EQとは、自分の感情をその場に応じ適切にコントロールしたり、相手の感情を読み取ったりできる、人間関係や仕事ではとても重要な能力です。社内にEQの高い人材がいると、コミュニケーションの良好化や生産性の向上など、多くのメリットを享受できます。
今回は、EQの意味や必要性、メリットについて詳しく解説しています。EQの概念を社内で広めたいと考えている方に、ぜひ読んでいただきたい記事です。
目次
EQの意味とは
EQ(Emotional Intelligence Quotient)ということばを耳にしたことはあるでしょうか?現代社会において、ビジネスで成功を収める人は、コミュニケーションを円滑に行えるEQの高い人材が多いといわれています。
ここでは、EQの意味やEQが高いことで得られるメリット、EQを高めるトレーニングなどについて解説します。
EQとは心の知能指数
EQとは、感情をコントロールしたり、人の気持ちを敏感に感じ取ったりする能力を数値化したものです。
アメリカの心理学者であるピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏が研究した理論で、日本では「心の知能指数」と呼ばれています。EQが高い人は、感情をそのまま表現するのではなく、その場に応じた形にコントロールできるため、人間関係での衝突を避け、良好な状態を保てるのです。
EQとIQの違い
ところで、EQということばよりも「IQ(Intelligence Quotient)」の方が、どちらかといえばなじみが深いのではないでしょうか?IQとは「知能指数」を指すことばで、いわゆる「頭の良さ」を示す値です。
日本では小学校就学後に検査で測るケースが多く、数値が高ければ高いほど、記憶力や学習能力、集中直が高いことを示しています。学校での成績も良好であることが多く、先天的な要素が大きく影響する能力といわれています。
訓練次第で伸ばすことが可能
IQが先天的な能力が影響することに対し、EQには生まれ育った環境が大きく影響する能力です。幼少期に親から無償の愛情を受けて成長し、高い自己肯定感を持って大人になった人はEQが高い傾向にあります。
しかし、だからといって一生涯EQが低いままというわけではありません。EQは、生まれつきの能力が大きく影響するとされるIQとは異なり、適切なトレーニングを行うことによって、伸ばせる能力といわれています。
EQを構成する4つの能力
EQには、複雑な要素が交じり合っており、人との関わりを円滑にする4つの能力が発揮されることで、自分の感情を上手にコントロールできます。ここでは、EQを構成している4つの要素について解説します。
感情の識別
感情の理解とは、今自分がどのような感情を持っているのかを識別する能力です。
たとえば、会議の場で上司がAさんに対して行った発言で、Aさんの中に瞬間的に爆発しそうな強い負の感情が生まれたとしましょう。その強い感情は「怒り」の感情であると自ら気づくことが「感情の識別」にあたります。
感情の理解
感情の理解とは、なぜ自分の中にその感情が沸き起こったのかを理解する能力です。
Aさんは、仕事のミスについて上司の指摘を受けましたが、それが不条理な内容であったために怒りの感情が沸き起こりました。上司の指摘には一部正しくない点があり、指示を受けて行った仕事なのに、まるで自分がすべて悪いような言い方をされたことがAさんには納得がいかないのです。
このように、自分の中に感情が沸き起こった理由を理解するのが「感情の理解」です。
感情の利用
感情の利用とは、沸き起こった感情を利用して、適切に感情を作り上げることです。
会議中に上司への怒りをそのままぶつけても、雰囲気も悪くなり、Aさんの立場も良くはならないでしょう。それよりも、今は結果を素直に受け止め、今後の仕事の流れについて上司と再度見直す方が有益と考えられます。Aさんは感情を爆発させることなく、自分の成長のためのプロセスとして、前向きな気持ちを作り上げることに成功しました。
これが「感情の利用」です。
感情の調整
感情の調整とは、ここまでにご紹介した3つの能力を発揮し、自分の感情を良い方向へ活かすことです。
