「アサーション」とはどんな意味?具体的な事例と高めるためのおすすめの本 | EQバンク
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2020.12.16

コラム

「アサーション」とはどんな意味?具体的な事例と高めるためのおすすめの本

アサーションとは

他人と波風立てないために、自分の主張を抑え込んで、心を消耗させてはいませんか?自分も相手も大切にしながら人間関係を円滑に進めるコミュニケーション方法として、「アサーション」が注目を集めています。

しかし、アサーションはそもそも何なのかわからない方は多いのではないでしょうか?そこで、本記事では、アサーションとはどのような意味があり、EQをベースにしたコミュニケーションにどう寄与するのかなどを解説します。日常生活やビジネス場面で、アサーションのスキルを活用できるようになりましょう。

アサーションとは?どんな意味?

コミュニケーションを取る医師と看護師

アサーションとは、相手を傷付けずにしっかり自分の主張を伝えるコミュニケーション方法です。たとえば、相手からムリ難題を押しつけられそうなとき、相手を傷つけずに「No」と伝えられるスキルがあげられます。

働き方やパワハラが問題視されている現代において、さらに注目を集めている方法です。「聞く力」と「伝える力」を総合的に発揮し、自分と相手のどちらも大切にしながら円滑な人間関係を構築する上で役立ちます。

アサーションの語源と歴史

アサーションの語源は英語の「assertion」です。英語を日本語で直訳すると、「断言」「断定」の意味です。

コミュニケーションスキルでは少しニュアンスが異なり、自分の主張を断定するだけでなく、相手の立場も大切にしながら自分の考えを伝えられる点が特徴的です。

アサーションの歴史は、1950年代の行動療法の考え方から始まりました。「行動療法」とは思考や行動のクセを把握し、自分の認知や行動パターンを整えながら、生活や仕事のストレを減らしていく心理療法の一つです。

その後、1960年〜1970年にアメリカで黒人や女性の権利を主張する人権運動が活発化される中、抑圧されていた人々の適切な自己主張の方法として注目を集めます。

アサーションは単なる断言や自己主張としての役割だけではありません。自己主張の苦手な人や立場の弱い人のためのスキルであり、相手と対等な立場を獲得するためのスキルも盛り込まれているからです。現在では、日常生活の場面でも活用されています。

看護場面におけるアサーションの事例

先述したように、アサーションの考え方は行動療法が起源です。1949年に出版された、精神医学や行動医学の書籍に「アサーション」の言葉が医療用語として記述されました。

精神医学や行動医学で用いられるアサーションは、看護や介護などさまざまな場面で用いられます。例えば、看護場面のアサーションの具体的な事例は次のとおりです。

  • 気難しい医者に看護師が依頼をする場面
  • 看護師の言うことを聞かない患者への対応場面
  • 患者の身になって考えない医者への葛藤場面
  • 看護師同士のコミュニケーション場面

看護職は、対人関係を基盤にしながら専門的技術を提供する仕事です。患者やその家族と接する機会が多い反面、忙しくて丁寧なコミュニケーションがしにくく、怒りや不満が放置されやすい傾向にあります。

アサーティブを習得すると、健全な組織の醸成や医療従事者の精神的健康の増進、保健・医療の質の向上などにも役立つことが可能です。現在でも、アサーティブなコミュニケーションを現場で活かすためのさらなる教育方法の開発や発展が期待されています。

EQとアサーションの関係

アサーションは、EQにおける「対人関係知性」に分類されるソーシャルスキルです。相手の要求に対して素直に応えるだけでは、誤解されたり自分の精神的な負担が増えすぎて燃え尽きが生じたりする場合があります。

よって、どのような内容を、どの順序や手段で伝えるかの知識やテクニックが重要です。知識とテクニックを合わせたスキル(対人関係知性)は、次の3つの項目に分かれます。

  • 自主独立性:人に頼らないで自分の力で物事を対処し、取り組む力
  • 柔軟性:アイディアや感受性がしなやかで、許容量が大きく、臨機応変に対応できる力
  • 自己主張性:自分の意見や判断、権利を相手に明確に伝えられる力

これら3つのソーシャルスキルを構成している要素が高い人ほど、対人関係知性も高いと言えます。つまり、自分の考えや感情を相手に適切かつ効果的に伝えられる知識やテクニックを習得していると言えるのです。

自己主張の3つの種類

挙手

自己主張は「アサーティブ」「ノンアサーティブ」「アグレッシブ」の3種類があります。それぞれの特徴について理解すると、理想のコミュニケーションが実現可能です。具体的なイメージが描きやすいように、『ドラえもん』のキャラクターに例えながら紹介していきましょう。

