EQとはどんな能力のことなのか?EQの能力を構成する4つの要素

eq能力 EQコラム

「思いやりのある人」をEQの特徴とした場合、「思いやれる能力のある人」と「思いやれる人格としての特性」などさまざまな解釈が可能です。このように、EQは多面的な観点からが学術研究がなされていますが、EQにおける感覚能力は後天的に開発可能な力と言われます。

そこで本記事では、能力としてのEQを主眼とし、EQが高い人の特徴や能力を高めるための認知療法的アプローチについて解説します。

能力としてのEQとは

感情能力としてEQを位置付けた場合、EQにはどのような特徴があるのでしょうか?ここではまず、能力としてのEQについて詳しく解説します。

能力としてのEQの特徴

EQ分野の先駆者であるメイヤー氏らによると、能力としてのEQについて、「さまざまな感情の意味やその関係性を認識し、それらの感情にもとづいて推測したり問題解決したりする能力」とみなしてます。つまり、感情の知覚・理解・調整などの能力を知能の一部として多面的に捉えているのです。

EQとIQとの違い

EQとIQが相互補完的な関係にあるため、感じる知性としてのEQと、考える知性としてのIQはどちらも必要不可欠です。例えば、EQとIQの相違点は次のような点があげられます。

  • EQは感情を、IQは知能を測定する点で測定対象が異なる
  • EQは後天的に開発できる能力だが、IQは遺伝によって先天的に能力がある程度決まっている
  • EQは人生の満足度や成功度と密接な関係があるが、人生における成功度はIQでは測定できない

1990年代後半に心理学者のダニエル・ゴールマン氏が発表した調査結果を皮切りに、ビジネスにおけるEQの重要性が注目を集めるようになりました。IQと違いEQは大人になっても開発可能な能力である点や、EQの向上によって人生の満足度や成功度も高められる点が大きな注目を集めたのです。

EQの測定方法

EQの測定方法は、主に次の2つです。

客観テスト

客観的なテストを用いてEQの能力を測定する方法です。IQ検査のような形で客観的に能力を測定できますが、標準化が難しく、実施にコストがかかるデメリットがあります。代表的な能力テストはメイヤー氏やサロベイ氏らが開発したMSCEITテストです。

質問紙法

質問紙法とは事前に決められた質問項目に回答する形でEQを評価する測定方法です。集団で簡易的に測定できますが、自己評価なので回答が主観的である点がデメリットと言えます。

EQの能力を構成する4つの要素

EQを感情能力とした場合、構成される能力は4つあります。それぞれの特徴は次の通りです。

能力①:感情を知覚して表出する力

1つ目の能力は「感情を知覚・表出する力」です。この力がないと、第一に感情を認識できません。ゆえに、EQの最もベースとなる能力とされています。

感情の知覚・表出とは、例えば愛想笑いと本心の笑顔の区別や、音楽や絵画など芸術作品を通して人物の心情を想像する力などです。感情を正確に知覚し、感じた内容をうまく表出できる力はEQの力を活用するうえで最も初歩的な能力と言えます。

能力②:思考の助けとなる感情を同化する力

2つ目の能力は「感情を同化する力」です。感情の同化とは、喜怒哀楽など人間の基本的な感情をイメージしたり、音や色などから想起できる感覚を思い浮かべたり、意識して感情を自分の心の中に取り入れたりすることです。

他者や自分の感情を理解する助けとなる感情を取捨選択して利用し、本当に必要な感情を意識的に取り込めます。

能力③:感情を適切に理解する力

3つ目の能力は「感情を理解する力」です。感情の理解は、今まで知覚・表出・同化した感情を踏まえて、的確にその心情を推察する力といえます。

例えば、「感情的に怒った後に後悔が生まれる」「喜びの後に不安が生じる」など、人それぞれの感情の移り変わりやアルゴリズムといった法則を把握することです。感情を適切に理解できると、自分の弱みや強みを認識して、より良い方向に活用できます。

能力④:感情を思慮深く管理して調整する力

4つ目の能力は「感情を管理・調整する力」です。感情の管理や調節とは、例えば突発的なトラブルに対して狼狽えずに冷静に判断する、怒りを感じた時に感情に任せて怒鳴ったり暴力的になったりしない態度を指します。

感情の管理や調節は、EQの能力において最も高い水準にある力です。特定のネガティブ感情を抑制したりコントロールできたりすると、人間関係を自分にとってより良い方向に導けます。

人格特性としてのEQとは

人格特性としてのEQ

一方、人格特性としてEQを位置付けた場合、EQにはどのような特徴があるのでしょうか?人格特性としてのEQについて詳しく解説します。

人格特性としてのEQの特徴

大人になっても可変的に開発できる能力とされているEQ。しかし、特性(trait)としての感情知性は、幼少期の3歳〜4歳まででほぼ固定されるとされています。

ゆえに、多様性の尊重や人間関係に対する捉え方など個々の本質的な性格は幼少期に決まっており、人生における大きな転機がない限り大幅な変化は期待できません。

人格特性を含む混在型アプローチの事例

特性としての感情知性は、感情知性に伴う人格特性を含む混在型アプローチとして、心理学者のBar-On氏やダニエル・ゴールマン氏らによって研究されています。

例えば、Bar-On氏は、成功する人とそうでない人がいる理由を人格特性との関連から吟味しました。その結果、成功するかどうかの傾向は次の5つの人格特性に影響するとわかりました。