一度は怒りを爆発させてしまいそうになったAさんでしたが、理不尽とは思いつつも踏みとどまり、今回の経験をこれからの仕事に活かして行けるよう考え直すことが出来ました。感情に流されず、目的を達成するためにはどうすればいいのかを決定します。
このように、自分の「感情の調整」ができるEQの高い人材は、ビジネスにおいても非常に有益な存在なのです。
EQが高い人材の特徴
EQの高い人は、基本的に思いやりを持って行動できることから、周りの人に好印象を持たれる傾向にあります。具体的には、次のような共通してみられる好ましい特徴があります。
共感能力が高い
EQの高い人は、他者への共感力が高いことが特徴です。その人が持つ感情を察し、寄り添います。
相手の気持ちをことばだけから受け取るのではなく、態度や様子、仕草からも察知し、理解したうえで行動します。
相手の言い分に対して、むやみに自分の正論をぶつけて傷つけることもありません。相手にとっては、そうした対応が「思いやり」として伝わるので、EQの高い人は周りから慕われるのです。
しかしながら、相手の感情に引きずられたり流されたりしないことも、相手との境界線を作れるEQの高い人の特徴です。
自分から行動する
EQの高い人は、指示待ち人間ではありません。自己肯定感も高いため、今何をすべきかを考え自ら行動します。
だからといって、社内のルールを守らなかったり、都合よく自分ルールを作ったりしてしまうのではないこともポイントです。突然のチャンス到来にも対応できるよう、普段から準備を怠らないのです。
ポジティブで過去に縛られない
EQの高い人は、過去の経験や失敗に捕われません。過去に経験した良くないこと、悪い感情を引きずらないように、感情を整理します。
もちろん、失敗を人のせいにすることもありません。失敗と向き合い、何を改善すれば良いかを考え、未来をポジティブに見据え次のチャンスに活かします。
柔軟な考え方
EQの高い人は、一つの考えに固執せず、柔軟に考える力を持っています。他者の意見や価値観が自分と異なる時も、むやみに反発せずに「そういう意見もあるのだな」と参考にします。
また、突然のアクシデントに振り回されず状況に応じて柔軟に対応できることも、EQの高い人の特徴です。
完璧を目指さない
完璧な結果を求めようとすると、あれこれ考えすぎ、失敗した時のショックも大きいものです。世の中のほとんどのことは、完璧に行うことなどできないのです。そのため、100%の結果を出そうとすることより、まずは「やってみること」を目的としています。
その結果が失敗であっても構いません。トライアンドエラーで、失敗から学び、次回はもっとうまくできるようにと徐々に良くしていけばよいと考えています。
EQが高いことで得られるメリット
人間の行動や判断、発揮できる能力は、感情によって左右されます。組織で行う仕事は一人で完結することはなく、多くの人と協力して行わなければなりません。
その流れを円滑にするためにも、EQは高いほどにビジネスにも良い影響を与えると考えられます。EQが高いことで得られるメリットには、次のようなものがあります。
リーダーシップの向上
EQの高い人材は、人の気持ちに敏感で、寄り添った対応が得意です。
また、組織のメンバーの個性にも気が付きやすいので、バランスの取れた仕事の采配ができます。メンバーも、リーダーに自分の能力や得意分野についてよく知ってもらえているという満足感を与えるでしょう。
人間関係を良くする
EQの高い人は、他者の気持ちに敏感です。側にいる人が仕事の成功を喜んでいれば、心から讃えるでしょう。
逆に、他者が失敗に涙しているときは、そっと寄り添ってくれるはずです。
ハラスメントを防止する
ハラスメントとは、相手の気持ちを不快にさせる言動のことです。
EQの高い人は、そのような言動をすることがありません。メンバーの気持ちを読み取って、モチベーションアップへとつなげられるため、雰囲気の良い職場を作れます。
生産性を向上させる
