【解説】EQ理論とは?4つのブランチと理論の活用方法

eqの理論 コラム

EQ理論とは「自分の感情を把握し、適切に調整し、利用する知性の一部」です。しかし、EQは感情の認識能力として位置付けられていながら、能力の定義や構成要素などは時代の流れや測定方法によって異なります。

そこで今回は、EQとは何かについて、EQ理論の提唱者であるジョン・メイヤー氏とピータ・サロベイ氏の学術的な観点から考察します。

EQ理論とは

EQ理論

EQ理論とは、EQ研究の第一人者であるジョン・メイヤー氏とピータ・サロベイ氏によって提唱された、感情知性(EQ)に関する理論です。ここでは、彼らによるEQの定義づけや測定方法について解説していきましょう。

EQとは

EQの定義については時代や研究者の見解によって異なりますが、一般的には「感情をうまく管理したり利用したりする能力」とされています。また、メイヤー氏とサロベイ氏はEQを次のように定義づけしています。

Emotional Intelligence refers to an ability to recognize the meanings of emotion and their relationships, and to reason and problem solve on the basis of them.【引用:Mayer, Caruso & Salovey, 1999, p. 267

つまり、EQとは「情動の意味および複数の情動間の関係を認識する能力であり、情動の認識にもとづいて思考したり問題解決したりする能力である」です。

ちなみに「Emotion」は日本語でいう「情動」。心理学用語で情動とは「短時間で消失する感情でありながら、時間の経過をへて徐々に穏やかな感情へと変化する感情」といった意味です。

また、「情動」と混同されやすい心理的な概念に「気分」があります。「気分」とは、心理学用語において穏やかな感情を指す言葉。情動が生じた後に気分へと移り変わる意味があります。

EQの測定方法

EQの測定方法は主に客観的テスト自己報告式による質問紙の2種類の形式があります。

一般的に、EQの客観的テストではMSCEITテスト(Mayer-Salovey-Caruso Emotional Intelligence Test)が利用されますが、この客観的テストを用いる際にとりわけ問題になるのは正解の導き方です。

MSCEITテストではアメリカ人や西洋の研究者などの解答を正解の基準としているため、文化差のある人たち(例えば日本を含むアジア諸国の人たち)の能力を測定する基準に用いるのは、適切ではないという考え方もあります。

したがって、日本においては一般的に質問紙によってEQを測定する方法が標準です。ではEQで用いる質問紙法について、代表的な測定方法を紹介しましょう。

測定方法①:自己報告テスト

自己報告テストとは、「表情をどの程度うまく読み取れるか」といった複数の質問項目について、主観的に判断や評価をさせる測定方法です。「EQは複数の人格特性から構成されている」という立場で用いられ、「特定の人格特性をどの程度備えているのか」、「各人格特性が平均と比べてどうか」、「各人格特性の全体的なバランスはどうか」などを評価します。

測定方法②:観察者評定テスト

観察者評定テストとは、先述した自己報告テストと同じく「表情をどの程度うまく読み取れるか」のような複数の質問に対して、判断や評価をさせる測定方法です。ただし、自己報告テストとは異なり、第三者(親や上司など普段からよく接する人)が客観的に個人を判断・評価します。

測定方法③:パフォーマンステスト

パフォーマンステストとは、ある人物の写真を見せて、その人物が表す感情を答えさせたり、ある人物に関する短い物語を読んで人物の気持ちを想像させたりする測定方法です。事前に定められた得点基準がある意味で客観的に評価できる点が、自己報告テストや観察者評定テストとは異なります。

EQ理論における4つのブランチ

EQ理論における4つのブランチ

画像:EQに含まれる4つの能力(Mayer, Caruso and Salovey, 2000, p. 269を改変 )

EQとはさまざまな感情の意味や関係性を認識し、それられにもとづいて推測したり問題解決をしたりする能力です。そして、これらの能力は、メイヤー氏とサロベイ氏によって4つのブランチモデル(four-branch model)に分類されています。

具体的な4領域は次のブランチ①からブランチ④の順序で機能しています。

  • ブランチ①:感情の知覚・表出(perceiving and expressing emotion)
  • ブランチ②:感情の同化(assimilating emotion in thought)
  • ブランチ③:感情の理解(understanding emotions)
  • ブランチ④:感情の管理・調整(reflectively regulating emotions)

ブランチ(branch)には日本語で「枝分かれ」の意味があるとおり、能力は上図の通り階層性があります。また、基本的なプロセスからより高いレベルの統合されたプロセスへと配置されている点が特徴的です。

ブランチ①:感情の知覚・表出

EQ理論における「感情の知覚・表出」は最も低い水準のスキルとされています。感情の知覚・表出とは具体的に次のような力です。

  • 純粋な笑みと作り笑いを区別する力
  • 表情による感情を適切に読み取る力
  • 芸術作品(音楽・絵画・写真など)に描かれている感情を評価する力
  • 多様な情報に内包する感情的なコンテンツを見極める力

つまり、EQ理論における「感情の知覚・表出」とは、自分の感情を認識し、他者の感情を識別する能力とも言えるでしょう。この能力は、EQの基盤ともなる能力であり、第一に感情を正確に把握することでEQを発展的に活用できるとされています。

ブランチ②:感情の同化

EQにおける次の水準は「感情の同化」です。感情の同化とは具体的に次のような内容の力を指します。

  • 喜怒哀楽といった基本的な感情経験をイメージする力
  • 音や色、味に含まれる感覚をイメージする力
  • 意識して感情を心の中に取り込む力

つまり、EQ理論における「感情の同化」とは、自分の感情を適切に利用する力と言えるでしょう。自分の感情をその時々の状況において適切な状態にできれば、問題解決にも有用です。