  • 内的スキル
  • 対人関係スキル
  • 適応度
  • ストレス抑制
  • 全般的気分

また、ダニエル・ゴールマン氏は、感情知性を次の5つの要素に分類して人格特性について言及しています。

  • 自分の感情を知る
  • 自分の感情を制御する
  • 自分のモチベーションを上げる
  • 他者の感情を認識する
  • 人間関係をうまく処理する

EQの人格特性は感覚能力よりも幼少期の人との関わり方が大きく左右されます。ゆえに、EQの人格特性を高めたい場合は、早期の対応が重要です。

EQの能力が高い人とは

EQの能力が高い人とは

EQの基本的な考え方が理解できたところで、ここからは具体的な人物像とあわせながらEQ の能力について解説していきます。ここでは、EQの能力が高い人の持つ代表的な3つの特徴についてです。

他者の話にしっかりと耳を傾ける人

他人の話をしっかり聴けると、相手が感じている事象に寄り添った伝え返しが可能です。「共感してくれている」と相手が感じやすくなるので、周囲からの信頼性が高まったり、好印象を与えられたりします。結果、他者から適度に協力を得ながら、円滑な人間関係の構築が可能です。

批判を冷静に分析できる人

自分にとってのネガティブな意見も柔軟に受け入れられる姿勢は、自分を客観的に見つめ直し、より良い方向に個人や組織を導く原動力となります。批判を自分の中に取り入れて自己批判をしすぎたり、相手が悪いと自分を正当化したりするのではなく、批判を冷静に分析できる人はEQの高い人です。

他人の間違いに寛容な人

他人の仕事にミスがあっても「自分にもあり得る」と、寛容に受け止められるため、心理的安全性の高い組織づくりができます。話し合いの場でも自由に意見を交換できるので、イノベーションが生じやすい環境を醸成することが可能です。

EQの能力が低い人とは

EQの能力が低い人

EQの能力が高い人だけでなく、EQの能力が低い人にも特徴があります。ここでは、EQの低い人が持つ代表的な能力について3つお伝えしていきましょう。

異なる価値観を受け入れられない人

自分の価値判断が1番正しいと感じているため、異なる価値観を受け入れられません。EQの低い人の周囲に集まるメンバーも多様性が乏しい傾向があるため、新しいチャレンジやアイディアが実行されにくい特徴があります。

感情的になってすぐ怒る人

感情のコントロールがうまくできないため、アンガーマネジメントができないもしくは苦手です。自分の思い通りにならないと、不機嫌になるので、周囲も自然にその人の顔色を窺いながら接することになります。

自分に甘く他人に厳しい人

自分の間違いには寛容ですが、他人の間違いは許せない傾向にあります。自分の欠点や間違いを棚に上げて、他人の至らなさばかりを取り立てて批判する点が特徴的です。

EQの能力を高める認知療法的アプローチ

EQの能力を高める認知療法的アプローチ

認知療法とは、私たちのものの考え方や受け取り方などにはたらきかけて、気持ちを楽にしたり行動をコントロールしたりする治療法です。EQの能力を高めるうえでも有用だといわれています。ここでは、EQの能力を高められる認知療法的アプローチについて解説します。

EQにおける認知療法的アプローチとは

EQにおける認知療法的アプローチとは具体的に次のような行動を目的とします。

  • 毎日の出来事をポジティブに捉えられるようにする
  • 人間関係の中で、他者の長所を見つけて伝える

認知には、出来事に対して瞬間的・無意識的に浮かぶ考えやイメージ(自動思考)があります。その瞬間的・無意識的なイメージは、いろいろな感情の揺れ動きや行動が生じる原因となる思考です。

ストレス耐性をつけるには自分の瞬間的・無意識的な考えやイメージのクセに気づいて、より良い方向へのはたらきかけが重要です。

EQにおける認知療法的アプローチを実行するには、第一にEQの感情能力を中心に自分の感情について詳しく分析する必要があります。ゆえに、EQに根ざした自己分析を進めるためには、EQの指数を測定できるテストを受けてみたり、書籍やインターネットの情報などでEQについての知識を深めたりといった方法があります。

認知療法的アプローチの進め方

認知療法的アプローチの手順は次の6ステップです。

  1. ストレスに気付き、問題を整理する
  2. 瞬間的・無意識的な思考が、自分の感情や行動にどのような影響があるのかを調べる
  3. 自分の今までの生活を振り返り、心が軽くなる活動を増やす
  4. 瞬間的・無意識的な思考と現実とのズレに注目し、自由な視点で現実に沿った柔らかいものの見方に変える練習をする
  5. その際に自分にとって何が大切かを考える
  6. バランスよく考えられるようになったら、問題解決方法や人間関係を改善できる方法を練習し、今できることに取り組む

同じ体験をしてもその体験をどのように捉えるかは人それぞれです。認知療法によって、物事に対するベクトルを変える訓練をすると、体の反応や行動のチェンジが可能です。現実の受け取り方やものの見方を変えられると、怒りや恐怖心などのコントロールにもつながり、EQの向上にも寄与します。

まとめ

笑顔でプレゼンテーションする女性

能力としてのEQを主眼として、EQの特徴や能力を高めるための認知療法的アプローチについて解説しました。要点は次の通りです。

  • EQには感情能力や人格特性など、さまざまな側面から研究が進んでいる
  • EQを感情能力とみなした場合、「感情を知覚・表出する力」「感情を同化する力」「感情を理解する力」「感情を管理・調整する力」の4つの要素に分類できる
  • EQの感情能力は行動や認知の観点からの向上が可能

本記事をEQの能力の測定や向上などにぜひお役立てください。