します。
子どもの意欲・探求心を高める
IQと高めるには、子どものやる気や探求心を引き出すことが大切です。IQを高めるには、脳の発達が必須であり、そのためには探求心を伸ばすことが重要と考えられているからです。
子どもとの関わりの中で、意欲や探求心を引き出していきましょう。
理由を聞いてみる
子どもに対して「なぜ?」と理由を聞くようにしましょう。IQの高い人は論理的な考え方を持ち、本質を知ることを求めているので、起きた事柄に対して日常的に「なぜ?」と思っています。「なぜ?」と考える習慣を作ることで、論理的思考を高められ、IQの向上へとつながって行きます。
親がポジティブであり続ける
子どもに対しては、常にポジティブな発言を心がけましょう。ポジティブな声がけをされている子どもは、やる気を維持でき、元気に取り組めます。
逆に、親のネガティブな発言は、ほんの一言であっても、子どものやる気や探求心を削いでしまうのです。また、子どもに何かして欲しいときにも、「これをやって」と命令するのではなく、「これをやってもらえるかな?」と、お願いの形で頼むことが効果的です。
まとめ
幼少期から家庭環境に恵まれず、自己肯定感が低いまま大人になってしまっている方も少なくありません。自分を好きではない、自信がない、落ち込みやすいなど、悩みを抱えている方はいませんか?そのような場合は、今よりもEQを伸ばすことで、悩みから解消されるかもしれません。
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成長期から自分の感情が上手くコントロールできずに、仕事や人間関係に悪影響を及ぼしていると感じている方は、ぜひ受講をご検討ください。