ビジネス社会でEQを活用できる人材の支援が注目を集めています。しかし、そもそも平均的なEQとはどのくらいで、何を基準に能力が決定されているのかは曖昧です。
そこで、今回はEQの平均や測定方法などを踏まえたうえで、EQの伸ばし方についてお伝えしていきます。
目次
EQの測定方法
EQの測定方法は多種多様であり、測定方法によって平均値は異なります。では、そもそも一体どうやって目に見えない感情を評価し、数値化するのでしょうか?
ここでは、EQとは何なのかについて、構成する能力や測定方法を交えながらお伝えしていきます。
そもそもEQとは?
EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、日本語では「感情知性」とも言われています。
感情知性とは端的にいうと「自分や相手の感情を正確に把握したうえで、うまくコントロールしたり表現できたりする能力」です。EQを人間の能力の一つとしてみなすと、次の4つの領域に区分できます。
感情を感じる能力
1つ目は「感情を感じる能力」です。感情を正確に感じられると、自分の問題と相手の問題を切り離して識別できます。
一方で、感情を識別できないと、自分の感情をうまくコントロールしたり表現したりもできません。つまり、EQを発揮するには、すべて「感情を感じること」からスタートするのです。
感情を創造する能力
2つ目は「感情を創造する能力」です。求められている場面で正しく行動をするには、問題解決に有用な感情を創出する能力が重要となります。困難や失敗が続く局面では特に前向きな気持ちが必要なものですが、EQの高い人は感情を適切に創出できるので、どんなときでも前向きで落ち着いた気持ちを生み出せます。
感情を考える能力
3つ目は「感情を考える能力」です。感情を適切に考えられると、生じている感情の原因や変化を理解できます。例えば、「仕事をしたくない時」に「どうして仕事がしたくないのか」という原因が理解できていれば、マイナスの感情を昇華して物事を迅速に解決へと導けます。
感情を活かす能力
4つ目は「感情を活かす能力」です。感情を活かすとは、望ましい決定をするために感情を活用することを指します。ここまで説明してきたEQにおける「感じる能力」「創造する能力」「考える能力」を統合し、調整しながら、最終的にどの行動を取るべきかを決定する重要な能力です。
測定方法
EQの平均値は測定方法によってさまざまです。ここでは、代表的なEQの測定方法として「EQ行動特性検査」と「MSCEITテスト」を紹介しましょう。
EQ行動特性検査
EQ行動特性検査とはEQの理論をベースに、EQの発揮度を行動面から測定する検査です。個人の強みと弱みを可視化すると、「あるべき姿」と「現状」とのギャップがわかり、自分を成長させるために必要なポイントを見極められます。
また、ビジネスではEQの検査結果を組織風土の客観的な分析に活用することも可能です。検査結果はレーダーチャートで能力の構成要素ごとに端的に示されるため、組織の中で個人をどのように育成するのかといった課題も明確になります。
MSCEITテスト
MSCEIT(Multifactor Emotional Intelligence Scale)とはMayer-Salovey-Caruso Emotional Intelligence Testの頭文字を取った略語で、日本語では多要因情動知能尺度に基づく測定検査と解釈されています。多要因情動知能尺度とは多くの要因を元に情動を尺度化して分析する検査手法です。
この検査では、次のの4分野について評価します。
- 物語・デザイン・音楽表情から情動をくみ取る能力
- 情動を知覚と認知の2つの過程に導入する能力
- 情動の推理や評価をする能力
- 自己の情動を管理し相手の情動に対応する能力
日本人はEQの平均が世界最下位
シックスセカンズジャパンの調査結果によると、日本人のEQの平均値は世界160ヶ国のうち最下位であり、EQと相関があるとされる健康水準に関しても、世界的にみて低水準にあるとわかりました。
では、なぜ世界的にみて日本人のEQはこんなにも低い値なのでしょうか?ここでは、調査で明らかになったビジネス社会における日本人のEQの実情について、年代別・役職別にさらに詳しく解説していきましょう。
EQの平均を年代別に分析
まずは、EQの平均を年代に分析した結果について紹介しましょう。先述した調査によると、世界的にみてEQの平均は年齢を重ねるにつれて高くなりますが、日本の場合は必ずしも年齢がEQの指数に影響を与えないと明らかになりました。
