EQとは、こころの知能指数と呼ばれる概念です。自分の感情を正しく把握し、状況に応じて作り替えたり、相手の立場に立って共感したりします。
EQの高い人は、周りと良い人間関係を築き、充実した人生を送れるといわれています。今回は、EQの概要やEQが高い人の特徴、EQを構成する4つの能力、ビジネスでの意義やトレーニング方法について解説します。
目次
EQとは
EQとは、感情をコントロールしたり、相手の気持ちに寄り添ったりする能力のことです。自分や相手の感情の機微に敏感なので、対人関係において効果を発揮し、人間関係を良好にします。
企業でも、EQの高い人材を擁することで組織のコミュニケーションスキルが上がり、生産性にも寄与すると注目されるようになりました。
EQの意味
EQは、「Emotional Intelligence Quotient」を略したことばで、日本では「こころの知能指数」と訳されています。アメリカの心理学者であるピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏により、1990年に研究された理論で、自分の感情を状況に合わせてコントロールし、相手の立場になって感情に寄り添う能力です。
EQの高い人はコミュニケーション能力も高く、リーダーシップも持っているため、組織においては中心的な役割を果たすことも多いようです。
IQとの違い
EQと似た概念で、「IQ(知能指数)」があります。IQは、頭の良さや思考の速さなどを表す概念です。
一方で、EQは、感情のコントロール力を表します。以前はIQの高い人材こそ、学歴も高く、ビジネスでも成功するといわれていました。しかし、今では人間の行動には感情が大きく関わっており、感情をコントロールすることこそが仕事での成功を掴む鍵と考えられるようになりました。EQの高い人材が、IQの高い人材と一緒に仕事をすることで、相乗効果が表れます。
また、IQは先天的な要素が影響する能力といわれていますが、EQは何歳からでも向上可能な、後天的な能力であることも、2つの大きな差といえるでしょう。
EQがビジネスで重要視される理由
EQは、ビジネスでも重要なものと考えられるようになってきました。高いコミュニケーション能力を持っている人材は、社内外において、多くの人から信頼されるからです。
以前はIQの高い人材がビジネスでも成功しやすいといわれていました。しかし、ピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏の調査では、他者の気持ちにも働きかけられるような対人関係に優れた人材こそ、ビジネスでの成功を掴みやすいことがわかってきています。
外部との商談でも、相手の気持ちを読み取り、寄り添った対応ができる人材が、組織の生産性を向上させられるのです。
感情的な行動は信頼を損ねるから
誰でも、思い通りにならないことや、不条理な出来事、相手のぶしつけな言葉に腹を立てた経験があるでしょう。しかし、仕事は一人で行うものではないため、自分が思い描いたとおりに物事が進むとは限りません。
そんなときに、自分の感情のままに、周りの人に不機嫌とわかる感情をぶつけてしまったらどうなるでしょうか?関係が悪化することは容易に想像できます。だからこそ、感情をコントロールできるEQの高い人材が重要視されるのです。
自分や他者の感情を理解できるリーダーが必要だから
組織で仕事をしていると、一緒に働くメンバーの精神的なコンディションも進捗に影響します。
たとえば、ミスをして叱責され落ち込んでいるメンバーは、何かきっかけがないと立ち直れず、なかなか次の仕事に取り組めないかもしません。
そんなときに悩みを聞いたり、共感して寄り添ったりしてあげられるEQの高い人の存在が重要になります。その他、同じチーム内でうまくいかない仲間同士も、EQの高い人が中継することで、お互いを深く知り関係の改善が期待できるかもしれません。
EQが高い人の特徴
EQの高い人は、相手の気持ちを大切にするので、周りの人にも信頼され、好かれます。多くの好ましい特徴について解説しましょう。
共感力が高い
