EQは「こころの知能指数」と呼ばれる能力で、ビジネスにおいてはなくてはならない能力だといわれています。その理由は、高いEQを持つ社員の存在により、社内外でのコミュニケーションが円滑化して企業に大きな利益をもたらす能力と考えられているからです。
今回は、ビジネスにおいてEQが重要といわれる理由や、EQを構成する4つの要素、トレーニング方法などについて解説します。
目次
EQとは
EQとは、「こころの知能指数」と呼ばれる概念です。
EQの高い人は、自分の感情について深く興味を持ち、振り回されることなく、その場に応じコントロールすることができます。ビジネスでの成功にも深く関係しているといわれるEQは、訓練により高めることで、企業にも大きな利益をもたらす能力です。
EQが高い人が持つ特徴
EQが高い人は、自分の周りの人間関係を良好にする、多くの特徴を持っています。ここでは、その中で代表的なものを紹介していきましょう。
リーダーシップがある
EQが高い人は強いリーダーシップを持っており、自分や相手のこと、チームに関心を持ち良く知ろうとします。どのような気持ちで仕事に向かっているか、どういった意見を持っているか、まずはお互いを良く知ることが一緒に仕事をする上でも大切だからです。
能力だけが仕事を成功させるわけではないことや、コミュニケーションをおろそかにすべきではないことを知っています。もちろん、仕事に対しても前向きで真摯であるため、周りから信頼され、人望も厚くリーダーとしての立場を期待されることになるでしょう。
気配りができる
人の気持ちをわかろうとし、寄り添える人EQの高い人こそ気配りのできる人間です。相手がことばに出さないことも、態度やしぐさで察し、感情を理解します。
今かけて欲しいことばや、して欲しい事柄に気づいてくれるので、気遣いや思いやりのある人として慕われるでしょう。
過ちを認める
自分の過ちは素直に認めて謝罪し、無駄な言い訳や責任転嫁をしないのもEQの高い人の特徴です。軌道修正も素早く、目標を見据えてすべきことに注力します。
また、人の過ちに対しても寛容です。しかし、相手にとって必要な指摘やアドバイスは、きちんと伝えられる強さも持っています。
ポジティブに考える
EQの高い人は、考え方が常にポジティブです。自分の行動が起因して失敗した場合も、いつまでもそのことでくよくよせず、頭を切り替えて次のチャンスを狙っています。
また、失敗を恐れず、初めてのことにも果敢にチャレンジします。ネガティブな思考は、自分の行動範囲を狭め、さまざまな経験や体験を見逃すことになってしまうのです。結果的に、自分の成長の機会を失ってしまうことにつながります。
ビジネスでEQが重要とされる理由
EQはビジネスにおいても重要な役割を持ち、企業内や他者との関わりの中でも大きな効果を発揮します。結果的に業績の向上にもつながることが期待され、企業では高いEQを持った社員の確保が重要です。
ここでは、高いEQを持った人材が企業内でどのように期待されているかのかについて解説します。
感情に支配されない
EQの高い人の特徴の一つは、自分の感情に支配されず、流されないことです。
たとえば、社内での会議で自分のチームの失敗を指摘されたとします。その指摘には覚えのない内容や感情的な発言が含まれており、自分は非常に腹立たしい思いで聞くことになってしまいました。
しかし、この場でただ反論しても、プラスに働くことはあまり期待できませんし、むしろ言い訳に捉えられかねません。他の人も巻き込んで印象を下げてしまう可能性もあります。
それよりも、いったん怒りの感情は心のうちに収め、指摘のあった項目について確認をしてから、冷静に再度の報告をする方が良さそうです。また、指摘には自分たちの未熟さについても教えがあり、結果だけを追求したのではなく、チームとしての力を高めるための示唆も含まれていました。
このように、怒りの感情が湧いたからといって、それをむき出しにするのではなく、どうしてその感情が起こったのか、どうすれば別の感情に振り替えることができるかを考えられるのがEQの高い人です。
相手の信頼を損なわない
感情的な発言は、自分やその関わっている組織全体の信用を失うことがあります。
たとえば、取引先との商談で自分を見下すような不快なことを言われたとしても、すぐに不快感を表現することは得策ではありません。カッとなって感情的に言い返してしまえば、これまでに先輩たちが築いてきた企業同士の関係が、この一回の商談で崩壊してしまうかもしれないのです。
そうなれば、企業として大きな損失となります。信頼関係を構築するのには長い時間を要しますが、壊すのはほんの一瞬です。失ってからでは取り返しがつかないのです。
ビジネスで求められる4つの要素
一般的に、EQは次の4つの要素で構成されるといわれています。
- 感情の識別
- 感情の利用
- 感情の理解
- 感情の調整
対人関係において、1.~4.の順に使われますが、このすべての要素を持っていることで機能し、いずれが欠けても成り立ちません。
1. 感情の識別
感情の識別とは、自分や他者が持っている感情を認識・識別する能力のことをいいます。
たとえば、職場にAさんという人がいたとします。Aさんは、納期を守れなかったことで、上司から叱責を受けてしまいました。
そのときに、「今、自分が動揺している」と感じ取れることが感情の識別です。突然起きる感情の変化を感じ取るためには、普段の状態の自分の感情にも注意を払い、正確に把握しておくことも大切です。