「年功序列」や「学歴」による能力評価がいまだに根強い日本では、EQの高さが人事評価に大きな影響があるとは言えません。年齢の高さと感情知能の成熟度が噛み合っていないのです。
むしろ、「感情は邪魔なもの」として日本の会社では感情の観点は疎外される傾向すらあります。
しかし、近年の調査結果から、感情は最適な思考や行動に必要であり、組織の生産性を向上させたり、ワークライフバランスを保ったりする上でもEQは重要であると実証されています。日本企業やグローバルな人材育成の場で、EQの必要性は今後ますます高まっていくでしょう。
EQの平均を役職別に分析
日本人のEQは、学生よりも会社組織における新人従業員の方が低いという結果もあります。つまり、日本は経済発展に反して心の基盤が整っておらず、心を整える知識を活用しきれていないとも言えるでしょう。
その中でも、特に40代〜50代の男性管理職の育成が課題とされており、対して40代〜50代の女性管理職の活躍が期待されています。「日本のビジネスパーソンは所属組織との一体感が低い」という国際比較が指摘されている事実から、日本が取り組むべき課題は心の基盤となるEQを標準にした人材育成であると言えるでしょう。
EQが平均より高い人の特徴
「EQの平均は100点中の50点くらい」と数値で言われても、EQの高低が実際にどのような人物的特性と結びつくのかは把握しにくいものです。そこで、ここでは、EQが高い人の特徴について具体的な人物像の特徴をあげながら紹介しましょう。
他人のミスに寛容である
EQの高い人は他人のミスは「自分にもあり得る」と、寛容的に捉えられます。感情的になったり失敗を責め立てたりせずに、問題を解決する方向へと導ける点が特徴的です。
自分の感情を俯瞰的に捉えられる
EQの高い人は自分の感情を一歩下がった位置から見つめられます。感情に任せて怒ったり悲しんだりせず、俯瞰的な立場から感情を咀嚼する点が特徴的です。
共感力が高い
EQの高い人は共感力が高く、他者の悲しみや喜びを自分ごとのように感じる傾向にあります。
EQが平均より低い人の特徴
一方で、EQが平均より低い人とはどのような人なのでしょうか?ここでは、EQが平均より低い人の特徴についてそれぞれ解説します。
自己中心的な言動を取る
EQの低い人は自分中心に物事を判断するため、相手の立場や気持ちに配慮した言動が苦手です。自分のやりたいことや思ったことをストレートに表現するので、「わがままな人」と思われる場合もあります。
ネガティブな感情をうまくコントロールできない
EQの低い人はストレス耐性が低いので、トラブルが生じたときに適切な対応ができません。極度に焦ってしまったり狼狽て何もできなかったりと、組織をまとめるリーダーとして信頼性に乏しいと評価される場合もあります。
プライドが高い
EQが低い人は自己評価が高いため、他人から批判されるとムキになって対抗しようとする傾向にあります。プライドが高く、自分がいつも一番でないと満足できません。結果、チームワークを乱してまで自分の利益を追求しようとします。
EQを伸ばすための方法
EQの指数を伸ばすために、日常生活やビジネス場面で実施できる代表的な方法についてお伝えしましょう。
物事を肯定的に捉える習慣を持つ
EQを伸ばすためには、物事を肯定的に捉える習慣を持つ姿勢が大切です。
学生時代や異性との交際期間についてどのような出来事を真っ先に思い浮かべるかで、ご自身が肯定的な思考の持ち主かどうかがわかります。もし、否定的な思い出が多いなら、毎日の生活の中で少しでも良い側面を想起できるように意識づける心がけが大切です。
コミュニケーションを通して相手の良い部分を見つける
一般的に、EQの高い人はコミュニケーション能力が高く、対人関係への苦手意識が少ないとされています。なぜなら、EQの高い人は他者の長所を見つける力があるからです。
ポジティブなやり取りは周囲に良い波動をもたらすため、自然と周囲からの評価も高まり、人間関係もスムーズに進められます。
まとめ
EQの平均や測定方法などを踏まえたうえで、EQの伸ばし方について紹介しました。要点は次のとおりです。
- EQの測定方法は多種多様であり、測定の手法によって平均値は異なる
- 日本人のEQは世界最下位であり、健康水準も低い
- 今後EQは日本のビジネス社会においても重要視される能力であるため、EQを伸ばすための基盤を組織として整える必要がある
本記事で紹介したEQに関する知識や情報を、ビジネスや実生活にぜひ役立ててみてください。