2020.12.22

コラム

【解説】内発的動機づけを高めるためには?高める方法&おすすめの本・具体的な活用例

内発的動機づけを高める

知的生産物の想像に貢献する、ナレッジワークが重要視されている現在。個人や組織における「内発的動機づけ」をアップさせるための施策が、活発になっています。

しかし、個人差が大きく標準化できない動機を、実践的にどう現場で活用できるのかについては曖昧です。今回は、内発的動機づけの意味や高め方について、活用例やおすすめの本を交えながら解説します。自分や周囲のモチベーションアップの方法を知りたい人は、ぜひ読んでみてください。

内発的動機づけとは

読書する少年

内発的動機づけ(intrinsic motivation)とは、仕事そのものに動機づけられ、その報酬は仕事の達成感や自己成長など内的な報酬を目標とするモチベーションのことです。

内発的動機づけの目的・役割

マズロー の欲求段階説参照:マズロー の欲求段階説

人間の動機は5段階のピラミッドのように構成されており、それぞれの階層によって動機の目的や役割は異なります。「マズローの欲求階段説」と呼ばれている、心理学で一般的な動機づけに関する理論です。

低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するようになっており、それぞれの階層の欲求は、次のように分類されています。

第1階層:生理的欲求

生きていくうえで必要な基本的かつ本能的な欲求。お腹がすいたから何か食べたい、夜になったから眠いなど。

第2階層:安全欲求

危険を回避したい、安全かつ安心して生活したい欲求。雨風にさらされない場所で暮らしたい、健康に元気で生活したいなど。

第3階層:社会的欲求

家族や組織など、何らかの社会的な集団に所属して安心感を得たい欲求。趣味を一緒に楽しめる仲間が欲しい、何でも話せる家族が欲しいなど。

第4階層:承認欲求

社会的な集団に所属するだけでなく、組織内で高く評価されたい、自分の能力を認めて欲しい欲求。学校で先生から褒められたい、上司から高い評価を受けたいなど。

第5階層:自己実現欲求

理想のあるべき自分になりたい欲求。自分の力を発揮して理想の自分になりたい、芸術家が自分の表現したい作品の制作に没頭しているケースなど。

内発的動機づけが重要である理由

内発的動機づけが重要な理由は、時代の流れや技術確信による働き方の多様化や複雑化に依拠します。

20世紀半ば:外発的動機づけが重要視される働き方

20世紀半ばまで、日本を含む世界中の組織は、人の動機づけを外発的な動機に大きく依存してきました。工場や炭鉱などの肉体労働者や、給与によってのみ動機づけられた、外発的動機づけにもとづいたアメとムチによる単純なシステムが重要視され、うまく機能していました。

現代:内発的動機づけが重要視される働き方

時代が進みテクノロジーの進歩によって、仕事が劇的に多様化・複雑化したことを皮切りに、外発的動機づけは必ずしも生産性に影響を及ぼさなくなりました。システマチックな労働はIT技術や機械化がなされ、より創造性の求められる仕事が増えたことにより、金銭や地位などによる外発的動機づけは、人の想像力のジャマになると考えられ始めたからです。

次第に、内発的動機づけが高い人は、周囲や企業の業績向上にも貢献するとみなされるようになりました。

EQと内発的動機づけの関係性

一般的に、EQの高い人は客観的に自分の認知行動特性を理解できるため、内発的な動機にもとづいた行動が取れます

EQ(Emotional Intelligence Quotient; 感情知性)は、メイヤー氏とサロベイ氏によって初めに提唱された感情を知能として指数化した考え方です。EQを能力とみなした場合、次の4つに分類可能です。

  • 感情の識別:自分の感情を知り、相手や周囲の感情を読み取る力。
  • 感情の同化:目標達成にふさわしい感情を醸成し、相手に共感できる力。
  • 感情の理解:感情の特性を理解し、変化を予測できる力。
  • 感情の調整:感情を適切に調整し、判断に活用する力。

内発的動機づけが高い人は、上記の4つの能力をバランスよく自然に取り入れながら、自らが主体となって目標達成のために努力し、成長し続けられる人です。そして、その個人の成長は組織や社会全体の貢献に紐づいており、企業の業績向上にも貢献するとされています。

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の違い

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」では、動機の原動力が違います

内発的動機づけは「自分がやりたいから」「やっていて楽しいから」という自分の意志が原動力です。一方、外発的動機づけとは、外部から与えられる報酬(主に金銭)が原動力です。周囲の人や社会などの影響によって生まれる動機づけです。

先述した「マズローの欲求階段説」でいうと、第1欲求〜第3欲求は外発的欲求で、第4欲求〜第5の欲求は内発的欲求になります。つまり、個人の内面からの動機づけを「内発的動機づけ」と呼び、周囲の人や出来事に影響される動機づけを「外発的動機づけ」と呼ぶのです。

