内発的動機づけとは、内面にある意欲や興味・関心が、行動の原動力となっている状態です。「モチベーション」とも等しく、本質的な欲求がもとになっているため、外的な要因に影響されません。
今回は、内発的動機づけの意味やEQとの関係、メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
内発的動機づけとは何か?
「内発的動機」とは、ある行動をする際のもととなる、心の中から湧き上がる興味や関心のことです。
たとえば、「ボランティアへの参加はあくまで楽しいからであり、報酬を求めていない」「勉強するのは賃金アップが目的ではなく、知識を得たいから」などが内発的動機にあたります。
相手に内発的動機づけを行えるのは、高いEQを持っている人といわれており、組織のメンバーが、自ら行動を起こせる内発的動機を持てるよう、EQの高い人材がリーダーシップを発揮することが求められています。
内発的動機づけ=モチベーションのこと
内発的動機づけは、自分自身の内面から出てくる「やりたい!」と思うモチベーションのことで、外からの要因は関係せず、自分の中から発生しているものです。内発的動機づけには、「自己決定感」と「自己有用感」が大きく影響します。
自己決定感とは、他者ではなく、自らによって意思決定した実感です。また、自己有用感とは、自分が他者のためになっている、役立っていると感じる気持ちを表します。
いずれも、内発的動機づけでは最も大切な要素といわれています。
内発的動機づけの重要性
現代社会において、内発的動機づけはとても重要です。以前の日本の社会は、終身雇用が約束されており、最後まで安定した収入が得られることが一般的でした。
しかし、経済状況が不安定な昨今、雇用の維持は極めて不明瞭です。社内での昇給や昇格というキャリア形成ができなくなった今、社員が仕事そのものにやりがいを見つけないと、働き続けることは難しいでしょう。
他にも、労働人口の減少による生産性の向上の必要性も課題となっています。社員の業務負担が増す中で、昇給や昇格以外の方法でどのように生産性を高めてもらうかは頭の痛い問題です。
しかし、社員の内発的動機づけができていれば、モチベーションを低下させることがありません。このような背景からも、内発的動機づけは重要と考えられています。
内発的動機づけとEQ
EQの向上には、内発的動機づけも大きく関係しています。
EQの高い人材は、外発的動機に影響されません。自らの成長を目的とし、内発的動機である「モチベーション」によって、達成感を得ています。
人に指示されて物事にあたるのではなく、自ら達成感を求めて行動する人は、EQの向上も期待できるでしょう。
もうひとつの動機付け~外発的動機付けとの違い
外発的動機づけとは、外部から与えられる影響で、行動意欲が引き起こされる状態をいいます。
たとえば、報酬や給与などの金銭的なものや、感謝、昇格、名誉などの精神的な面での報酬も、外発的動機づけです。外発的動機づけは、マネジメントでは非常に有効な手段となります。
しかし、社員にとっては自分から湧き出るものではない、受け身な動機であるため、繰り返し報酬を得ることで、慣れが出てくる危険もあるといえるでしょう。
内発的動機づけによるメリット
内発的動機づけでEQを向上させると、毎日の生活や仕事の面でも、数々のメリットをもたらします。ここでは、4つのメリットを紹介します。
外的要因に影響を受けない
内発的動機付けは、自分自身が「やりたいからやる」という意欲を起こさせるものであり、損得関係なしに行います。
たとえば、ビジネスの場においては、「キータッチのスピードを上げたいから練習する」「高度なプログラミングができるようになりたいから学習する」など、「やりたい」「楽しい」がモチベーションとなっています。そのため、外部からの影響を受けにくいのです。
生産性を向上できる
内発的動機づけを行うと、結果的に生産性をアップさせることにもつながります。言われたことを言われたままにこなすだけの仕事は、期待以上の成果を出すことは困難です。
しかし、内面から湧き出すモチベーションに基づく行動は、意欲的で活発であるため、生産性にも寄与する可能性が高まるのです。どうすればより良い成果が得られるか、効率的に行えるかを常に考えて行動するため、良い循環ができ、業務改善も期待できるでしょう、
