「こころの知能指数」と言われる「EQ」が高い人は、ビジネス上でのコミュニケーションにおいても、相手との良好な関係構築に秀でているとされています。
この記事では、「EQ」とは一体どのような能力で、ビジネスコミュニケーションでどういった働きをするのかについて解説します。
目次
ビジネスコミュニケーションとは
人が日々さまざまな活動をする中でも、必ず行わなければならないのが「人との関わり」です。たとえ仕事でも、学校でも、地域活動でも、人と関わりコミュニケーションを取らなければなりません。
対面、電話、メールなど、コミュニケーションの手段はさまざまですが、その向こう側には必ず人が存在します。ここでは、ビジネスにおいて必要となるコミュニケーションとはどのようなものなのかについて解説します。
仕事を進めるために必要な潤滑剤
ビジネスコミュニケーションは、円滑に仕事を進めるために必要不可欠なものといって良いでしょう。取引先とのやり取りや交渉、接客、販売、上司や部下とのやり取りを含め、ビジネスコミュニケーションは日々の業務で行われています。
そして、そのコミュニケーションの良し悪しが、ビジネスにおいての結果に直接つながることも少なくありません。
例えば、聞き取り能力が高い営業が顧客の要望を十分に聞いていれば、マッチしたサービスの提供が可能となるでしょう。商品開発の場面でも、クライアントのニーズをしっかり理解できていれば、要望以上に価値ある商品を生み出すこともあるかもしれません。
このように、ビジネスコミュニケーションが円滑に、積極的に行われることは、企業にとって利益を生むことにもつながります。
職場、取引先との人間関係を良くする
社内での上司と部下の関係においてもコミュニケーションは重要です。
例えば、「報連相」と呼ばれる「報告・連絡・相談」を例にすると、これらがが十分にされていることで、上司と部下の人間関係は非常に良くなるものと考えられます。お互いに対して誠実に対応することで、信頼感が育つでしょう。
取引先についても同様です。
社内だけではなく、取引先とも円滑なコミュニケーションを行うことで、お互いの人柄にも触れることになります。相手がどのような人物かがわかれば、その人に応じた良い関係を継続していくこともできるでしょう。
定期的・継続的にコミュニケーションを取る営業とは関係が長く続くでしょうし、信頼関係も構築されます。
強い信頼関係を築く
例えば、新築の家を購入することになったとします。人生において、家は非常に大きな買い物です。
失敗が許されないからこそ、信頼関係のない相手とは取引はできません。
しかし、購入を相談に行って以来、しつこさがない程度に連絡を絶たずにいてくれる営業が相手だったらどうでしょうか?
希望の家を親身になって探し、新しい情報が入ればその都度連絡し、急かさずに見守ってくれる営業です。「この人にだったらお願いしても良いかもしれない」と思うのではないでしょうか?
