ビジネス場面でより良い組織運営や人材育成をするうえで、EQをベースにした感情のマネジメントが役立ちます。では、EQを活用した感情のマネジメントはどのように実行できるのでしょうか?
本記事は、EQを活用した感情マネジメントについて、感情の基本的な概念や効果的な活用方法などを交えて詳しく解説します。
目次
感情とは
感情とは、日常のさまざまな場面での心の動揺や変容体験による心の動きを指します。心理学における感情は感覚感情から始まり、「feeling(触れて感じる感情)」や「affection(愛情のニュアンスが内包された感情)」まで多種多様です。
感情の方向性
人間の基本となる感情は「喜び・信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・予期」の8種類。そして、一般的に感情には「生理学的な感情」と「論理的な感情」の2つの方向性があります。
- 生理学的感情
生理学的感情とは、その名の通り「生理学的な反応を付随する感情」です。心理学者のウィリアム・ジェームズ氏が言うように、生理学的な観点からの感情は「人は感情よりも先に体が反応を示す」特徴があります。
例えば、「人は泣くから悲しい」のであって、「悲しいから泣く」のではありません。
- 論理学的感情
反して、論理的感情とは「論理性が付随する感情」です。この感情は人間特有とされています。感情に論理を伴わせると、論理が感情に左右され、歪む原因になる場合がありますが、多くの人はそれに気付いておらず、自分の論理は正しいと判断しています。
例えば、「悲しみ」と言う感情に対して「どうして悲しいのか」と言う論理を付随させる「物思い」が挙げられます。感情に対する論理的な理由を付随させ、本来の「悲しみ」が苛立ちや怒りへと変化する場合があるのです。
ゆえに、人間は先述した8つの基本的な感情をそのまま感じるのではなく、何らかの論理と付随して感じる傾向にあります。しかし、その論理的な感情には多くの場合、何らかの歪みが生じてしまうのです。
感情の機能
感情の代表的な機能として、「自分自身への信号」と「コミュニケーションの活性化」があります。
自分自身への信号
「自分自身への信号」とは、感情は自分にとって重要な何かが生じていると知らせる信号としての機能です。状況によっては、感情が具体的・直接的な行動を促す働きもあります。例えば、怒りはときに「戦闘態勢の合図」や、「相手を排除しろ」といった「命令としてのシグナル」になり得ます。
コミュニケーションの活性化
「コミュニケーションの活性化」とは、感情の表出によって、他者に自分に関する副次的情報を伝え、他者とのコミュニケーションと活性化させる機能です。例えば、「悲しい」と言う感情は、「誰か助けて!」「私は傷ついてしまった」「慰めて」と、他者に訴えかける力があります。
このように、感情には、「悲しい」といった直接的な意味だけでなく、それに付随するメッセージ性や役割として機能する側面があるのです。
EQにおける感情マネジメントとは
EQにおける感情マネジメントとは一体何を意味するのでしょうか?EQの基本的な概念を交えて解説します。
EQとは
EQ(Emotional Intelligence Quotient)とはサロベイ氏とメイヤー氏が最初に理論立てた「感情に関する知性」です。彼らは学術論文の中でEQを「自分の感情を把握すること、適切に調整すること、利用することは知性の一部である」としました。
その後、ダニエル・ゴールマン氏の著書『EQ〜心の知能指数』が世界的なベストセラーになった流れを皮切りに、ビジネスにおけるEQの重要性が世界中に広まったのです。
EQとIQの違い
EQとよく混同される知性に「IQ(Intelligence Quotient)」があります。EQとIQの違いは、主に次の3つです。
- EQは感情に関する指数だが、IQは学力(知能)に関する指数
- EQはIQとは違い可変的であり開発可能な能力
- EQの高さはIQよりも人生における満足度や成功度に影響を与える
つまり、EQを感情能力として位置付けた場合、構造や働きを理解できれば、後天的にEQの能力を高めたり日常生活やビジネスに活用したりが可能です。
「EQをマネジメントする」とは
ビジネスにおけるEQマネジメントとは、チームメンバー一人ひとりの感情が組織にとってより良い方向に向かうような、リーダーの働きかけで実現します。
