「感情の知能指数」と呼ばれるEQが高い人は、自分の気持ちをコントロールでき、他者の気持ちに敏感に気づき寄り添うことができます。人間的な魅力にあふれ、周囲からも信頼される存在です。
もちろん、企業でも人間関係を円滑にする潤滑剤として、また慕われるリーダーとして貴重な人材であることは言うまでもありません。
今回は、人間的な魅力である「EQ」がどのようなものか、またなぜ求められ、どのような仕事が向いているのかについて詳しく解説します。
目次
EQとは何か?
現代のビジネスシーンにおいては、「IQの高い人材」以上に「EQの高い人材」が強く求められています。しかし、頭の良さを表す「知能指数=IQ」はしばしば耳にすることがあっても、「EQ」ということばはなかなか聞くことはないのではないでしょうか?
EQとは、自分の感情をコントロールし、他者の気持ちを推し測ることができる能力です。EQとは人間の内側からあふれる魅力でもあり、この魅力を内包している人材はビジネスを成功へ導くものと考えられています。
EQとは感情の知能指数
EQとは、「感情の知能指数」と言われ、自分の感情のくせを知りコントロールしたり、人の気持ちになって寄り添ったりすることができる能力です。EQの高い人は、自分の感情と向き合うことができます。また、他者の話を素直に聞き入れる、非は素直に認め、言うべきことはきちんと表現することができる人間です。
このような人間は、仲間からの信頼もおのずと厚くなり、周囲には人の輪ができる謙虚なリーダータイプと言えるでしょう。
自分の感情をコントロールできる
EQの高い人は、自分の感情を状況に合わせてコントロールすることができます。
たとえば、会議の中で自分に対して腹が立つことを言われたとしましょう。そこで立ち上がってすぐに反論するのも悪いことではありませんが、EQの高い人はそのような反射的な行動を選びません。
EQの高い人は、「相手はなぜ自分に対してそのような発言をしたのか」をじっくり考えてみます。もしかすると、そのことばは自分がより良くなるためのアドバイスだったかもしれません。そう考えれば、沸き上がった怒りに振り回されず、相手に感謝して良い関係を築く方向に自分をシフトすることもできます。
人の立場に立って考えることができる
EQの高い人は、相手の立場になって物事を考え、寄り添うことができます。
仕事でミスをし、迷惑をかけたことで落ち込んでいる部下がいたとしましょう。仕事には失敗がつきもので、その失敗こそが次の成功を生み出す原動力となりますが、実際に落ち込みの只中にいる者にとっては、そう前向きになれるものではありません。
そんなとき、EQの高い人は、部下に寄り添って時間をかけて接します。話したくなるまで待ち、すべての話を聞き終わった後で、自分の意見として適切なアドバイスを行うでしょう。
人に対して時間を費やすことも厭わないのがEQの高い人で、そうした人物の周りには、多くの人が慕って集まります。
企業の生産性を上げる
EQの高い人は、その優れたコミュニケーション能力を用い、人間関係を良好に保って、企業の生産性を上げることに寄与します。
企業では一人で完結できる仕事は少なく、多くの人間が関わり、組織で行うものがほとんどでしょう。だからこそ、人とのかかわりは、仕事の効率面からも非常に大切です。
EQの高い人材は、自分の感情を認知し状況に応じて律し、また人間関係を良好にすることができるため、企業の業績アップにも繋げられる存在として求められています。
人間関係が良ければチーム内の連携も良く、仕事もより良い結果を出すことができるでしょう。
EQの高い人が持つ4つの能力との一致
EQの高い人材には、共通した4つの能力を持っています。それは、「感情の利用」「感情の識別」「感情の調整」「感情の理解」であり、リーダーにも望まれる能力です。
ここでは、それらがどのような能力で、仕事においてどのように活用されているかの例を紹介しましょう。
感情の利用
「感情の利用」とは、自分の中に湧き出した感情を利用して、場に応じた活用をする能力です。この「感情の利用」を身に着けている人は、直面している仕事がスムーズに行えるような感情を自ら生み出し、仕事の効率アップにつなげることができます
たとえば、会議でなかなか意見が通らないときは、大きなストレスを抱えることになるでしょう。しかし、ゴールは決まっており、そのゴールにたどり着くためには、自分の思いを我慢し律さなければなりません。我慢とは「負」の感情であり、自分に我慢を強いていることで、モチベーションが下がる場合もしばしばです。
このような場合には、向き合う仕事に対しての考え方そのものを転換させることで、「負」から解放されます。「ここで我慢することが将来の自分のためになるのだ」と考え方を変えるのです。将来のためと思えば、例え我慢が「負」の感情であっても、人は乗り越えていけます。逆に、この転換ができないと、単純につらいだけの時間を過ごすことになってしまうでしょう。
感情の識別
「感情の識別」とは、自分や他者の感情を理解し、把握する能力のことです。
他者の感情を受け入れるためには、自分自身が人の多様性について受け入れておかなければなりません。しかし、多様性を受け入れるということは、異なった価値観を持つ人を受け入れながら仕事をすることでもあり、実際には大きなストレスがかかることでもあります。
常に他者の考えや感情に近い状態であろうとすればするほど、自分が敏感にならなくてはならないのです。
感情の調整
「感情の調整」とは、自分が単純に思ったままの感情を出すのではなく、他者との関りあいの中で必要な感情を捉えて行動することです。
たとえば、ちょっとしたトラブルで対立が生まれてしまった場合も、自分から明るく「ごめんね」と接触できることこそリーダーの資質を持った人間と言えるでしょう。そのような行動を見て、自然と周りには人が集まってきます。
逆に、自分本位の行動ばかりしていれば、人は離れていきます。
感情の理解
感情には、大きく分けて4つの性質があります。それは、「出来事や変化に対応した反応」「突然現れる」「思考、知的活動に影響する」「人の行動を変容させる」です。
