EQリーダーシップの6つのスタイルとメリット・デメリット

コラム

EQ型のリーダーシップとは、メンバーの感情を正しく方向付け、組織をより良い方向に導く考え方です。実務や体制なの改革よりも組織メンバーの感情への働きかけを重視するリーダーのあり方として注目を集めています。

組織の運営や管理者が最善の組織環境の形成を目指す場合、EQに根ざしたリーダーシップへの自己変革が重要です。今回は、EQの考え方を用いたリーダーシップのメリット・デメリット、優秀なリーダーを燃え尽きから守る方法などについて解説します。

EQリーダーシップ論の要約

握手するビジネスマン・ビジネスウーマン

まずは、EQの基本的な概念やEQを用いたリーダーシップ論について解説します。

EQとは

EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは、「自分や他人の感情をどのくらい正確に認識し、より良い形で管理したり表現したりできるか」についての指数です。IQ(Intelligence Quotient)とは違い、後天的に開発できる能力として、主にビジネス社会で注目を集めています。

元々、EQは1999年にサロベイ氏とメイヤー氏の論文によって明らかにされた理論です。その後、アメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマン氏の著書が世界的なベストセラーになったことをきっかけに、EQの重要性が広く知られるようになりました。

EQは次の4つの能力によって構成されています。

  • 感情を知覚・表出する力
  • 感情を同化する力
  • 感情を理解する力
  • 感情を管理・調整する力

よって、EQの指数を測定する際には、これら4つの能力の程度やバランスをもとに分析します。

EQリーダーシップ論とは

EQを用いたリーダーシップは、組織内の人間関係やモチベーションなどが重要な場合に特に有用です。

例えば、「積極的に挨拶する」「声かけする」「ほめる」「認める」などでメンバーの感情をポジティブな方向に導けます。また、ダニエル・ゴールマン氏はリーダーを「立場」ではなく、「人」として位置付けました。「リーダーとしての役割」以前に、「リーダーとはどうあるべきか」には違いがあるからです。

そして、人を動かす原動力は「心」であり、「心の知性」こそ豊かな人生にとって必要であると、科学的に証明しました。つまり、ダニエル・ゴールマン氏のいうリーダーシップは「立場」や「役割」ではなく、「心」に注目して分類されるのです。

EQリーダーシップにおける6つのスタイル

滑走路

EQのリーダーシップは、状況に応じて6つのスタイルへの使い分けが必要です。それぞれの特徴を解説しましょう。

スタイル①:コーチ型

コーチ型とは、メンバーの強みや弱みなどを対話を通して引き出し、行動目標の設定をサポートするリーダーシップです。個々の希望を組織の目標に結びつけ、メンバーの長期的な才能を伸ばしながら組織の生産性を向上させる状況下で、前向きなサポートができます。

スタイル②:関係重視型

関係重視型とは、メンバーの承認欲求やメンタル面のケアを業務目標の達成よりも重視するリーダーシップです。ストレスのある環境でメンバーのモチベーションを高めたり、人々を互いに結び付けて調和性を保ったりに寄与します。

スタイル③:民主型

民主型とは、メンバーとの対話や話し合いに時間を取り、組織としての方向性を全体で共有しながら進めるリーダーシップです。メンバーからの提案を得たい状況で用いられます。

スタイル④:ビジョン型

ビジョン型とは、共通の目標に向かってメンバーを動かすリーダーシップです。イノベーションや明確な方向性が求められる状況下で採用されます。

スタイル⑤:ベースセッター型

ベースセッター型とは、リーダーがメンバーに高いレベルのパフォーマンスを求め、自らの仕事を通して目標の達成を目指すリーダーシップです。モチベーションも能力も高いチームで、さらに高いレベルの結果を引き出したい状況で用いられます。

スタイル⑥:強制型

強制型とは、メンバーに対して一方的に指示を出すリーダーシップです。緊急性の高い状況や早急な対応が求められる際に効果を発揮します。

EQリーダーシップのメリット

右肩上がりのスコア

EQを用いたリーダーシップの代表的なメリットについて、4つご紹介します。

メリット①:メンバーの自立心を育成できる

EQ型のリーダーシップによっては、メンバーの自立心を育成できます。メンバーが意見を出しやすい環境づくりを目指すには、「トップダウン型」ではなく「ボトムアップ型」のリーダーシップを目指すことが重要だからです。

先述したリーダーシップの例で言えば、コーチ型や関係重視型、民主型がボトムアップ型に基づいたスタイルであり、EQ型に近いリーダーシップと言えます。

メリット②:メンバーのポテンシャルを引き出せる

EQリーダーシップは、戦略や経営を主眼とした思考レベルではなく、本音でメンバーと語る「感情レベルの会話」をするため、メンバー一人ひとりの本来の能力を発揮しやすい組織づくりが可能です。相手から本質的な感情を引き出すには、リーダーがメンターとなり、メンバーを導くうえで必要な信頼関係の構築が大切になります。