種類①:アサーティブ

1つ目の自己主張の種類は「アサーティブ」です。アサーティブな人はアサーションを使いこなせている人と言えます。

ドラえもんで言うと、「しずかちゃん」のようなタイプの人です。人気者でしっかりしていて、困難な状況でも中立的な立場から判断を下せます。優柔不断で不手際が多いのび太に対して、ときに優しくときに厳しく接してくれるバランスの取れた存在です。

つまり、アサーティブとは次のような人を指します。

  • 相手の立場や心情を配慮しながらも、素直に自分の意見を伝えられる人
  • 場の雰囲気を読んで、適切な言葉を選べる人
  • 相手への優しさをもちながら自信を持って他者と接せる人

アサーティブは、後述するノンアサーティブやアグレッシブの中間であり、一番バランスの取れたタイプとも言えるでしょう。

種類②:ノンアサーティブ

2つ目の自己主張の種類は「ノンアサーティブ」です。控えめで自己主張ができず、他人からのお願いを断れません

ドラえもんで言うところの、「のび太」のようなタイプの人です。失敗や不出来に対して言い訳を繰り返す傾向にあります。しかし反面、他人の悲しみや喜びに寄り添える優しさを持っている暖かい側面が特徴的です。

つまり、ノンアサーティブとは次のような人を指します。

  • 組織の中で大きなイノベーションを巻き起こしたり、リーダシップをはたらかせたりするのが苦手な人
  • 曖昧な言い方や言動で周囲をかわしたり、混乱させたりする人
  • 他人の気持ちばかり気にしてウジウジしてしまい、自分の気持ちを伝えられない人

他人を重んじるばかり、自分の主義主張をうまく表現できません。結果として、組織の中で本来の能力を過小評価される場合があります。

種類③:アグレッシブ

3つ目の自己主張の種類は「アグレッシブ」です。競合や自分の意にそぐわない人に対しては攻撃的な言動で対応します。

ドラえもんでいう、「ジャイアン」のようなタイプの人です。いつも大声で怒鳴ったり、ケンカっ早く勝ち負けにこだわったりする傾向にあります。しかし反面、妹に優しく、人情を重んじる一面も特徴的です。

つまり、アグレッシブとは次のような人を指します。

  • 相手の立場をあまり考えず、自分の主義主張をズバズバ大声で言う人
  • いつも自分が他人よりも優位でありたい人
  • 目的達成のためであれば、手段をいとわず悪意を持ってでも意思を全うする人

緊急性が高く、素早い対応が迫られている場面では、効力を発揮するタイプのリーダーです。しかし、組織の中では「付き合いにくい人」「厄介な人」とみなされ、人間関係がギクシャクしたり、組織の風通しが悪くなったりする場合もあります。

アサーショントレーニングの方法

声に出すトレーニング

アサーションは後天的に誰でも身に付けられるコミュニケーションスキルです。ここでは、アサーティブなコミュニケーションができるようになるための、代表的なトレーニング方法を4つ紹介します。

トレーニング法①:感情や今の気持ちを伝える

事実だけでなく、自分の素直な感情や今の気持ちを伝えると、正直な意思が相手に伝わりやすくなります。例えば、「〜していただけると嬉しいです」「〜に困っているので、〜していただけると助かります」などです。

自分の考えを主張するのが苦手な人でも、感情や今の気持ちを交えながら伝えると、相手にやって欲しいことを明確に伝達できます。

トレーニング法②:お願いの表現を使う

お互いの意見が食い違っている場合は、お願いの表現を使うと、相手に要求が通りやすくなります。「〜しなさい」「〜すべきだ」と命令したり、断定したりすると、言葉に角が立って、相手の反感を飼う原因になるからです。

具体的には、「〜してください」「〜して欲しい」と、お願いの表現を使うと、意見の対立による摩擦を軽減できます。

トレーニング法③:肯定的な言葉を選ぶ

「〜は厳しい」「〜できない」という否定的な言葉で終わると、相手に受け入れてもらえなくなるため、できるだけ肯定的な言葉を選んでみましょう。例えば、「〜は厳しいが、〜ならなんとかなりますが、どうでしょうか」という風に、否定で終わらせずに前向きな代替案を一緒に提示するのです。

日常やビジネス場面で、相手からの提案についついネガティブに反応してしまう人は、意識して実践して見ると、円滑なコミュニケーションが可能です。

トレーニング法④:「あなた」ではなく「私」を主語にする

相手に何かを伝えるときには、自分(私)を主語にしたメッセージで伝えましょう

「先輩の説明は詳細がわかりにくいです」と言われると、先輩は自分が責められている気持ちになります。しかし、「私はもう少し細かい部分を丁寧に説明して欲しいです」と、自分を主語にして伝えると、相手は気分を害さずに済みます。

