近年、コミュニケーション能力を数値化できるとして注目されているEQ。しかし、EQ以外にも「IQ」「SQ」「AQ」「CQ」など、さまざまな指標があるため、どの能力にどのような特徴があるのか、イマイチわかりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、IQ・EQ・SQ・AQ・CQの違いを徹底解説します。それぞれの能力の特徴や、能力の鍛え方をお伝えしていきます。
目次
IQ・EQ・SQ・AQ・CQとは?
そもそも、 IQ・EQ・SQ・AQ・CQにはどのような指標なのでしょうか?それぞれがどのような能力を測定しているのかについて解説していきます。
IQとは?
IQとは、Intelligence Quotientの略で、知能指数を指します。知能指数とは、言語能力や論理数学能力などの知性がどれくらいあるのかの指標とされています。
IQは先天的な特性が強く、生まれ持った頭の良さであり、その数値は一生変わりません。IQの中央値は100。世の中の秀才のIQは120、天才と呼ばれる人のIQは150ほどとされています。
ちなみに、レオナルド・ダ・ビンチのIQは200、アインシュタインのIQは120だったのだとか。IQは20や30違うだけでも会話が成り立たないほどの差があるとされているため、IQ200や300といった人は、普通の社会で適応できない場合も多いようです。
EQとは?
EQとは、Emotional Intelligence Quotientの略で、感情知能を指します。感情知能とは、自分と他人の感情を正確に把握して、いかにコントロールし、うまく表現できるかという能力のことです。
EQ理論を世に広く広めた心理学者のダニエル・ゴールマンいわく、「ビジネス社会で活躍している8割の人たちはEQの高さゆえに成功している」のだとか。つまり、IQの高さは社会的な成功に必ずしも影響しないのです。また、EQはIQとは違い、後天性の要素が強いので、大人になってからでも能力を伸ばせます。
SQとは?
SQとは、Social Intelligence Quotientの略で、社会的知能指数を指します。社会的知能指数は、人との関わりや大人能力など、社会性がどれだけ秀でているかに焦点を当てています。そのうえで他者の感情を理解し、自分の行動が相手にどのような影響を及ぼすのかという対人関係スキルです。
先述したとおり、EQの提唱者でもあるダニエル・ゴールマン氏はSQについて「他社との関係において高い知性を発揮する能力」と定義しました。周囲の人と協調試合ながら気持ちを読み取ったり感じ取ったりする能力に長けることは、特にリーダーの資質だとしています。
AQとは?
AQとは、Adversity Quotientの略で、逆境指数を指します。逆境指数は人間が逆境に陥った際にどれだけストレスに耐えられるのかという心の強さを表す指標です。
逆境指数は、感情知能と同じくビジネス分野の能力を測定する目的として作られました。なぜなら、逆境に直面した際の反応を調べることにより、組織が逆境に陥った際にその困難性に耐えうる人材を見つけられるからです。
また、AQにはAchievement Quotientの略称として用いられる場合もあります。こちらの指数は達成指数と呼ばれ、子どもの現段階の知能に対して、学校教育がどれだけ目標値に到達できているのかという意味があります。逆境指数と達成指数は意味がまったく異なるため、内容に応じて使い分けには注意しましょう。
CQとは?