大きな病気にかかってしまい、難しい手術が必要な場合も同様で、お医者さんならだれでも良いわけではなく、十分実績のある信頼のおける人に手術をして欲しいと誰もが思うはずです。また、術前の説明やその後のケアについて、良いことも悪いことも時間をかけて説明してくれるお医者さんの方が、信頼をおくことができます。
このように、コミュニケーションは相手との間に強い信頼関係を築く手段となり得るのです。
ビジネスコミュニケーションの種類
コミュニケーションの手段はさまざまで、言語を使うものを「言語コミュニケーション」、ことばを使わないものを「非言語コミュニケーション」と呼びます。私たちはそれらを無意識に使い分け、コミュニケーションを取っています。
言語コミュニケーション
一つ目は、「ことば」を使ったビジネスコミュニケーションです。相手に訴えかけ正しく物事を伝えるため、できるだけ「わかりやすいことば」、そして「親しみやすいことば」を使って行います。
言語コミュニケーションを用いる場合、特にビジネスにおいては、主張を曖昧にせず正確に伝えることが大切です。中途半端な表現にとどめると、後になって話に食い違いが生まれ、それがもとになってトラブルに発展する場合があります。
また、言語コミュニケーションでは、自分だけが一方的に話すだけでは、相手が話を理解しているかどうかを確かめることができません。そこで、話の中に「例え話」を入れて共感を得たり、ちょっとした問いかけを挟み込むようにしたりして、相手のことばも引き出し、相手の反応を受け止めましょう。
また、相手の立場や場の空気に合わせたことば遣いにも、注意と工夫が必要です。
非言語コミュニケーション
非言語コミュニケーションとは、ことばを使う以外のコミュニケーションで、「ノンバーバル・コミュニケーション」と呼ぶこともあります。
ことばを使わないコミュニケーションと言うと、ジェスチャーなどを想像します。しかし、そこまで大げさなものではなく、「あいづち」や「うなずき」など、私たちが無意識に使っている行動も「非言語コミュニケーション」のうちの一つです。
自分が相手の話をしっかり聞き、理解しようとしていることをしぐさで表現することで、相手との信頼関係を築きます。ビジネスコミュニケーションスキルが高いとされる人は、この非言語コミュニケーションが得意であることが多いとされています。
どのような非言語的コミュニケーションを用いるかは、相手にもよっても異なります。自分より立場が大きく上の相手とのやり取りの中で、やたらとうなずいたりオーバーに表現したりするのは、不快感を与え却って失礼になるからです。状況を判断して、適切なコミュニケーションを行いましょう。
ビジネスコミュニケーションが高い人とは
仕事ができる人は、総じてコミュニケーション能力が高いことが多いものです。社内に味方も多く、誰かが傍にいることが日常的な雰囲気という人もいます。
円滑な仕事を可能にするビジネスコミュニケーションスキルが高い人とは、具体的にはどのような人なのでしょうか?
気さくな雰囲気
普段からニコニコし、誰もが近づきやすい雰囲気を醸し出しています。立場によらず分け隔てなくコミュニケーションを取るため、上司にも部下にも好かれていることも多いものです。
また、相手の目をしっかり見て話し、どのような意見も最後まで聞きます。反論する場合も、真っ向から否定するのではなく、相手の意見を認めたうえで建設的な話し合いを導きくことができる人物です。
抱え込まない
悩み事や仕事を一人で抱え込もうとせず、困ったときにはすぐに周りに相談し、回り道せず解決へと向かうことができる人です。
困ったことがあっても、プライドから仲間を頼ることができず、自分一人で何とかしようと考えてしまう人は少なくありません。しかし、それでは結局は何もできないまま、時間ばかりが経過し大事に至る場合もあります。
コミュニケーション能力が高い人は、自分を中心に置かず、やるべきことに焦点を当てて最善の策を取れる点で優れているといえるでしょう。
また、コミュニケーションスキルが高い人は、自分の欠点や失敗を素直に認めることが多く、必要であればためらわずに頭を下げることも抵抗がありません。そうした姿を見て、周りの人も助けてあげたいと感じるようになるのでしょう。
くよくよしない
失敗すると、人間だれしもくよくよと考え、次の仕事に取り掛かるのにも勇気がいるものです。周囲の人も、相手が落ち込んでいるとわかっていると、なかなか話しかけにくくなってしまい、相手に与える印象も暗くなってしまいます。