内発的動機づけを高めると得られるメリット

トップを取った女性

内発的動機づけを高めると、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的なメリットを4つの紹介します。

メリット①:外的な要因に左右されない

内発的な動機づけを高められると、外発的な要因に左右されないため、自分の信念や内面をベースに物事を探究できます。他者や周囲からの影響を受けにくいため、コンスタントに結果を残すことが可能です。

メリット②:標準化できない仕事の生産性がアップする

創造性の求められる仕事や問題解決など、標準化できない仕事であっても、内発的動機づけの高い人は自分を頼りにコツコツ地道に努力できる点が特徴的です。結果として、難しい仕事でも生産性の高いパフォーマンスを発揮します。

メリット③:物事に意味や価値を見出せる

内発的動機づけを原動力にする人は、物事そのものに意味や価値を見出せます。人が見過ごしたり軽視したりしがちな基本的な要素に関して、イノベーションを起こすことが十分可能です。興味関心が次々と湧いてくるため、興味関心が長く続きます。

メリット④:能力開発や自己成長につながる

自分で学び、成長しようという意欲があるため、内発的動機にもとづいた行動は能力開発や自己成長につながります。先生や親から強制された勉強ではなく、自分が「知りたい」「学びたい」と思った内容を自主的に突き詰めていくので、自分の新しい可能性や才能に気づくきっかけにもなる点もメリットです。

内発的動機づけを高める方法

内発的動機づけを高める方法

内発的動機づけを高める方法を、3つに分けて紹介しましょう。

成功体験を積み重ねる

成功体験とは、主に次のような体験を指します。

  • 努力した苦労が報われた経験。
  • 苦手な物事に取り組んで克服した経験。
  • 失敗から学び、改善して成功した経験。

成功体感を積むと、「自分はやればできるんだ」という自信がつきます。そして、他の物事もチャレンジしようという自主性の醸成に寄与します。

また、他人から認められれば、どんどんやる気もアップします。そして、「もっとこうしたい」「もっとこうやれる」と自発的な気持ちが生じるようになり、内発的動機が育まれるのです。

ただ、成功体験を積み上げる際に最も重要なのは「成功経験」だけではありません。なぜなら、人は成功経験よりも失敗経験によって多くを学べるからです。

失敗自体が悪いのではなく、その失敗から何が得られたのか、そしてその失敗を次のどう活かせば成功につながるのかが重要です。成功経験をたくさん積むには、失敗した経験も貴重な経験として活かしましょう。

ピグマリオン効果を活用する

ピグマリオン効果とは、教え手の機体によって学習する側の成績の伸びが変わるという心理学です。つまり、「ほめること」によって学習意欲が促進される現象を指します。ピグマリオン効果を活用すると、相手や集団の自発性の醸成が可能です。

例えば、次のようにピグマリオン効果は実用化できます。

  • 言葉がけは否定から入らない。
  • アドバイスを求められた際は特に褒める。
  • 男性は尊敬の念を、女性は愛情を欲している点を意識する。

否定ばかりを言い続けると、逆に成長するばかりか業績が下がる場合もあり得ます。言葉がけの際は、否定から入らないように注意しましょう。

また、アドバイスを求められている際には、相手を終始ほめることを意識してください。男性は尊敬の念を、女性は愛情を求める傾向が強いとされており、性差を意識しながら関わると効果的です。

EQ指数により可視化する

EQは内発的動機づけと関係があるため、EQ診断から内発的動機づけを高めることが可能です。

EQを用いた内発的動機づけへのアクション

EQ診断(EQGW)を活用した組織コンサルティングを利用すれば、個人だけでなく組織全体のEQの傾向を把握できます。具体的な流れは次の通りです。

  • EQ診断テストの実施
  • 指数化されたEQの結果の判明
  • レポートを元にした行動の改善

内発的動機づけは個人差の大きい要素であるため、客観的に可視化されたデータの利用は、効率的に内発的動機づけを高めるための指標となります。

内発的動機づけを高める際の注意点

レクチャーする男性

内発的動機づけを高める際には、注意したい点もあります。ここでは、3つに分けて紹介します。

注意点①:個人差が大きい

内発的動機づけは、個人の内面から湧き上がる興味関心がベースです。よって、モチベーションとなる原動力になるか否かは、個人差が大きい傾向にあります。

個人の興味関心が、必ずしも仕事に直接的に関わるとは限らないため、組織全体に均質的に当てはめることが難しい点が特徴的です。

注意点②:実施方法が曖昧になりがち

内発的動機づけは個人差が大きいため、個人に必ずしも合致したものにならない可能性があり、実践方法は曖昧になりがちです。マニュアルを作って、組織全体で一定レベルの業務をする仕事には向きません。

社員一人ひとりの創造性ややる気から生じる作業がメインであるため、標準化が難しい点が特徴的です。

注意点③:成果が出るまで時間がかかる

内発的動機づけは、自分の興味関心や直感に従うため、成果が出るまで時間がかかる場合があります。また、内発的動機づけによる作業自体が成果との因果関係を見出しにくい場合もあります。