CQとは、Curiosity Quotientの略で、好奇心指数を指します。文化的知能は、好奇心の強さについての指標で、新しい体験に対して、どれだけ心を開いてチャレンジできるかを表します。
また、CQはCultural Quotient(文化的知能)として、多様な文化的背景に対して、効果的に対応できる能力を指します。そのほか、Communication Quotient(コミュニケーション指数)として、どれほど他者とコミュニケーションを取れるかの指標として用いられる場合もあるようです。
CQという略称は同じでありながら、指し示す指標はそれぞれ違います。どのCQを指しているのか、指し示す内容を混同しないように注意しましょう。
IQ・EQ・SQの測定方法
IQ・EQ・SQ・AQ・CQが何の指標かが理解できたところで、ここからはそれぞれの測定方法について解説していきます。
IQの場合
IQは学校などの知能テストで測定した経験のある人も多いでしょう。IQの算出方法はDIQを含む方法と含まない方法の2通りがあります。
DIQとは数値で表した知能検査の結果を表示する方式のことです。DIQを含まない場合、IQの算出は次のような計算式で出します。
- IQ=精神年齢÷生活年齢×100
検査を受ける人が成人の場合は、生活年齢を18歳程度に固定して算出します。
また、DIQを含むIQの計算式は次のとおりです。
- IQ=(個人の得点−同じ年齢集団の平均)÷([1/15または1/16]×同じ年齢集団の標準偏差)÷100
ちなみに上の式において、ウェスラー式の場合は1/15を、ビネー式を用いる場合は1/16を使用します。
EQの場合
EQは「行動特性調査」により測定ができます。検査領域は次のとおりです。
- 自己認識力
- ストレス共生
- 気力創出力
- 自己表現力
- 主張表現力
- 対人関係力
- 対人受容力
- 共感力
検査結果の試数値とバランスによって、自分の強みや弱み、適正などの行動特性を客観的に理解できます。
SQの場合
SQの測定では、ESCI(Emotional and Social Competency Inventory)と呼ばれる測定ツールを用いて指数を算出します。SQの測定項目は次のとおりです。
- 共感力
- 思いやり
- 組織理解
- 影響力
- 人材育成
- 啓発
- チームワーク
ESCI以外にも、『心理テスト 』では日本語でSQを気軽に無料でにチェックすることも可能です。
AQの場合
AQの値は、COREと呼ばれる4つの要素を測定することで導き出すことが可能です。ちなみに、COREの4要素は上記の英語の頭文字をとって名づけられています。
- コントロール(Control)
- 責任(Ownership)
- 影響の範囲(Reach)
- 持続時間(Endurance)
自分のAQがどのくらいかは、最低値のレベル1から最高値のレベル5までに分類されます。企業やグループを成功に導くためには最低でもレベル4以上のAQが必要です。
CQの場合
CQは、12の構成要素により0〜40点であらわされたグラフで能力の測定が可能です。12の要素とは主に次のとおりです。
- 充実性
- 会話性
- 交流性
- 幸福性
- 表出性
- 共感性
- 尊重性
- 融和性
- 開示性
- 創造性
- 自立性
- 感受性
CQは、身近なサイトから測定することが可能です。たとえば、「好奇心指数CQチェックテスト」や「T字戦略」と言った媒体から自分のCQがどれくらいあるのかを確認できます。
IQ・EQ・SQの高い人の特徴
IQ・EQ・SQ・AQ・CQが高いと、組織にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、それぞれの指数が高い人の特徴についてお伝えしていきます。
IQの高い人
IQの高い人は、情報処理能力が早く、論理的に物事を考えられます。また、記憶力や集中力に長けており、学校の学力テストで秀でた結果を出す傾向にあります。
たとえば、誰もが忘れてしまいそうな出来事を長い間覚えていたり、数学や物理などの計算や論理的な思考を要する学問を根気強く取り組んだりできる点が特徴的です。
しかし、IQがずば抜けて高い人は、周囲と話が合わなかったり、言いたいことが伝わりにくかったりして、馴染めないこともあります。IQの高い人にの中には、学校の授業において教師よりも学力が高いゆえに、教師から疎まれて低い成績をつけられたり、勉強のできない人と勘違いされたりすることも。
また、社会においても、「勉強はできるけど協調性の低い人」とみなされて、なかなか評価されず出世できないケースも多いようです。