メリット③:チーム全体の生産性が向上する

EQに基づいたメンバーへの関わりは、メンバー自身の自尊心を高められるため、チーム全体の生産性が向上します。メンバーが自信を持って業務に携わるには、リーダーが従業員の強みや優れた点を把握し、価値を実感できる仕事を任せる姿勢が大切です。

メリット④:チームメンバーのモチベーションが醸成される

EQレベルの関わり方ができると、チーム全体のモチベーションアップに寄与できます。周囲のやる気を出すには、まずリーダー自身に高いモチベーションが必要です。

また、ワクワクする理想像や目的地を論理ではなく、感情レベルでメンバーと共有すると良いでしょう。

EQリーダーシップのデメリット

パソコンの前で悩む男性

一方で、EQをうまく活用できないとリーダーシップが適切に機能しない場合があります。代表的なデメリットを4つ紹介していきましょう。

デメリット①:メンバーとの信頼関係がないと機能しない

EQを用いたリーダーシップは、人との関わりを軸に行うため、そもそもメンバーとの信頼関係がないと成立しません。リーダーから「頑張れ」や「大丈夫」と声がけされた場合、その言葉を励ましととるかプレッシャーと受け止めるかは、メンバー次第だからです。

信頼関係の構築は長い時間がかかるため、短期で効果をあげたい場合には不向きです。

デメリット②:人の気持ちを無視しにくい

EQは感情を重視する考え方なので、人の気持ちを無視できません。この特徴は、一人ひとりの個性を尊重する良い面もあります。

しかし、リストラや出向など思い切った組織改革をする際には、リーダーの情が影響して判断の足かせになる点がデメリットです。

デメリット③:効果がでるのに時間がかかる

リーダー自身がEQについて理解し、能力を高める必要があり、メンバー一人ひとりのEQを分析して、弱みや強みなどを把握するには多大な時間を要します。通常業務に加えて、人材育成のために時間や人力を割けない企業も多いため、EQを活用したくてもなかなかうまく機能しなかったり、効果がでるのに時間がかかったりする懸念があります。

デメリット④:リーダーの人間性への比重が高い

EQを活用したリーダーシップは、リーダーへの人間性への比重が高い傾向にあります。優れたEQリーダーシップを発揮させるには、先述したEQの4つの構成要素をそれぞれをバランス良く共鳴させる必要があるからです。

しかし、EQの能力は、リーダー自身の人間性にも左右されるため、精神的に負担がかかる場合があります。

優秀なリーダーを燃え尽きから守る5つの方法

燃え尽きていないリーダー

優秀なリーダーが組織運営において、自身の精神的な摩耗から身を守るには、自己管理の徹底が重要です。ダニエル・ゴールマン氏は、優秀なリーダーを探る研究を通して、優秀ゆえの葛藤を抱え、プレッシャーに押しつぶされる人たちを目にしました。

そして、その問題意識をもとに「Reawakening Your Passion for Work」という論文を執筆。燃え尽きの兆候に対処する方法として次の5つを挙げています。

方法①:小休止

本当にやりたいことや夢を理解するために少しだけ休む勇気を持ちましょう。休む行為は大きな犠牲に感じますが、長い目で見ると長くパフォーマンスを保つうえで有用です。

方法②:プログラムへの参加

夢を探したり新しい見識を広げたりする際に、リーダーシップや発展的なプログラムに参加すると、ちょっとしたリフレッシュできる時間になります。現在のポジションに対して、新しい意味や情熱を見つけ出すきっかけにもなるでしょう。

方法③:内観の時間を持つ

内観の時間とは、海外では主に宗教に基づいた祈祷を指す人が多いようです。しかし、日本では宗教に限らず、マインドフルネスによる瞑想を通して自分の心と対話をすると、精神の崩壊や困難な状況の打開に同等な効果があるでしょう。

方法④:カウンセリングを受ける

自分自身のバイアスや経験は新しい道や困難な状況を打破する際の壁となります。友達、家族、同僚もしくはプロのカウンセラーなどの第三者に相談すると、自分の強みや新しいアイデンティティを見つけ出すことが可能です。

方法⑤:身近な環境から新しい価値を見出す

新しい仕事に就いたり、どこか新しい場所に行ったりを実行できない場合もあるでしょう。大きな変化を望まない人は、「過去を振り返ってみる」「自分自身の人生理念を考えてみる」など、身近な生活や人との関わりの中で、新しい価値を見出す取り組みをしてみてください。

まとめ

人と人とのつながり

EQの考え方を用いたリーダーシップについて、メリット・デメリットや優秀なリーダーを燃え尽きから守る方法などをみてきました。要点は次の通りです。

  • EQリーダーシップは、「組織内の人間関係やモチベーションなどが重要な要素とされる場合に有用
  • EQリーダーシップはメンバー1人ひとりを大切にし、グループの生産性を高める機能がある
  • EQリーダーシップはリーダーへの負担が大きく、効果が出るのには時間がかかる

EQを活用したリーダーシップを効果的に機能させるには、外部で専門的なトレーニングを受けたり、正確な測定ツールを元に個々のEQを分析したりのはたらきかけが重要です。本記事でご紹介した考え方をぜひお役立てください。