自分の心が満たされる状態が軸であるため、短期で成果をあげる必要のある仕事には不向きです。

ビジネスにおける内発的動機づけの活用例

ビジネスにおける内発的動機づけの活用

では、ビジネスにおいて内発的動機づけはどのように活用できるでしょうか?活用例を3つ紹介していきましょう。

フィードバック

部下へのフィードバックの際には、次の点を意識してみると、内発的動機に働きかけることが可能です。

  • 上司が部下の人格や価値観を理解して承認する。
  • 部下と一緒に仕事の現場を分析する。
  • 部下の動機づけにつながる表現を用いる。

「部下の動機づけにつながる表現」とは、「部下一人ひとりの性格や価値観に合った表現」です。性格特性検査やEQの指標などを用いて、部下一人ひとりの特性の把握ができます。

特に、若い部下は仕事の価値や目的を見出せないことが、早期離職につながると言われています。仕事に対して継続的かつポジティブに取り組むためにも、上司が部下に適した形でのフィードバックが重要です。

目標設定

内発的動機づけを引き出せるような目標の設定が可能です。その際に上司は、部下が適切な目標設定ができるよう、今までの経験や高い専門性を交えた多種多様なアドバイスを行いましょう。

目標の方向性が決定したら、具体的な数値や期限などを決定して、目標を具体的に形作っていきます。部下が目標達成のために本気になるためにも、最初から高すぎる目標を立てるのは避けてください。

実現可能な範囲で、少しずつステップアップできる目標を設定できると、部下自身も自分の成功体験を積み重ねることが可能です。

自律的行動の促進

部下の内発的動機づけに基づいた自律的行動を促進したり、管理したりする必要があります。上司は、部下の行動が持続できているか、結果が出せるようにサポートする役割があるからです。

状況によっては、なぜ行動が結果につながらないのか、原因を一緒に探ったうえで、計画や行動の改善を促しましょう

ただし、人からルールを強制されると、内発的動機を元にスタートさせたことが外発的動機にすり替わる場合もあります。部下の内発的動機を持続させるには、部下の成長段階に合った必要最小限のルールにとどめことがポイントです。

内発的動機づけについて学べるおすすめの本

最後に、内発的動機づけを高めるのに役立つおすすめの本を3冊紹介しましょう。

おすすめ1:「やる気」を育てる!〜科学的に正しい好奇心、モチベーションの高め方

「やる気」を育てる! ~科学的に正しい好奇心、モチベーションの高め方

「ほんまでっかTV」でおなじみ植木理恵先生の書籍です。「やる気」や「モチベーション」について、心理学や科学的な研究によって実証されたセオリーにもとづいて、わかりやすく解説されています

概念だけでなく、著者地震の研究やカウンセリング経験も交えながら、効果的で普遍的や一生モノの「やる気」の育て方がわかる本です。基本的に子どもや部下の育て方に悩んでいる方に向けての内容ですが、それ以外の方にも応用できます。

おすすめ2:やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学

やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学

モチベーション科学の第一人者である著者が、「心理学的に正しい目標達成の方法」を「9つの習慣」にまとめて紹介している本です。アメリカの読者の間では「お宝本」と呼ばれるほど話題になり、日本でもメンタリストのDaigoさんが紹介し、注目を集めました。

本で紹介されている全ての方法は、実験結果に裏打ちされており、安心して読み進められます。「能力は努力次第で伸ばせる」という著者のスタンスのもと、目標を達成するためのヒントや自信を与えてくれる本です。

おすすめ3:【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology)

【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology)

古典的なモチベーション理論に関して書かれている本です。ハーズバーグの「2要因理論」やマクレランドの「達成動機」、先述した「ピグマリオン効果」などについて学術的な観点から解説しています。

新版では、新たに神経科学における最新理論を加えられており、多方面から「やる気」を引き出すマネジメント法を知りたい人におすすめです。

まとめ

人生を謳歌している女性

内発的動機づけの意味や、どのようにしたら高められるのかについて、ビジネスにおける活用例やおすすめの本を交えながら解説しました。要点は次の通りです。

  • 内発的動機づけとは、自分の内面からわき起こる動機づけ。
  • 内発的動機づけは「成功体験の積み重ね」「ピグマリオン効果の活用」「EQ指数による可視化」などの方法で高められる。
  • 内的動機づけは標準化できない物事の生産性アップや、自主性の醸成に寄与する。

本文で紹介した内容をぜひお役立てください。

ABOUT US

株式会社グロースウェル 代表取締役。顧問先20社支援中、社長の平均年齢35歳。システム部門やプロダクトチームの組織的な3つの問題を解決する。累計500名超国内トップクラスのEQベースのビジネスカウンセラー
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