EQの高い人
EQの高い人は、自分と他人の感情をよく理解しており、うまく感情をコントロールしながら周囲によい波動を与えられます。
たとえば、部下のミスで交渉が頓挫してしまった場合を考えてみましょう。EQの高い人はミスをしてしまった部下を、感情的に怒鳴りつけるようなことはしません。
もしも怒りが沸き起こっても、「どうして自分は怒りを感じているのか」を、一歩引いた状態で冷静に見つめられるからです。そして、冷静に今後どうすれば間違いがないか、部下の声に耳を傾けながらアドバイスができます。
SQの高い人
SQの高い人は、社交性や対人能力に長けており、組織からの信頼を得やすく、リーダー的なポジションを任されるケースが多いようです。とりわけ、会社の採用や昇格の際、経歴や能力がズバ抜けているのに、配属先でのパフォーマンスがイマイチだったり、部署での成績が伸びなかったりするケースがありますが、それはその人のSQの低さが関係している場合があります。
したがって、SQの高い人を採用すれば、たとえ経歴や昇進試験の成績が芳しくなかったとしても、職場で優れたリーダーシップを発揮し、モチベーションを高めて部下の力を引き出すのです。
AQの高い人
AQの高い人は逆境に強いため、トラブルが生じたときに組織を適切な方向に導いてくれます。
たとえば、AQの高い人は誰もが挽回の余地がないと感じるような問題であっても、臨機応変に打開策を打ち出し、損失を最小限に抑えるアイディアを出すことが可能です。困難な状況に陥ったときこそ人の本性がわかるとよく言われますが、AQの高い人はネガティブな局面にこそ頼りになる存在と言えるでしょう。
CQの高い人
CQの高い人は、コミュニケーション能力が高いので、初対面の人やとっつきにくい人とでも、うまく人間関係を構築できます。派閥争いや職場イジメなどがあってギズギスしている職場であっても、CQの高い人はどちらに肩入れするわけでもなく、スムーズに人間関係を保てます。
ときには仲違いになった関係性に仲介して、チームワークが円滑に進むようにはたらきかける能力に長けているのです。
IQ・EQ・SQを高める方法
IQ・EQ・SQ・AQ・CQは、具体的にどのような方法で鍛えられるのでしょうか。この章では、それぞれの指数を高める方法についてお伝えします。
IQを高める方法
IQはワーキングメモリを鍛えることによって高められます。ワーキングメモリはn-back訓練を1ヶ月〜3ヶ月以上継続しておこなうと効果的です。
そのほか、生活習慣の見直しもIQを高めるうえで効果的です。たとえば健康的な食事をし、しっかり睡眠をとって定期的に運動する、アルコールは控えめにして喫煙をやめるといった小さなことからでも、改善する可能性があります。
EQを高める方法
EQのなかでも、自分の感情の理解には「感情日記」が有用です。感情日記とは、その日にした行動と感情を「どうしてしたか」「どうしてそう感じたか」という理由と一緒に書き出すというもの。何気ない感情を可視化することで、自分の心のクセを知れます。
SQを高める方法
SQは社会における指数なので、自分ばかりを見つめていては能力を伸ばせません。したがって、他人をしっかりと観察するという訓練をしましょう。
会社やチーム、家族や友人などのさまざまな種類のコミュニティの観察を通して、自分がどのように動けばよりよい影響を与えられるのかを考える習慣をつけていきましょう。
AQを高める方法
逆境をなくすのはムリなので、逆境を受け入れる自分の意識を変えるしかありません。そこで、逆境にあったときにパニックになるのを抑えるのに有効な手段として、「ストップ法」があります。
ストップ法とは、腕にバンドやゴムをつけて、気持ちが動揺した際にパチンと弾くことで、意識をそらすという認知療法です。人間は同時に2つのことは考えられないので、意識をそらす訓練をすることで一歩下がって問題を見つめなおす余白ができます。
CQを高める方法
CQを伸ばすには、世の中に存在する事象に疑問を抱くクセをつけましょう。普段当たり前だと思っていることに「本当にそうだろうか」「どうしてそうなるのだろうか」と疑問を抱いたり原理を追求したりすることで、常に新しい情報や発見が得られるからです。
まとめ
IQ・EQ・SQ・AQ・CQの特徴や、能力の高め方などについてお伝えしました。似たような言葉が多く、どれがどの内容を指し示しているのか混同してしまうかもしれません。
しかし、それぞれの特徴を把握することで、どのような能力を測定しているかが理解できます。本記事を、ご自身の学びにぜひお役立てください。