EQの高い人は、共感力に優れています。共感力とは、自分を相手の立場に置き換え、同じ気持ちを感じることです。「悲しかったね」「辛かったね」「嫌だったね」と、相手の気持ちを肯定することで、相手も気持ちが楽になります。
しかし、共感はしても、自分の感情と相手の感情は切り離しているのが特徴で、引きずられることはありません。意見を求められれば、毅然と自分の意見を伝えることができるのが、EQの高い人の特徴でもあるのです。
柔軟性がある
世の中には変わらないものなどないと、EQの高い人は知っています。そのため、これまでのやり方に固執せず、新しい考えを柔軟に受け入れるのです。
自分と価値観が異なる意見でも、偏見を持つことなく寛容な気持ちで受け入れます。状況の変化にもうまく対応できるのも、EQの高い人の特徴です。
諦めない
EQの高い人は、簡単に物事を諦めません。達成に向けて粘り強くチャレンジを続けます。
たとえその過程が、モチベーションの上がらない作業であったとしても、「ここを経験することでステップアップできるはず」と自分を奮い立たせ、挑戦し続けます。努力を重ね、成果を出すのもEQの高い人なのです。
失敗を恐れない
失敗を過剰に恐れないのも、EQの高い人の特徴です。
EQの高い人は、自己肯定感が高く、自分の強みや弱みも受け入れたうえで自分を大切に思っています。そのため、たとえ失敗したとしても、「自分にとってあまり得意ではない分野だから仕方ない」などと素早く切り替えます。
素直
EQの高い人は、自分の失敗をごまかしたり、言い訳したりせずに謝ります。潔く自分の非を認めて、行動を改める努力をするのです。また、他者からの指摘も聞き入れ、糧にしようとします。
ストレスに強い
EQの高い人はストレス耐性が高いといわれています。自分の感情を作り変えたり、コントロールしたりできるので、少しくらいのことでイライラしません。
理不尽と感じることが起きた場合にも、その時点の感情を的確に把握し、コントロールするからです。
ポジティブ思考である
EQの高い人は常に前向きです。自分の弱みとも向き合っているので、過去の失敗をいつまでも引きずったり、くよくよしたりすることもありません。失敗や挫折をしてもそのままにせず、教訓や学びを得て自分自身の成長へとつなげます。
EQを構成する4つの能力
EQは、4つの能力が複雑に絡み合い発揮されます。この4つの能力が働くことで、周りとの人間関係を良好にし、多くのメリットをもたらすのです。
感情の識別
感情の識別とは、自分や相手に沸き起こっている感情がどのようなものであるかを察することであり、EQの基本ともいうべき能力です。
感情の識別ができないと、自分の心の中がわからないのはもちろんのこと、相手を思いやることもできないのです。
感情の利用
感情の利用とは、状況に合わせて自分の感情を作ることです。
たとえば、あまり好きではない単純作業を続けて行わねばならない状況に置かれているとしましょう。そのときに、「面倒だ」と思っていると、モチベーションは下がり、仕事の効率も落ちてしまいます。
そこで、「この仕事をやり遂げることで、将来的に役に立つだろう」と気持ちを作り上げ、モチベーションを高く保つのが感情の利用です。
感情の理解
感情の理解とは、なぜそのような気持ちになったのかを理解することです。自分が相手に対し悲しい気持ちになっているのなら、何が原因で悲しくなったのか、また相手が自分に対して怒りの感情をぶつけてくるなら、それは何が原因なのかを考え、特定して理解します。原因を知ることで、対処も可能となるでしょう。
感情の調整
感情の調整とは、自分の感情を知り、理解し、利用して行動を起こすことです。行動を起こしてから、また状況が変わる場合には、併せて感情もコントロールし軌道修正します。
EQはリーダーに必須のスキル
EQは、組織のリーダーが持っていなくてはならない能力といわれています。自分と相手の感情が理解できることは、人間関係を構築するにおいて、とても重要な要素なのです。
自分と他者の気持ちを理解するリーダーが必要だから
企業では、多くの人が一つの組織となって、業務にあたります。誰もが調子の良いときばかりではありませんし、仕事やプライベートが原因で落ち込んでいる時は仕事が手につかないこともあるでしょう。
