【解説】認知能力と非認知能力の違いとは?大人が非認知能力を鍛える方法

認知能力と非認知能力の違い コラム

主に幼児教育の場で重視されてきた、「認知能力」「非認知能力」という概念。近年は、社会生活やビジネスの場で役立つ能力として、大人の間でも注目されています。

とはいえ、言葉自体は聞いたことがあるけれど、詳しい内容までは知らないという方が多いのではないでしょうか?そこで今回は、認知能力と非認知能力の違いや、大人でもできる具体的なトレーニング方法について解説します。

認知能力と非認知能力の違い

認知能力と非認知能力の違い

認知能力と非認知能力には、どちらも“認知”という共通のキーワードが含まれています。しかし、その性質は実に対照的です。まずは、認知能力と非認知能力の違いについて解説していきましょう。

認知能力とは

認知能力とは、いわゆる「学力」のことを指します。国語や算数などの、学校教育や予備校通いで伸ばせる能力をイメージするとわかりやすいでしょう。

「必要な情報を記憶して適切なタイミングで出力する」という意味では、大学入試やTOEICなども認知能力を駆使するテストだと言えます。

非認知能力とは

一方、非認知能力は「認知能力以外の力全般」を指します。具体的には、協調性、コミュニケーション能力、計画性、創造性などの数値化できない能力のことです。

非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究報告書』(2017年、国立教育制作研究所発表)によれば、非認知能力は「自分と他者・集団との関係に関する社会的適応及び心身の健康・成長につながる行動や態度、そしてまた、それらを可能ならしめる心理的性質」と記されています。

この定義からもわかるように、非認知能力は「社会生活を営むために必要なスキル」、もしくは「人間力全般」と言い換えても良いかもしれません。

「勉強ができる」=「非認知能力が高い」ではない

非認知能力は、集団の中でこそ育まれる能力です。友人との衝突や折り合いのつけ方、協力など、“他者との関わり”が必要不可欠だと言えます。

記憶力や知識量(=認知能力)を競う学力テストならば、一人で黙々と机に向かう方法でも十分能力を伸ばせるでしょう。ただし、非認知能力の場合は違います。

テストの点数を向上させるための学習をこなし、認知能力が向上したとしても、それに比例して非認知能力が伸びるわけではありません。そのため、「勉強ができる子」=「非認知能力が高い子」という図式は必ずしも成り立たないのです。

大人が非認知能力を伸ばすべき理由

大人が非認知能力を伸ばすべき理由

次に、大人が非認知能力を伸ばすべき理由を2つ紹介します。どうして今、ビジネスの場で非認知能力が注目されているのか、その秘密に迫っていきましょう。

社会人生活に必要なスキルだから

高学歴で将来を期待されていた新入社員が、いざ現場に出たら力を発揮できない──昨今、よくそんな話が聞かれるようになりました。その多くは、コミュニケーション能力不足や調整能力不足など、何らかの形で非認知能力が関係していることがほとんどです。

上司や同僚との日々のやり取りに加え、営業職や接客業など人と密に接する職種では特に高い対人スキルが求められるでしょう。また、プログラマーやデザイナーなど個人作業が多い職種であっても、人との関わりはゼロにはなりません。

チームメンバーと連携を取ってプロジェクトを進めるぶん、他の職種よりも折衝能力が求められるでしょう。このような対人スキル以外にも、目標を計画し遂行する力、課題を克服する力など、非認知能力はビジネスの場で必要不可欠な能力なのです。

人生の満足度に影響が出るから

非認知能力の研究として有名な「ペリー就学前計画」の実験では、非認知能力の育成がその後の人生にプラスの影響を与えることが明かされています。この実験は、幼児教育が受けられない貧困家庭の子どもを対象に、集団+家庭訪問で就学前教育を受けさせるというものです。

40年後、就学前教育を受けたグループとそうでないグループを比べたところ、収入や持ち家所有率、生活保護の非受給率などで大きな優位性が認められました。そして、この結果は就学前教育によって「やりぬく力」「感情をコントロールする力」「コミュニケーション能力」などの非認知能力が育まれたからだと考えられているのです。