ブランチ③:感情の理解

EQ理論における3番目の水準は「感情の理解」です。感情の理解とは具体的に次のような内容の力を指します。

  • 特定の感情がどのようなときに生起するのか理解できる力
  • 複雑な感情はどの感情が組み合わさったものなのか理解できる力
  • ある感情から別の感情にどのように変化するのか理解できる力

つまり、EQ理論における「感情の理解」とは、怒りは正義が否定されたときに生じたり、恐怖が通りすぎると安堵感が生まれたりといった、自分の感情のアルゴリズムを把握できる力とも言えるでしょう。気持ちが生じる原因を考えられると、問題を解決に導くための糸口となります。

ブランチ④:感情の管理・調整

EQ理論において、「感情の調整」は最も高い水準のスキルとされています。感情の調整とは具体的に次のような内容の力です。

  • 怒りを感じた後になだめる力
  • 悲しみをより良い方向に導く力
  • 喜びをモチベーションにつなげる力

つまり、EQ理論における「感情の調整」とは特定の感情や衝動をモニタリングし、抑制する方法を知っている力と言えます。目的を達成するうえで、求められている行動をとるために適切に気持ちを活かし、最終的にどの行動を取るべきか、望ましい感情の選択かどうかの調整がこの段階でなされます。

EQ理論を用いたリーダーシップ

リーダーシップ

ダニエル・ゴールマンの調査結果により、1990年代後半にEQと人生の満足度や成功には、次のような関係があると判明しました。

  • 成功を収めた企業のリーダーやトップなど、他者から多大な信頼を得ている人は必ずしもIQの高い人ではない
  • 成績は良くなかったが、EQの高い人はむしろ社会に出てから活躍している
  • 人生における成功度はIQで測定できない

では、社会的に活躍するためにはEQをどのようにチームワークや他者理解に汎用すれば良いのでしょうか?ここでは、EQ理論に基づいたリーダーシップの特徴やEQ理論を活用したリーダーシップの例について紹介していきます。

EQ理論に基づいたリーダーシップの特徴

EQ理論に基づいたリーダーシップには「人間関係を適切に管理する」という最終的な段階へ向かうために、先述した4つのブランチを活用する点が特徴的です。たとえば、次のようなリーダー像があげられます。

  • 組織内にポジティブな雰囲気を醸成し、より良い人間関係を築く能力がある
  • メンバーのモチベーションを高め、最高のパフォーマンスが発揮できるように導く力がある

つまり、EQを活用したリーダーシップとは「人の心をより良い方向に動かす力」とも言い換えることが可能です。他者の自主性をどれだけ引き出せるかが、EQ理論にもとづく優れたリーダーの指標といえます。

EQ理論を活用したリーダーシップ例

実際にEQ理論を活用したリーダーシップの例は次のとおりです。

  • 社員に積極的に挨拶をする
  • 仕事や人間関係のささいな気づきを共有する
  • 社員の良い点を言葉にして認める

EQ理論の活用といっても、難しいはたらきかけをする必要はありません。毎日の小さなコミュニケーションの積み重ねが、組織全体の感情をポジティブな方向に導くほどの大きな力となり得ます。チームワークにEQを活用する際の第一歩として、まずは社員一人ひとりに目を配り、エンゲージメントの向上を図ってみてください。

EQ理論に関する知識が深まる本

読書する男性

EQ理論についてさらに詳しく知りたい方に向けて、オススメの本を2冊ご紹介します。

EQ〜こころの知能指数

EQ〜こころの知能指数

EQ こころの知能指数』はEQを世界に広めるきっかけとなった、ダニエル・ゴールマン氏の著作です。初めてアメリカで発行されたのは20年以上も前ですが、今でもまったく色あせない名著と言われています。

むしろ、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)全盛の時代が進み、EQの不足や未熟さが顕著となった現代におけるアンチテーゼとも言える内容です。

EQに関する具体的なエピソードが充実しているので、EQを体系的に学びたい人やそもそもEQはどうして重要なのか知りたい人などにおすすめです。EQの基本的な内容を知りたい人は、まずこの本を読めば間違いありません。主張の根拠は全て調査結果にもとづいているので、誰もが理解できる実例と合わせての理解が可能です。

EQ 2.0 :「心の知能指数」を高める66のテクニック

EQ 2.0

心の知能指数を高める66のテクニック』は、EQを実践的にトレーンングし、能力を高めることが目的の本です。具体的には、次のようなステップを踏みます。

  1. 本に付属しているEQのテストを受ける
  2. 本にあるトレーニング方法を実践する
  3. 6ヵ月後に本に付属しているEQのテストを再度受ける
  4. 点数の変化からEQの能力の変化を確認する

EQのテストは巻末についているコードにアクセスすると受けられます。

テストを受けた後には、EQの改善点が読むべきページと一緒に表示されるので、自分の強みや弱みを端的に把握することが可能です。自分のEQがどれくらいあるのか診断したい人や自己分析をしたい人などにおすすめの本です。

まとめ

ビジネスにおける打ち合わせ

EQ理論について、EQの能力をベースにしながら読み解きました。要点は次の通りです。

  • EQ理論とはEQ研究の第一人者であるジョン・メイヤー氏とピータ・サロベイ氏によって提唱された、感情知性(EQ)に関する理論のことである
  • EQ理論を活用したリーダーシップには「人の心をより良い方向に動かす力」がある
  • EQ理論の活用は小さなコミュニケーションの積み重ねによって効力を発揮する

EQの概念や定義は時代の流れや研究者によって異なります。しかし、基本的なEQの考え方が理解できれば、日常生活やビジネスにおいてより的確にEQ理論を応用できます。本記事で紹介した内容をぜひごお役立てください。