例えば、メンバーがリーダーから「頑張って」「期待しているよ」といわれた際、かけられた言葉を「勇気づけ」と受け止めるか「プレッシャー」と感じるかは人それぞれです。リーダーが個々のEQを分析して感情のクセを把握できると、その人に適した感情のマネジメントができるのです。
EQの測定方法
EQの測定方法はさまざまな手段がありますが、代表的な測定方法である「観察法」を紹介します。「観察法」は、リーダーがメンバーにどのような特性があるのか、観察しながら把握する手段です。着目すべき事象として次のような点があげられます。
- メンバーは過去をどう捉えているのか
- メンバーは周囲からの目をどう捉えているのか
- メンバーは未来をどう捉えているのか
もし、メンバーがこれらの項目を後ろ向きに捉えている場合は、EQに何らかの偏りがあると推測できます。
感情をコントロールする4つのマネジメント法
感情をコントロールするうえで役立つ、4つのマネジメント法について解説します。
ネガティブ感情の可視化
ネガテイブ感情を文章として表出できると、自分が何に対してどのように感じるのかを明確にできます。また、何に対してネガティブな感情が生じるのかがわかったら、他者から受けたネガティブな事象に対して、はっきりと「嫌だ」と伝えることも可能です。
表情のコントロール
顔文字やイラストで感情を表す際に、口角をあげたり、眉毛を傾けたりして表情をコントロールして表現する場合があります。このように、どのような感情かを相手に正確に伝えるには、自分の伝えたい感情と表情を一致させられるようなトレーニングが重要です。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、「怒りや苛立ちといった感情を適切に管理したりコントロールしたりする心理療法プログラム」です。例えば、次のような方法によってアンガーマネジメントは実行できます。
- 怒りの感情は6秒間続かないという原則を知り、怒りがなくなるまで6秒間カウントする
- 自分が怒りを感じるパターンを把握する
- 自分が何に対して起こっているのかを明確にする
- 怒りの感情を問題解決に活かす
- アンガーマネジメントが必要な問題を認識する
アンガーマネジメントはビジネスパーソンにとって、必要不可欠な心理トレーニングです。感情に任せたコミュニケーションを取りがちな方はぜひ参考にしてみてください。
ボディランゲージのコントロール
無意識に行うボディランゲージは、表情と同様に相手に感情を伝える手段となります。
例えば、相手が会話の途中で貧乏ゆすりをしていたら、「何かイライラしているのかも」「早く会話を終わらせた方が良いかも」という印象を受けるでしょう。ゆえに、自分自身のボディランゲージをコントロールすると、相手の感情のコントロールが可能です。
怒りのデメリットとメリット
怒りには、デメリットだけでなく、メリットもあります。コントロールすべき怒りと今後に活かすべき怒りを適切に判断できるために、それぞれの特徴を把握しましょう。
怒りのデメリット
デメリットのある排除すべき怒りの特徴は次の通りです。
- 血圧や心拍などに異常が見られる怒り
- ストレス反応により些細なことで生じる怒り
- 無意識に生じる正当化された怒り
- 恨みともいえるほど長く続く怒り
怒りを放置すると、自分を苦しめ続け、メンタルヘルスに支障となる原因にもなります。また、哺乳類は自分の身に危険が起きたとき、防衛反応によって怒りが表出するとされています。
ゆえに、怒りの感情を過度に無くすと、危険に対する防御感情も同時に失われ、危険な場面で命を守るための適切な対処ができません。
怒りのメリット
一方で、うまく活用すべきメリットのある怒りの特徴は次の通りです。
- 自らにとって望ましい形に問題解決を導ける怒り
- 言うべき内容が明確な意図のある怒り
- 感情が燃料となって行動を後押しする怒り
- 大声を出すことでカタルシスをもたらす怒り
怒りの感情はネガティブに扱われがちですが、人間にとっては必要不可欠な感情です。真剣に怒ることで、周囲や相手に真剣さや重要性を伝えられます。
また、怒りのプラスのエネルギーに変えられると、前進するためのエンジンにもなります。仕事でモヤモヤやイライラを感じる場面でも、その感情を前向きなエネルギーに転換できれば大きな成長につながるでしょう。