仕事に意味・価値を見出し長続きする
内発的動機づけは、長期的に維持できるメリットがあります。外発的動機づけの場合は、他者からの報酬や感謝が途絶えてしまうと、一気にモチベーションが下がってしまいます。
しかし、内発的動機づけの場合、人にやらされるのではなく、自ら仕事に対しての意味や価値を認めているケースが多く見られます。自分で決めて行動するので、自己肯定感や自己有用感が維持できていれば、長期的に維持できるでしょう。
報酬アップなどのコストもかかりません。
自己成長・能力開発につながる
内発的動機づけができていると、社員の自己成長にもつながります。内発的動機づけができている人は、自分から学ぶことで成長したいと考えているため、より良い仕事をするために、自分の能力を高めようと考えるためです
これまで気づかなかった、自分の強みや可能性にも気づくチャンスといえるでしょう。
内発的動機づけによるデメリット
しかし、内発的動機づけは良い面ばかりではありません。考えられるデメリットを4つ紹介します。
必ずうまくいくとは限らない
内発的動機づけに基づく行動を起こしたからといって、それが必ず成功につながるとは限りません。
たとえば、内発的動機づけが、自分の満足感を得るためにだけ使われた場合を考えてみましょう。「多くのユーザーに遊んでもらえるゲームシナリオを作る」ことを目標にしても、出来上がった作品が自己満足レベルのストーリーであれば、顧客からは見向きもされません。
趣味であり仕事でなければ問題ないのかもしれませんが、それを仕事にして生きていくのであれば、センスやマーケティング力なども身につておく必要があります。
個人差がある
人の興味・関心は千差万別であり、一つの動機がそこにいる全員に当てはまることはありません。したがって、その事柄が、組織全員の内発的動機づけになることはないと考えた方が良いでしょう。
誰にも共通する目的は存在しないため、集団に対しての内発的動機づけは難しいといえます。
他者から影響を与えられない
内発的動機づけは、他者が直接影響を与えられません。内発的動機づけの大きなカギとなる「自己肯定感」や「自己効力感」も、研修などで他者から影響を与えることはできますが、内発的動機づけに直接影響を与えることはできないのです。
興味や関心が薄いと効果を発揮しない
内発的動機付けとして機能するかどうかは、本人がその事柄に対しての興味・関心を持っているかどうかにも左右されます。興味や関心がないと、その事柄に対しての内発的動機を発見できないからです。
やりたいことがない、好きなことがない人は、内発的動機を発見すること自体が困難といえるでしょう。
内発的動機づけを高める方法
自分の内発的動機は、自分では把握しにくく、突然尋ねられてもわからないものです。そこで、内発的動機を見つけて高めるには、次のような会話を通した方法を活用すると良いでしょう。
オープンな質問をなげかける
オープンな質問とは、「はい」「いいえ」の一言だけで答えられない質問です。考えて答える質問を投げかけられると、答える時に、頭の中で出来事や文章を組み立てます。
考える行為をきっかけに、自分の考えを掘り下げたり広めたりできるので、そうしたプロセスから内発的動機に気づけます。
相手の話に共感する
積極的に、相手の話に共感することも良いでしょう。
人間は誰しも、自分が他者からどう思われているかが気になるものです。あなたがその人に寄り添い、共感することで、相手は安心してコミュニケーションを取れます。
共感を得ることによって、相手は自分の考えを自由に話しやすくなるでしょう。
失敗にも肯定的にフィードバックする
仕事で成果が出なかった場合に、肯定的なフィードバックを与えるのも、相手の内発的動機づけに有用です。
失敗したという結果よりも、結果を得るためにどのような努力をしたかを聞き出し、認めることで、自己有用感が高まるからです。
自発的に考える力を引き出す
内発的動機の源は、「自発性」です。自ら行動を起こさず、他者からの指示を受けて動く人は、内発的動機を持っていない可能性があります。
そこで、仕事の中で自分に何ができたか、これからどのように取り組めば改善できるかなどを考えるように促しましょう。目的達成のために何をするかを考えることで、内発的動機が育ちます。
成功体験をする
