【解説】心理的安全性とは?Googleにおける事例・職場に与える影響とおすすめの本 | EQバンク
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2020.11.27

コラム

【解説】心理的安全性とは?Googleにおける事例・職場に与える影響とおすすめの本

心理的安全性

Google社のマネジメントの考え方を皮切りに、心理的安全性が注目を集めています。しかし、いまだ日本には忖度や空気を読む文化が重視されており、この考え方が十分に浸透しているとは言えません。

今回は、心理的安全性ついて、ビジネスにおける有用性を中心に詳しく解説していきます。

心理的安全性とは?

Google

まずは、心理的安全性の定義や測定方法について紹介していきます。

「心理的安全性」の定義

心理的安全性の代表的な定義を2つ紹介します。

心理学における「心理的安全性」の定義

心理的安全性はビジネスに関する心理学用語であり、英語の「サイコロジカルセーフティ(psychological safety)」の和訳です。

心理的安全性の第一人者は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン氏。彼は心理的安全性を「対人関係でリスキーな行動をとっても大丈夫だという、組織の構成員間で共有された考え」と定義しています。

つまり、心理的安全性とは「他者の反応への恐怖心や恥辱感がなく、ありのままの自分をさらけだせるようなリラックスした雰囲気のある環境」のことです。

Google社における「心理的安全性」の定義

心理的安全性の定義は次の通りです。

心理的安全性:心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

【引用:Google re:Work

この定義は、エイミー・エドモンソン氏が提唱した心理的安全性についての考え方がベースになっています。端的に言うと、「相手からネガティブに受け取られる行動をしても、このチームなら大丈夫だと信じられること」をマネジメントに取り入れたのがGoogle社です。

心理学的安全性が測定できる7つの質問

チームの心理的安全性がどの程度あるのかは測定可能な要素です。次の7つの質問をチームメンバーに問いかけてみてください。

  1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
  2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
  6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

【引用:Goggle re:Work

1・3・5の程度が低く、2・4・6・7の程度が高いメンバーほど、心理的安全性の高いチームです。この7つの質問をベースにアンケートを作成し、チームメンバーに記入してもらうやり方や、上司から部下へ7つの質問を意識した問いかけをして、心理的安全性の状態を把握する測定方法があります。

心理的安全性が不足すると生じる4つの不安

心理的安全性が不足すると生じる4つの不安

ここまで、心理的安全性の基本的な概念についてお伝えしました。ここでは、反対に心理的安全性が不足すると生じる不安について解説します。

不安①:無知(ignorant)

不明点を質問すると他者から「こんなことも知らないなんて」と思われるか不安になり、本来すべき必要な質問ができなくなることを指します。状況が深刻になると、メンバーとのコミュニケーションが取れなくなったり、不安を相談できなくなったりして、ヒューマンエラーにつながる可能性もあります。

不安②:無能(incompetent)

自分の未熟な部分を他者に見せることは、相手から無能だと思われる不安につながります。自分の欠点を見せることに恐怖心を持つと、思い切ったチャレンジができなくなったり、ミスがあっても素直に自分から報告できなくなったりという事態になりかねません。共有されるべき問題が可視化されず、後に大きなトラブルや損失になる可能性もあります。

不安③:邪魔(intrusive)

心理的安全性が不足していると、組織の人員に嫌われるのではないか、邪魔だと思われるのではないかという不安が生じます。「議論が進まないのは自分のせい」と思われたくないので、自発的な発言を控えるようになったり、新しいアイディアを思い切って提案できなくなるからです。組織にとって有益な意見や情報が表面化されにくくなるため、イノベーションが起きにくくなる原因にもなります。

不安④:ネガティブ(negative)

心理的安全性が不足していると、組織の和を乱したくない気持ちが生じます。そして、本来なら指摘すべき意見に少しでも否定的なニュアンスが含まれていた場合、発言を躊躇する原因となってしまうのです。

心理的安全性が個人(従業員)に与えるメリット

心理的安全性が個人(従業員)に与えるメリット

心理的安全性にはさまざまなメリットがあります。ここでは、心理的安全性が個人(従業員)にもたらすメリットについてお伝えしましょう。

メリット①:エンプロイーエクスペリエンスの向上

心理的安全性の高い組織では、個人(従業員)のエンプロイーエクスペリメントの向上に寄与するメリットがあります。エンプロイーエクスペリエンスとは、「組織に属する個人(従業員)が仕事を通して得られる経験」です。

例えば、会社における次のような事柄を指します。

  • 入社してから体験する社内制度
  • 会社で守るべきルール
  • 特有の企業文化

つまり、エンプロイーエクスペリエンスとは、個人(従業員)が企業で入社してから退職するまで体験するさまざまな事柄のことです。

企業は、個人(従業員)が得た体験の発展の道筋を導く必要があります。そして、個人(従業員)がどのような体験によってモチベーションを高められるのか、社員一人ひとりにとっての最適な機会の提供が重要です。