しかし、コミュニケーションスキルが高い人は、多少の失敗を気にせず、常にポジティブに、前向きな発言をするよう心がけています。失敗を繰り返さないことや、次に生かすことこそ、大切だと知っているからです。
堂々としている
コミュニケーションスキルが高い人は、たとえ立場が上の人に対してであっても、必要ならば怯まずに自分の意見を述べることができます。場合によっては、反論も辞さないでしょう。
上司に反論するのは勇気のいることですが、そうした振る舞いは相手にも真剣な印象を与えるため、結果的に良い評判を得ることもあります。
EQの高い人はビジネスコミュニケーション能力も高い
「こころの知能指数」と言われる「EQ」が高いと、ビジネスコミュニケーションスキルも高いと言われています。EQが高い人の特徴とあわせて、その理由について挙げてみましょう。
人間関係を築ける
EQの高い人は人の感情の動きに敏感で、相手の話の中から何を望んでいるかを汲み取ることができます。また、相手のために時間を使うことを惜しまないため、満足度の高いコミュニケーションを取ることで相手との距離はとても近くなり、「心を開いても良い人」と認識されます。
それはおのずと信頼関係へとつながり、双方がお互いを思いやった行動を取るように発展するでしょう。
人の話にしっかり耳を傾けられる
EQの高い人は、どんな相手の話にも共感し耳を傾け、意見を聞くことができる人です。「聞く」姿勢を大切にできる人は、相手がことばの外にどのような感情を持っているかまで汲み取り、むやみに衝突しないように適切に行動やことばで反応を返すことができます。
相手がどのような感情で話しているか、どのようなことばをかけるべきで、かけるべきではないことばとはどういったものかについて関心を持っている点でも優れているといえるでしょう。
失敗を受け止められる
自分の失敗を冷静に受け止め、動揺や焦りに陥らず、感情的にならないところもEQが高い人の大きな特徴です。自己肯定感が強いため、くよくよと後悔し悩む時間を必要とせずに、次へと生かすよう切り替えられることが大きな長所となっています。
また、言い訳をせず、素直に過ちを認めるところも特徴です。言い訳する時間には生産性がなく、無駄なやり取りだと判断しているため、素直に謝って次へと向かうことの方が重要なのです。
感情をコントロールできる
EQが高い人は、自分の感情のコントロールが上手です。怒りや焦りに振り回されることなく、平常心を保つことができます。
それは、自分が何をきっかけにしてどのような感情を持つかを分析して知っているためです。知っていることで、未然に感情の暴発を防ぎ、安定して仕事を積み重ねていくことができます。
逆に、感情に流され自分のことだけを考えていると、周りが見えなくなり、仕事も人づきあいもうまくいかなくなります。最終的な目的を見据え、どのように達成するかの絵を描き上げながら、一人ではなく全体として成功へと導くことができるのが、EQが高い人の特性です。
モチベーションを作り出せる
感情のコントロールができる人は、仕事のパフォーマンスも高く維持できます。乱れた感情に振り回されてしまうと、仕事や進捗にもムラが出がちですが、安定したモチベーションを保ち続ける人は仕事も安定してこなし続けることができるでしょう。
「今はチームのメンバーとワイワイ楽しくコミュニケーションを取りながら仕事をする時間で、ここまでは進める」「そのあと一人で静かに取り組みたい仕事はこちら」などといったように、その場その場で必要な環境を選び取り目標を置くことで、自分のやる気を維持できます。
自分の欲求を優先せず、成功に向けた行動を選択する
どんなに良い考えがひらめいたとしても、必ずしもそれが正しいとは限りません。自分を過信せず、自分の想いやしたいことだけに流されないのがEQの高い人の特徴です。
自己欲求で動かず、物事を良い結果に導くのはいったい何なのかを見極め、今すべきことを探し優先します。そのために、さまざまなデータからベストなものを探し出したり、必要な知識を吸収したりすることを苦と思わないのです。
完璧を目指さない
いくら完璧を目指しても、世の中には完璧にできることなどありません。EQの高い人はそれを理解し、立ち止まらずに前へと進む力を持っています。
もし失敗したとしても、そこから何かを学び取れれば良いのですし、悪い結果とならないように調整することもできるでしょう。
まとめ
ビジネスコミュニケーションスキルを向上させることは、EQを向上させることと同意義ともいえます。EQは後天的なスキルであり、トレーニングすることで伸ばすことが可能です。
社内でのコミュニケーション能力アップの一環として、ぜひEQのトレーニングを取り入れてみてはいかがでしょうか?