「自分ならできる」という成功体験をすると、内発的動機づけが高まります。自信がつくと、別の仕事にチャレンジする意欲が湧いたり、自分からやってみようとする自主性が高まったりします。
一般論ではない、その人のための解決策を導き出す
開かれた質問を投げかけることで、その人の考えや希望、悩みを聞き出せます。答えの中から、相手に気づきを促すことも、内発的動機づけに効果的です。
たとえば、相手のことばの中に出てきた自分なりの手法について「それを行っている人を他にも知っている」などと伝えてみましょう。自分の方向性が間違っていないことや、他の人にも支持をされるやり方に則っている安心感を得られます。
内発的動機づけを維持する方法
内発的動機づけは、外発的動機づけよりも維持しやすいですが、他者の評価を気にしすぎる人にとっては見分けがつきにくく、維持も困難な場合があります。そこで、発見した自分の内発的動機を維持するために、どのような工夫をすれば良いか考えてみましょう。
適切な目標を設定する
モチベーションを維持するためには、内発的動機に近い、現実的活挑戦的な目標を設定すると良いでしょう。その人のやる気や情熱、奉仕の心に紐づいた目標を設定すると、例え利益の発生しない状況であってもやる気を維持できます。
自問自答を繰り返す
自らに問いかけ考えて出した結論は、モチベーションとして長続きする傾向にあります。自分の心に「なぜ?」を繰り返し問い、その結果得た答えの中には、動かすことができない確固たる理由があるはずです。
行動を促せる、自分の心のなかにある真実に近づいてみましょう。
楽しい部分に目を向ける
誰にでも、楽しいと思うことと、そう思えないことがあります。楽しくないことに対して、高いモチベーションをもって取り組むことはできません。
仕事では、自分の心を押し殺してでもせざるを得ないことも確かにあります。しかし、ときには自分の心に正直になって、自分が本当に楽しめることを見つけましょう。
否定的な存在に近づかない
否定的な発言や行動が多い人のそばにいると、ネガティブな影響を受けることがあります。その結果、モチベーションの低下につながり、内発的動機が損なわれてしまう恐れもあるため、近寄らないようにしましょう。
メンターに相談する
仕事に対して、どのようにモチベーションを維持すればよいかがわからない人は、メンターに相談するのも良いでしょう。メンターとは、助言や指導をしてくれる人のことで、相談に乗ってくれる上司や先輩です。
やる気が続かないなどの苦しい問題を抱えている人は、メンターからアドバイスを受けると、状況が改善されるかもしれません。
EQGWでは、EQ検査をもとに、個人の強みや組織のバランス構築へのアドバイスなどを行っております。研修も実施可能ですので、ぜひご活用ください。
まとめ
EQは、ビジネスにおいて今や必須の能力です。EQの高い人材が社内にいることで、コミュニケーションの円滑化や、モチベーションの維持など、多くのメリットが享受できます。
そのためには、まず社員のEQを把握することが近道です。そこで、EQ検査の一つである「EQGW」の受検をおすすめします。
「EQGW」では、自分自身の感情のくせや、ビジネスで活かすべき強みを導き出し、面接でのフィードバックで行動変容の指針をお伝えします。組織のリーダーや役員には、マネジメントや組織構築のためのアドバイスを行います。
「EQGW」の導入により、社員が個々に自分の感情を認識し、状況に応じ適切にコントロールできている結果も報告されており、短期間での職場の多様化に成功し、バランスの良い組織になったという声も届いています。
「EQGW」受検後には必要に応じて、EQを高めるための研修も可能です。自分の感情をコントロールすることなどできるのか、と考える方も多いでしょう。自分や周りの人の感情を把握し、コントロールする能力は、適切なトレーニングで高められます。
もちろん容易ではありませんが、社内外を含め、相手との信頼関係を構築するためには、一定のコントロールができることが望ましいのは間違いありません。人に自分の気持ちを伝えられずに悩んでいる方や、怒りっぽい人が職場にいて困っている経営者のお役に立てる内容です。
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