また、これらの要素が人生に及ぼす影響は、何も収入面や社会的地位に限定した話ではありません。目標に向かって諦めずに努力し続ける、自分の感情をコントロールする、他者と良好な関係性を築く──これらの力によって、自己実現や人間関係などの分野においても望みを叶えやすくなるため、人生全般の満足度を向上させられるのです。

ビジネスにおける非認知能力の具体例

ビジネスにおける非認知能力の具体例

非認知能力を構成する要素には諸説ありますが、代表的なものとしてガットマン氏とショーン氏が発表した8つの構成要素が挙げられます。

内容は、以下のとおりです。

  1. 自己認識
  2. 動機づけ・意欲
  3. 持続力・忍耐力
  4. 自制心
  5. メタ認知戦略
  6. 社会的能力
  7. 回復力・対応力
  8. 創造性

ここからは、この8つの要素を例に挙げ、ビジネスシーンでどのような非認知能力が求められるのかを解説します。

自己認識の例

自己認識とは、タスクや目標を達成できるか否かに対する個人の考えを指します。そして、この自己認識の基となるのは、「過去の経験への認識」と「将来のパフォーマンスへの予測」です。

つまり、過去の経験から得た学びを活かしつつ、将来の予測を立てる力だと言い換えられるでしょう。「過去の失敗や成功体験を分析して次のタスクに活かす」というサイクルは、日々の業務全般に共通する基本的なビジネススキルだと言えます。

動機づけ・意欲の例

動機づけ・意欲は、個人の考えや行動の理由のことを指します。何か特定の事象に対して自分なりの意義を見出す力、また、そのために具体的なアクションを起こす力だと言い換えられるでしょう。

「目の前のタスクをただ何となくこなしている」「やらされている感がある」といった場合は、この動機づけ・意欲が低いためかもしれません。その作業によって得られるメリットや成長を明確にする(=動機づけする)と、意欲向上にもつながるでしょう。

持続力・忍耐力の例

持久力・忍耐力は、スキルの習得やタスクの完了に着実に取り組む行動を指します。「やりぬく力」「粘り強く取り組む力」「遂行力」「継続力」などの言葉にも置き換えられるでしょう。

つまり、問題や困難に直面しても投げ出さず、最後までやり続ける力のことです。

ビジネスの場では、必ずしも努力がすぐに実を結ぶとは限りません。新規事業の立ち上げなど1から新たに作り上げるときや、別部署に異動して環境が変わったときなどは特に、成果が出るまでにある程度の時間を要します。

結果が出ない期間も挫けず、目標を見据えて粘り強く取り汲み続けるには、この持続力・忍耐力が必要になってくるでしょう。

自制心の例

自制心は、長期の目標達成を優先させるため、短期的な欲求や衝動を抑えられる力を指します。つまり、外からもたらされる誘惑や、自身の中から湧き上がる欲望に負けない力のことです。

優先順位が高いタスクがあるにも関わらず、メールチェックなどの楽な作業や好きな業務を優先してしまった──そんな経験はないでしょうか?このような先延ばしが癖になっている場合は、自制心が低いことが原因だと考えられます。

メタ認知戦略の例

メタ認知戦略は、学習に最も役立つ戦略の思考と選択・監視・計画に意識を集中させ、自分自身の学習行動とプロセスに影響を与える目標指向の取り組みのことを指します。

言い換えるなら、物事を俯瞰してとらえ、適切な解決策を導き出す力です。

メタ認知戦略に長けた人は、問題や課題を正しくとらえ、改善するための方法を見つけ出すことができます。自分と他者の意見のギャップを埋めるために双方が納得できる代案を出すなど、業務はもちろん円満な人間関係を築くうえでも役立つ力だと言えるでしょう。

社会的能力の例

社会的能力は、他者と交流したり関係を構築したりするためのスキル全般を指します。他人の思考や行動、感情に影響を与える力も含まれるため、人の上に立つ管理職やリーダーポジションを務める人には必須な力だと言えるでしょう。

性格や価値観が異なるチームメンバーをケアしつつ、全員で力を合わせて一つの目標に向かわせるためには、リーダーの社会的能力の向上が鍵を握っているのです。

回復力・対応力の例

回復力は、困難に直面した際に危険因子を減らして、危険を緩和させる保護因子を増やす力のことを指します。また、対応力とは、ストレスのかかる状況での問題解決や楽観的思考のことです。