EQの高い人は、コミュニケーション能力が高く、それは社内・外で良い効果をもたらします。社内での他部署とのやり取りはもちろん、社外では、取引先との商談などにおいて、優れたコミュニケーション能力を生かし成功に導くでしょう。
EQを高めるためのトレーニング
EQは、時間はかかってもトレーニングによって高められる能力です。特別なことをしなくても、普段の生活や仕事に取り入れるだけでも効果があります。
ポイントは、自分の心としっかりと向き合うことです。ここで、すぐに開始できるトレーニングを紹介します。
自らの感情のくせを知る
まず、自分の感情のくせについて知っておきましょう。
たとえば、自分はどんな時に動揺しやすいでしょうか。準備していなかったことを尋ねられたら動揺するかもしれません。また、ここを聞かれたくないと思っていたところに指摘が入れば、やはり気持ちは落ち着かなくなるかもしれません。
しかし、だからといって、それらの可能性をあらかじめすべて潰しておくことはできないでしょう。そこで、動揺した時に気持ちを立て直すための準備をしておくことが効果的です。腹式呼吸で大きく深呼吸することも、落ち着きを取り戻すのに効果的といえます。
また、感情的になりそうなときには、あえて自分を他人事のように客観的に見て、問題点を探ってみるのも良いかもしれません。そもそも、物事には失敗がつきものですから、理論的には失敗を恐れる気持ちを持たないことで、動揺を防げます。
とはいえ、怒りっぽい人、すぐ泣く人……いろいろな人がおり、感情は簡単にコントロールできません。しかし、このように自分に沸き上がった感情に対して、どのように対処することで平静を取り戻せるかを知っておくことが大切です。感情に振り回されないように、自分と向き合いましょう。
周りの人の良いところを探す
周りの人と円滑に仕事をしていくには、まずは相手を良く知ることです。
良いところが見えてくると相手のこと好きになり、相手に対して尊敬の念を持って付き合えます。ちょっとした諍いが起きたとしても、相手の良いところに目を向けることで、感情を落ち着かせることもできるでしょう。
EQの研修を受講する
EQは概念であるため、数値化するのが困難ですが、インターネット上では「EQ診断」などが紹介されています。さまざまな形式のテストがありますので、自分が取り組みやすいもので診断してみると、EQの傾向がつかめるでしょう。
また、EQが高い人材を育成するためには、社内で研修を実施する方法が効果的です。特に、高い自己管理力や自己認識力、指導力、共感力などが求められる管理職は、EQを向上させることで職場環境にも大きなメリットをもたらすことにもつながります。
まとめ
EQは、今やビジネスでは必須の能力です。社内にEQの高い人材がいることで得られるメリットは多く、人間関係の円滑化やその先にある業務効率化、生産性アップのためにも重要視すべき能力といえるでしょう。
自分や周りの人の感情を把握し、コントロールするEQは、どの段階からでもトレーニングで高められます。そこで、まず初めにEQ検査の一つである「EQGW」の受検をおすすめします。「EQGW」の受検によって、自分の感情のくせや活かすべき強みを導き出し、それらを面接によってフィードバックし、個人に対しては行動変容の指針をお伝えします。
「EQGW」受検後は、組織内でのポジションに応じたフィードバックを行っており、リーダーや役員には、マネジメントや組織構築のためのアドバイスを行います。その後は、必要に応じて、EQを高めるための研修も実施可能です。
EQGWの導入により、個々が自分の感情を認識し、状況に応じ適切にコントロールできている結果も報告されています。短期間での職場の多様化に成功している例も多く、結果としてバランスの良い組織になったという声も届いています。
感情とは、理性とは別に沸き起こるもので、コントロールすることなどできるのか、と考える方も多いでしょう。しかし、容易ではなくとも、相手との信頼関係を構築するためには、一定のコントロールができることが望ましいといえます。
人に自分の気持ちをうまく伝えられずに悩んでいる人や、怒りっぽい人が職場にいて困っている上司など、組織全員のEQを測定することで、改善を図ってみませんか?