メリット②:ポテンシャルの最大化

心理的安全性の高い組織では個人(従業員)のポテンシャルを最大化させることが可能です。ビジネスにおけるポテンシャルとは次のような状況を指します。

  • 実務経験に活かせる能力があるが、組織にまだ伝え切れていない
  • 実務経験はないが意欲が高い
  • 実務経験はないが人柄がその業務に向いている

心理的安全性が高いと、従業員それぞれが「自分の存在が尊重されている」という意識を持てるため、仕事に目的ややりがいを感じやすくなります。

メリット③:エンゲージメントの促進

心理的安全性が高いと、個人(従業員)のエンゲージメントを促進できるメリットがあります。個人(従業員)のエンゲージメントとはそれぞれがどれだけ仕事に集中し、自分ごととして仕事に向き合っているかという意味です。

エンゲージメントが促進されえると、フロー状態隣、神経伝達部室のドーパミンやエンドルフィンなどの分泌量が増え、幸福感が高まりストレスが軽減されると言われています。心理的安全性が高くなると、一人ひとりの組織へのエンゲージメントが高まり、個人が安心して愉しく働けるようになるのです。

心理的安全性が組織に与えるメリット

ミーティングしているチーム

続いては、組織のメリットについて解説していきます。

メリット①:組織的リスクの低減

心理的安全性が高まると、次のような組織的なリスクを低減させるメリットがあります。

  • 利益損失
  • 人間関係の悪化
  • 生産性の低下

良い情報だけでなく、悪い情報もすぐに共有しやすい心理的安全性が高い組織では、リスクを未然に防ぎやすくなります。失敗や問題が発覚した際に罰や叱責を恐れる必要がないため、重大な問題の放置や見過ごしのリスク回避が可能です。

メリット②:イノベーションの創出

心理的安全性が高まる組織では、イノベーションの創出が活発になります。風通しの良い職場なので、多種多様な意見を言っても無碍に扱われたり批判されたりする心配がないからです。

現状をより良いものにしようという前向きな姿勢で、新しい物事や困難に立ち向かえる建設的な挑戦ができるようになり、今までの価値観では思いつかなかったようなイノベーションを生み出しやすくなりす。

メリット③:離職率の低下

心理的安全性が高まると離職率が低下し、安定した組織運営を行えます。自分の存在価値を認めてもらえるやりがいのある環境で、ストレスなく働ける居心地の良さが離職率の低下に寄与するからです。

また、心理的安全性の高い組織はありのままの自分をさらけ出せ、人間関係の軋轢も少ない傾向にある点が職場での疲弊を防ぐのだとも言われています。

EQで心理的安全性を高める方法

EQで心理的安全性を高める方法

EQで心理的安全性を高めるには、「相手と気持ちを合わせること」が大切です。ここでは、EQの4つ能力を活用して心理的安全性を高める方法について紹介します。

方法①:感情を識別する力の活用

「感情の識別」とは自分の感情や他者の感情を認識したり区別したりして感じる能力です。人間関係以外にも、絵画や音楽など芸術作品に描かれている感情を評価する力も含まれます。

感情を識別するには、自分の感情のクセを客観的に分析したり、他者の感情を想像する習慣をつけたりが必要です。

例えば、感情日記をつけての感情の可視化は、自他への客観的な指標になります。また、小説や映画などの芸術を通して、登場人物の感情的な側面に思いを馳せることも感情を識別する力を活用する上で効果的です。

方法②:感情を利用する力の活用

「感情の利用」とは、喜怒哀楽など人間の基本的な感情をイメージしたり、音や色、味に含まれる感覚を思い浮かべたりする能力です。物事に含まれる感情を意識的に心の中に取り込む力とも言えます。

感情を利用するには、状況に合わせた感情の創出がポイントです。例えば、モチベーションが低下している際に意識的に意欲を高めることも感情の利用能力に依拠します。

モチベーションを上げるためには、自分の存在意義が感じられる環境に身を置くことが大切です。職場においては、年齢や性別、役職(地位)にとらわれず、対等な立場から意見やアイディアを出し合える多様性を認める雰囲気の醸成がポイントです。

方法③:感情を理解する力の活用

「感情の理解」とは、自分や相手の感情が生じる背景を理解する能力です。例えば、「怒りは自分の正当性を否定された際に生じる」「恐怖心が過ぎ去ると安堵感が生まれる」など、特定の感情がどのような時に生起するのかや、別の感情にどのように変化するのかを推察できる力とも言えます。