そんなときには、気持ちに寄り添って悩みを聞いたり、負担になっている仕事を振り分けたりするなどの配慮が必要です。相手の気持ちがわからないリーダーでは、ほころびが出てくると考えられます。
ハラスメントの防止になるから
近年、ニュースやワイドショーを見ていると、「〇〇ハラスメント」ということばをよく耳にします。「ハラスメント」とは、人を困らせたり、嫌がらせをしたりすることです。
気を付けていれば発生しないように感じますが、実は無意識であってもハラスメントは起きてしまいます。しかし、相手の気持ちを思いやれる、EQの高い人であれば、人に対して不快な、望まれない声掛けをすることはないでしょう。広くは、メンタルヘルスの面でも高い効果を発揮します。
組織に自律性が生まれるから
リーダーが、高いEQの能力を発揮すると、組織内のコミュニケーションは円滑化します。お互いに話しやすい環境が生まれ、悩みを相談しやすく、共有しやすい雰囲気にもつながり、組織の自立性は高まって行きます。
EQを高めるためのトレーニング
EQはどの年齢からでも高められる能力といわれています。トレーニングは、今までよりも少し自分や相手の気持ちを大切にすることから始まります。
感情日記をつける
毎日、自分の「感情日記」をつけてみましょう。感情日記と言っても、大げさなものではありません。その日に起きたことと、その時の自分の気持ちを対にして、毎日ではなくてもできる日に書き込んでいくのです。
出来事と感情を紐づけることで、どんなことが起きるとこんな感情になりやすい、という自分の「感情のくせ」が見えてきます。感情のくせがわかれば、状況から怒りや悲しみなどの負の感情を爆発させそうであることが、あらかじめ察知できます。
そのため、感情のコントロールが可能なのです。これまで見えなかった自分が見えることもあるので、感情日記はおすすめです。
人の話に真摯に耳を傾ける
相手の立場になって、相手の話を真摯に聞き共感することを「傾聴」といいます。傾聴では、相手の話を好き嫌いや善悪で評価せず、否定もしません。
相手は今、どうしてそのような気持ちになっているのかの背景を理解し、共感するのです。傾聴する時は、言葉だけではなく、仕草や表情からも相手の気持ちを読み取る努力をします。
ビジネスでは、傾聴することで信頼関係を構築し、潜在的なニーズを把握することが可能となります。
相手の良いところを見つける
信頼関係は、相手に対してのリスペクトがあってこそ築かれます。良いところを一つでも知っておけば、相手がネガティブな行動をしたときにも「でもあの人にはこういういいところもある」と考えられるでしょう。
まとめ
EQとはどのようなものなのか、そしてEQを高める方法について解説しました。
「簡単とはいえど、個人ではなかなか取り組みにくい」そんな方には、当社グロースウェルの「EQGW」をおすすめします。
EQGWは、個人のEQを確認し高め、企業の抱える「人」についての問題を解決へとつなげるサービスです。最初に個人に向けてEQ調査を行い、その結果から個人に対してどのような部分を変えるとよいかを最適化してフィードバックします。
結果のフィードバックでは、「行動」を変えることで、より良い結果が得られるように指導を行い、その後希望があれば研修も実施可能です。EQGWの導入により、行動特性の向上や、個人の最大限での能力の発揮、職場環境も改善され、より働きやすい職場になることが期待できます。
従業員にとっては自分のEQを知る機会に、そして管理職にとっては部下や組織のEQを知る良い機会となるでしょう。リーダー向け、新人社員向けなど、さまざまな研修も行っており、研修するお時間の確保できない企業様の場合は、テキストだけ購入いただくことも可能です。
導入された企業からは、離職者の減少や、採用時のミスマッチの減少、感情のフィードバックによる行動変容などのご報告をいただいています。また、EQGW受検後、相手に自分の意見を伝えるのが上手くなった、感情に任せて言い過ぎることがなくなったなど、従業員の方からもご好評頂いております。この機会に、ぜひEQGWの導入をご検討ください。