感情マネジメントの注意点
感情をマネジメントする際に気を付けたい注意点を3つに分けて紹介します。
自主独立性
自主独立性とは「自分を積極的に主張できる力」です。仕事や課題のテーマ自体が行動の原動力となる人にとって、リーダーからのはたらきかけはかえって意欲を低減させる原因になります。
ゆえに、自主独立性の強い人には、委任型の目マネジメントをする方が効果的です。仕事について細かい評価やアドバイスよりも、遂行能力を承認する方向でリードする方が良い点に注意してください。
セルフエフィカシー
セルフエフィカシーとは、「自分で気力を生み出す力」です。セルフエフィカシーが高い人は自信家で、自分はなんでもできると思っています。
逆に、セルフエフィカシーの低い人は自分に自信が持てずに消極的になりがちです。セルフエフィカシーの低い人には具体的なプロセスを提示し、メンバー自身が「うまくいく」と納得できるようにリードしましょう。
感情的被影響性
感情的被影響性とは、「相手の感情に影響を受けやすい傾向」を指します。
例えば、感情的被影響性が高い人は道端で泣いている女の子がいた場合、自分ももらい泣きしてしまったり、動揺してしまったりしやすい点が特徴的。感情的被影響性の高い人を情緒的に動機づけるとムードに流されやすく、実力が伴わない仕事を感情だけでやり抜こうとします。
よって、感情的被影響性の高い人には感情面だけでなく、仕事のプロセスや状態に焦点を当てるようなリーダーの働きかけが重要です。
感情マネジメントの知識を学べる本
感情マネジメントについて知識を深めたい人におすすめしたい本を3冊を紹介します。
感情マネジメント〜アサーティブな人間関係をつくるために
REBT(Rational Emotive Behavior Therapy)、と呼ばれる、自助のための心理療法を、理論的かつ実践的に非常にわかりやすく紹介したものです。REBTの理論面だけでなく、実践面への対応も同時にできる良書となっており、特に次のような思考に陥りがちな方におすすめです。
- ~でなければならない
- ~は100%でなければ意味がない
- ~できないので自分はダメ人間だ
- ~であるのは周りの人間が悪いからだ
また、感情マネジメントに関して、アサーティブな人間関係を作るための方法についても書かれています。
アサーティブとは、他者を傷つけずに自分の主張をはっきりと伝える方法です。きっかけとなる出来事に対して、人はどう考えるかについて、感情の側面から和らげる方法について詳細に言及されています。
感情マネジメントと癒しの心理学
感情マネジメントに関して心理学的観点から分析している学術書です。うつ病の治療は単に感覚が正常になれば終わりなのではなく、治癒への不安を受け止めながら本来の感覚や生活を取り戻す必要性を言及しています。
感情マネジメントについて、学術的なレベルで知識を深めたい人におすすめです。
女性リーダーのための!感情マネジメントスキル
女性リーダーが抱きやすい、次の5つの感情について対処法を交えながら解説しています。
- クヨクヨ(勇気がでない)
- イライラ(腹が立つ)
- ヤキモキ(スムーズでない状況が焦れったい)
- ハラハラ(部下に対する恐れ)
- ドキドキ(上司に対する恐れ)
女性リーダーは状況や他者心理を読む能力に長けている傾向があるため、男性リーダーを無理に模倣せずに自分らしい等身大のリーダーを目指せると言及しています。女性でリーダーのポストを任された人や、女性リーダーの下で働く人におすすめの本です。
まとめ
EQを活用した感情マネジメントについて、感情の基本的な概念や怒りのメリット・デメリット、実践方法などを交えて解説しました。要点は次の通りです。
- EQにおける感情マネジメントとは主にチームメンバー一人ひとりの感情が組織にとってより良い方向に向かうよう、リーダーの働きかけで実現する
- EQに即した感情マネジメントは「ネガティブ感情の可視化」「感情のコントロール」「アンガーマネジメント」などから実践可能
- メンバーの特性によっては、EQマネジメントが不向きな場合もある
EQ型のマネジメントの特性をうまく活かせば、組織や個人をより良い方向に導くことが可能です。本記事をビジネスや人材育成の場面などでぜひお役立てください。
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