双方をまとめて、ストレス耐性と言い換えても差支えないでしょう。回復力や対応力が高い人は、挫折や困難に襲われても、自分でストレスを緩和できたり、問題解決に導けたり、「なんとかなるさ」と前向きにとらえられるのです。

創造性の例

創造性は、創造的で斬新なアイディアを生み出す力のことです。企画職やデザイナーなど、発想力やオリジナリティが求められる職種では特に発揮される力だと言えるでしょう。

また、創造性が高い人は思考が柔軟で対応能力も高い傾向にあります。そのため、自分なりのやり方で業務効率をはかったり、相手によってコミュニケーションの仕方を変えたりと、工夫をこらして問題を切り抜けられるのです。

大人が非認知能力を鍛える方法

大人が非認知能力を鍛える方法

これまで、主に幼児教育の分野で注目されてきたこともあり、非認知能力を伸ばす方法は幼児向けの内容がほとんどです。とはいえ、非認知能力の向上が見込めるのは、子どもに限った話ではありません。

大人になってからも非認知能力を鍛えることは可能なのです。では、大人が非認知能力を伸ばしたいと思った場合、どのようなトレーニングを行えば良いでしょうか?

ここからは、日常的に取り入れられる具体的な方法を3つ紹介します。

仕事以外の目標を持つ

非認知能力は、もちろんビジネスの場で鍛えることも可能です。ただし、それに加えてプライベートな時間を活用すれば、さらなる非認知能力の向上が期待できます。

ぜひ、仕事以外にも目標を掲げ、達成に向けて努力してみましょう。

中でも、資格取得やスポーツなど、長期的に取り組めるものは特におすすめです。「試験日までに合格できるだけの力をつける」「〇月までにハーフマラソンで目標タイムを切る」など、毎日少しずつ努力して力をつけられる内容が良いでしょう。

「持続力・忍耐力」以外にも、サボりたいという誘惑に打ち勝つことで「自制心」を、進捗状況を客観的にとらえて計画を微調整することで「メタ認知戦略」を鍛えられますよ。

他人と協力する時間を持つ

幼児教育の場では、他の子どもと一緒に遊ぶことで非認知能力を育んでいます。おままごとでお父さんやお母さんなどのそれぞれの役割を学んだり、おもちゃを譲り合うことで社会性を育んだりしているのです。

“遊び”は、大人が非認知能力を鍛えるうえでも最適なトレーニングになります。できれば、自分が主催者となって、イベントやレジャーの企画を立ててみてください。

試行錯誤しながら計画を立てる、他者を巻き込んで一つの物事に取り組むなど、「創造性」や「社会的能力」の良いトレーニングになります。また、キャンプやバーベキューなどの共同作業が多いものを選ぶと、さらに社会的能力の向上が期待できるでしょう。

小説を読む

ビジネス書や自己啓発書もいいですが、ぜひ小説にも手を伸ばしてみてください。他者の気持ちを汲み取る力が磨かれて、「社会的能力」の向上につながります。

この他にも、物事を俯瞰して見られるようになる、物語の疑似体験を通してストレス耐性がアップするなど、「メタ認知戦略」や「回復力・対応力」にもプラスの影響を及ぼすでしょう。

まとめ

「認知能力」と「非認知能力」の違いについて、さらに、大人が非認知能力を伸ばすための方法について紹介しました。非認知能力については、次のようにまとめることができます。

  • 認知能力とは、学力のことを指す
  • 非認知能力とは、コミュニケーション能力、創造性、意欲など、学力以外の数値化できない能力を指す
  • 非認知能力は充実した社会人生活や人生の満足度を上げるために必要な能力であるため、子どもだけでなく大人(特にビジネスパーソン)も積極的に伸ばすべきである
  • 非認知能力は仕事以外の目標を持つ、他者と協力する機会を持つ、小説を読むといった訓練によって向上が見込める

非認知能力は、社会生活を営むうえで必要な力です。特に、多くの人と関わり、協力して物事に取り組む機会が多いビジネスパーソンにとっては重要なスキルだと言えます。

今回紹介した内容をもとに非認知能力を伸ばし、仕事の成果向上や、同僚や顧客との円滑なコミュニケーションにぜひご活用ください。