ビジネスにおいては、例えば顧客からのクレームを受けた場合、相手が怒っている本当の心理的背景を把握し、その感情にそった対応ができる力のことです。相手からの言動から機嫌を察知したり、気落ちしている同僚に気づいて励ませたりする人材は、感情の理解に長けている人物と言えます。

方法④:感情を調整する力の活用

「感情の調整」とは、特定の感情をモニターし、抑制する能力です。例えば、怒りを感じた後にその感情をなだめたり、悲しみを向上心に生かしたりといった感情の管理や調整能力を指します。

感情を調整する力は、ネガティブな状況の中でもポジティブに考える意識を持ったり、自分よりも秀でていると感じる人も目標にしたりすることで養われます。周囲をよく観察して、見習いたい部分を真似て見ると、自分の感情を管理する方法に役立てることが可能です。

心理学的安全性を高める際の注意点

心理学的安全性を高める際の注意点

ここまで、心理的安全性とは何かについてや、個人や組織にとってのメリットについてお伝えしました。続いては、心理的安全性を効果的に高めるために押さえておきたい注意点を3つ紹介しましょう。

注意点①:上司としての役割を果たす

心理的安全性を重視しすぎると、上司と部下がリラックスしすぎた馴れ合いの関係になってしまう可能性があります。何でも話し合える関係性は確かに重要です。

しかし、過度なリラックス状態は仕事としての機能を果たせなくなったり、チームの生産性がかえって低下したりします。風通しが良い組織づくりだけにとらわれすぎず、上司として主導権を持つべき状況を見極めることが大切です。

注意点②:チームの目標と計画を共有する

チームの生産性を高めるには、具体的な目標や目標達成までの計画を共有する必要があります。メンバーそれぞれの仕事の目的が明確になると、地道な作業や裏方の仕事に対してもモチベーションを持って進めることが可能です。

注意点③:個人のコミットメントを重視する

コミットメントとは、目標に対する責任や積極的な関わりを意味します。従業員それぞれのコミットメントが低いと、心理的安全性はうまく機能しません。

目標を達成すると、個人や組織にとってどのような利点があるのか、部下の気持ちを動かすはたらきかけが求められます。

心理的安全性について学べる本3選

心理的安全性について学べる本3選

心理的安全性についてさらに詳しく知りたい方のために、おすすめの本を3冊紹介します。

心理的安全性のつくり方

今までの心理学安全性の考え方が、指標もなく漠然と概念だけが先行して語られてきた実態を踏まえ、本書では心理学安全性が「ヌルい職場」ではなく、健全な衝突を生み出す機能がある点を行動科学のアプローチから解説しています。

日本における心理的安全性の4因子「話やすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」に分類。これら4因子を活性化させるためのフームワークについて紹介しています。心理学安全性を指標化し、具体的かつ効果的なアプローチ方法にもとづいて高めたい人におすすめです。

グーグルに学ぶ最強のチーム力 成果を上げ続ける5つの法則

本著はGoogle流のチームの作り方や運営の仕方、採用の仕方などを紹介し、成果を上げ続けるチームづくりについて解説しています。その中でも、組織を成功に導くために必要な「5つのキーワード」を提示。キーワードの1つとして、「心理的安全性」についても言及しています。

いかに効率的に成果を上げる組織を作るか、イノベーションをいかにして起こすかなど、Google流の働き方について興味のある人におすすめです。

チームが機能するとはどういうことか〜「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

本書は流動的な集団として機能させるには何が必要何か、実例を交えながら具体的な「チーミング」のあり方や作り方を解説しています。Google流のチームづくりの方法を具体的にどのように実践すれば良いのか、心理的安全性とは具体的に何かついてに、数値データや科学的根拠と合わせて理解することが可能です。

チームを活性化させたい人や、自発的な学習を誘発できるチームを作るにはどうしたら良いか知りたい人におすすめの本です。

まとめ

ハートマーク

心理的安全性とは何かについて、ビジネスにおける有用性を中心に詳しく解説しました。要点は次のとおりです。

  • 心理的安全性とは他者からの反応に怯えたり羞恥心を感じたりせずに、自然体の自分をさらけ出せる環境を指す
  • 心理的安全性のバランスの良いチームは、業務の生産性が向上し、イノベーションが起きやすい
  • EQの4つの感情能力の活用は、チームの心理的安全性の向上に寄与する

過度な心理的安全性は組織にとってマイナスですが、うまく利用すると部下の自発制やモチベーションを情勢する力となります。本記事の内容をぜひお役立てください。

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組織コンサルタント。累計1,000名超国内トップクラスのEQの専門家。(著)組織の感情を変える〜リーダーとチームを伸ばす新EQマネジメント。株式会社グロースウェル 代表取締役。

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