これらの性質を理解しておくことで、相手の感情の発露に振り回されることなく、コミュニケーションを良好に保つことができます。逆に、コミュニケーションを取ることが苦手と感じている人は、これらの性質を理解していないことが多く、相手の感情の変化を「怖い」と感じるでしょう。
EQが高い人が成功する適職とは
前述したEQの高い人が持つ4つの特徴から、EQの高い人がどのような職業に向いているのかお伝えしていきましょう。
接客業
EQが高い人は接客業に非常に向いています。接客業にもさまざまな仕事がありますが、どのような仕事でも多くのお客様とコミュニケーションを取り、良い信頼関係を築けるかどうかが重要なポイントであることに違いはありません。
特に、接客業では初対面のお客様と接触し、サービスを提供しなければならない場合があります。初めて出会う人の気持ちを推し測ることは非常に難しいもので、些細な表情やちょっとした仕草から、お客様の気持ちや要望を読み取らなければならないのです。
しかし、EQが高い人は、普段から多くの人の気持ちや考えを察し、思いやった行動を取ることができます。相手が知らない人であっても、配慮ある言動で良い人間関係を築くことができるのです。
このように、初対面の人とコミュニケーションを取り、相手の要望に沿ったサービスを提供することを求められるような接客業は、高いEQを持つ人ほどその能力を発揮できる職業と言えるでしょう。反対に、EQが低いとお客様の要望や気持ちを察したり寄り添ったりすることが苦手であるため、接客業にはあまり向いていないと考えられます。
マネジメント職
また、マネジメントに関わる業務も、EQの高い人に向いている職業です。マネジメント業務は、「経営」や「組織を管理する」仕事であり、人とコミュニケーションを取ることに長けた人材に向いています。
しかし、もちろん部下や関わる人間が多ければ多いほどに、円滑な人間関係を構築することは難しくなるでしょう。社内の組織との関係はもちろん、取引先との信頼関係が損なわれれば、思った通りの成果を上げることもできず、業績にも影響します。
だからこそ、マネジメント職は、コミュニケーション能力が高いとされる人材に向いている仕事と言えるのです。EQの高い人は、相手の考え方や感情のくせなどを把握し、バランスを保ちながら仕事を進めていく手腕を発揮します。
逆に、EQが低いと他者とのコミュニケーションが円滑に行えませんので、マネジメント業務にはあまり向いていないと言えるでしょう。
EQの高い人は社内のリーダーにも向いている
EQの高い人が活躍できる職業は、上の2つだけではありません。その理由は、EQの高い人材はどの職場においてもリーダータイプであり、組織をより良い方向へと牽引していく力があるからです。
そこでここでは、リーダーとしてEQの高い人材が持つ役割を上げてみます。
自律的に育つ環境を構築する
企業の成長のためには、自分で考え、行動する社員を増やす必要があります。企業にコンプライアンスが求められるのと同様に、社員も自分自身を律して前進しなければなりません。そのためには、先を読む力や直観力が必要です。
そうした人材をリーダーが進んで育成していくことが大切ですが、そのためにはリーダー自信が自律し、模範となること姿勢が見せられなければなりません。そういった姿勢を部下に見せて引き継いでいくことが重要なのです。
多様性を生かす
これまでの日本のリーダータイプは、多様性に重きを置かず、それよりは慣れた仲間と呼吸を合わせて仕事をしていくスタイルでした。
それ自体は悪いことではありませんし、会議でもめたり言い争ったりすることもなく、時間効率を重視した仕事ができます。そのサービスや商品が市場において一定の水準以上にあり、競争力を維持していれば、同じ質を持った仲間たちと利益を分配していけるでしょう。
しかし、グローバル化が進む昨今のビジネス界では、これまで事業の中心にはならなかった女性、高齢者、外国人の力も必要です。多様な人材が投入されれば、もう阿吽の呼吸だけで仕事を進めていくことはできません。
そうした環境でも、必要なすべての人と円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築していくことができるのが、EQの高い人材なのです。
優秀な社員を集める
優秀な人材を集めるためには、リーダー自身が謙虚な姿勢を持っている必要があります。「自分がリーダーだから、君たちはとにかくついてこい」と言われても、その根拠を何も見せられないままに本当に優秀な人がついてくることはないでしょう。
また、優秀な人材は世の中にたくさんいるものです。他者から人材が引き抜かれてくるときにも「来ていただく」「見合ったポジションを用意します」など、相手に対し自分がへりくだり、迎え入れることでスムーズに仕事ができます。
受け入れた後も、EQの高い人材はとても魅力的に輝いているため、良い人間関係を築いていけるでしょう。
コミュニケーションを通して結果を出せる
リーダーには高いコミュニケーション能力が必須であることは、もはや言うまでもありません。
しかし、ビジネスで成功させるためのコミュニケーションは、社員同士が仲良くできるというレベルにとどまるわけではなく、「会社にとっての結果を導き出すコミュニケーション能力」です。つまり、ビジネスで良い結果を出すためのコミュニケーションを取ることこそ重要で、その根底にはメンバーに「どう動いてもらうか」「どんな仕事を進めてもらうか」など、戦略的な要素も含まれます。
そのため、部下には自分の考えを理解してもらえるように働きかけなければなりませんし、それができなければリーダーとは言えないのです。
まとめ
EQの高い人材を組織で保有することは、社内の組織の牽引にも非常に効果的であり、生産性の上昇にもつながることを解説しました。また、IQの高い人材を効率的に活用するためにも、EQの高い人材は非常に有用です。
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