特に、攻撃的なコミュニケーションをしがちな人は、まず「私」を主語にして意見を伝える点を意識してみると良いでしょう。

アサーションを体系的に高める4つのポイント

PDCAサイクル

アサーションは、次の4つを抑えて実行すると効率的に高められます。

  • 素直:自分の意見や気持ちを素直に伝える
  • 誠実:自分や相手に誠実である
  • 対等:相手を1人の対等な人間として大切に尊重する
  • 自己責任:自分の意見や考え行動の結果を自分で引き受ける

そして、これら4つの柱を体系的に高める方法がDESC法です。「Describe」「Explanation」「Suggest」「Choose」の頭文字をって名付けられています。

DESC法のトレーニング方法について、それぞれ解説していきましょう。

Describe(説明する)

Describeは、日本語で「説明する」という意味です。現在の状況を相手に描写しながら説明して伝えます。

例えば、「提案してもらったスケジュールでは仕事が受けられない」という「客観的な事実」があった場合、ありのままの言葉で表現するのです。

Explanation(表現する)

Explanationは日本語で「表現する」という意味です。Describeで描写した状況に対する、自分の意見や感情を相手に伝えます

例えば、「仕事を引き受けたいけど、このまま引き受けると周囲に迷惑がかかる」という、自分の主張や考えです。

Suggest(提案する)

Suggestは日本語で「提案する」という意味です。このステップでは、Describeで描写して状況やExplanationでの個人の見解に対して、自分なりの代替案を提案します。

例えば、「スケジュールを1週間伸ばしてくれたら対応できる」「受注数を減らしてくれたら調整可能」などです。相手の求めるものを実現するための解決策を提案します。

Choose(選択する )

Chooseは日本語で「選択する」という意味です。Suggestで提案した代替案を相手が受け入れてくれなかった場合、どうするかを選択します。

例えば、「提案した内容であれば受注可能で、相手の要望を満たせる」と伝えることです。また、代替案に対して否定的な場合、違う選択肢を提案すれば、相手に選択してもらえる可能性が高まります。

アサーションを学ぶためにおすすめの本

書籍

最後に、アサーションのスキルをもっと深めたい人におすすめの本を2冊紹介します。

おすすめ①:マンガでやさしくわかるアサーション

マンガでやさしくわかるアサーション

日本におけるアサーション研究の権威で、カウンセリングの父といわれるカール・ロジャース氏の研修会で心理学を学んでいた平木典子氏の著書です。

地方エアラインで、キャビン・アテンダントとして働く主人公が、アサーションを身に付けていく過程が、漫画を通して描かれています。アサーションの初学者にもスッと理解しやすい内容です。マンガだけでなく、合間に解説の文章が入るため、詳細を深めながらアサーションを学べます。

子どもが読んでもわかりやすい内容となっており、アサーションの基本的な知識をわかりやすく知りたい人にもおすすめの本です。

おすすめ②:セルフ・アサーション・トレーニング〜疲れない人生を送るために

セルフ・アサーション・トレーニング〜疲れない人生を送るために

アサーションに関する実践的な内容がメインの著書です。

専門用語や難しい言葉がページ下にまとめて解説されているため、一般の方でも知識のある方でも自分が読みたいレベルに合わせて読み進められます。心理学を専門にしている人が読んでも、得られるものが多い内容です。実生活やビジネス場面で活かしたい実用的な内容が盛りだくさんと言えます。

エクササイズも豊富なため、ある程度アサーションの基本知識を持っている人で、さらにスキルをトレーニングで伸ばしたい人におすすめの本です。

まとめ

ジャンプして喜ぶ男性

アサーションの意味や、EQを活用したコミュニケーションへの影響などを解説しました。要点は次のとおりです。

  • アサーションとは、「他人の立場や心情に配慮しながら自分の素直な意見を伝えるコミュニケーションスキル」である。
  • アサーションはEQの構成要素の対人関係知性に分類されるソーシャルスキルで、知識とテクニックの習得により伸ばせる力である。
  • アサーションを実践する際には「Describe(説明する)」「Explanation(表現する)」「Suggest(提案する)」「Choose(選択する)」のDESC法を意識すると良い。

ご紹介した内容を、日常生活やビジネス場面でアサーションのスキルを活用に、ぜひお役立てください。

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組織コンサルタント。累計1,000名超国内トップクラスのEQの専門家。(著)組織の感情を変える〜リーダーとチームを伸ばす新EQマネジメント。株式会社グロースウェル 代表取締役。

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