2. 感情の利用
感情の利用とは、自分の感情をその場に応じた状態に持っていくことをいい、「怒りが湧いたときに鎮める」「落ち込んだときに前向きになる」など、自分の感情をコントロールする能力です。
上記の場面では、叱られたからといってAさんもいつまでも動揺し続けているわけにはいきません。まずは狼狽しているAさん自身の気持ちを落ち着かせ、上司の叱責にしっかり耳を傾けなければならないシーンです。
このように、場面に合わせた感情を作り出すことが、感情の利用の能力によるものなのです。
3. 感情の理解
感情の理解とは、自分や相手がなぜそのような感情を持っているかを理解する能力のことをいいます。すなわち感情の変化を推し測る能力ですが、4つの能力の中では特にこれまでの経験が求められる能力です。
自分や相手の言動、表情に加え、その場面の状況他、情報を総合的に分析して利用する必要があるからです。簡単な表現にすると、「相手の機嫌」もこの中に入ります。
上記の例では、どうやらAさんの上司も虫の居所が悪かった様子です。そこにAさんのミスが目についてしまい、普段であればそれほど問題にならないような些細なことにまで、重箱の隅をつつくような指摘をしてしまったようです。Aさんも思うところはあるものの、ミスについては認めてしっかり謝り、今後気をつけると謝罪しその場は収まりました。
対話の中で、相手の置かれている状況や感情を感じ取ることはとても大切です。「機嫌が悪い」「落ち込んでいる」など、相手の状況を察することができる人は、感情の理解の能力に長けているといえるでしょう。
4. 感情の調整
感情の調整とは、自分の感情を調整する能力のことをいいます。
ここまでの例で、Aさんは「自分がもう少し注意して仕事をすれば今回の指摘はされずに済んだ。これからは一層気をつけ、提出前にはもう一度チェックするようにしよう」と心に誓いました。しかし、Aさんではなく別の人が同じ状況に陥った場合、同様の教訓を得るかどうかはわかりません。「あーあ、今回はついてなかったなあ」と、特に次に生かそうと考えずに終わってしまうかもしれないのです。
この2人の発想を比較すると、教訓を得たと感じる人は自己の成長を促す人でしょう。このようなケース以外でも、高い目標を達成満足してしまいそうな状況においても、「まだできそうだ、もっと上を狙ってみよう」と考えられる人が、感情の調整が上手な人なのです。
EQは訓練で伸ばせる能力
EQは、幼少期に親から無償の愛情をたっぷりと受け、自己肯定感を持って育ったかどうかが重要といわれています。しかし、生まれ持った能力が大きく影響するIQ(知能指数)とは異なり、EQはどの年齢でも、適切なトレーニングによって伸ばすことができる能力です。
EQのトレーニング
EQを高めるトレーニングには、特別な準備は必要ありません。日常の生活に、ちょっとした心がけを取り入れるだけで、少しずつ成長していきます。
人の良いところを見つける
普段から、他の人に興味を持って接してみましょう。話し方や仕草、その他の行動などから、その人の好ましいところを探し出します。
人には良いところも悪いところもありますが、ポジティブに良いところに目を向けましょう。
良い人間関係を築くためには、相手への尊敬も非常に大切です。良いところを知り好意的に接することができると、人間関係もより深まっていきます。
人の話に耳を傾ける
EQを高めるには、人の気持ちに寄り添う気持ちが必要です。話に耳を傾けながら、仕草や声などから、今相手はどのような気持ちでいるのか考えてみましょう。
相手の話を聞くというのは、意外に難しいことで、聞いているとついつい口を挟んでしまったり、自分の意見が頭に湧いてきて否定的になったりしてしまうこともあります。
しかし、話は最後まで聞いてみないとわからないものでもあります。まずは相手の話にじっくり耳を傾ける「傾聴」を心がけましょう。聴いてもらった相手も、「この人は自分の話を最後まで聞いてくれる人だ」と、信頼を寄せるに違いありません。
感情の日記をつける
寝る前に、今日一日に起こった感情やその前後の出来事について振り返り、日記につけてみましょう。
これも、難しいことを書く必要はありません。「こんなことがあった」→「こんな気持ちになった」→「こういう行動を取った」など、シンプルで良いのです。
感情は、自分のものでさえも目にすることはできません。しかし、「日記」という形で可視化することにより、自分はどういった感情が起きやすく、どんな行動を取りがちかが見えてきます。
それは、いわゆる「感情のくせ」です。客観的に自分の感情の動きを把握したり、感情に動かされてしまった良くない行動を確認していったりする手掛かりになるので、日記はとても役に立ちます。
EQ検査をする
感情やEQは、目には見えないものです。そこで、EQ検査を用いて、自分の強みや弱みをセルフチェックみましょう。
インターネットで検索すると、無料でできるEQ検査は複数ヒットします。検査の多くは、出題項目に対し、複数の選択肢の中から一つを選んでチェックする方式で、気軽に取り組みやすいことも魅力です。
今まで知らなかった自分の傾向が見えてくるので、使いやすいと感じるものを選び、一度チェックをしてみてください。
EQの研修を受ける
EQの向上に積極的に取り組んでいる企業では、EQについての研修を取り入れている場合があります。資格や専門知識を持っている人が講師をする場合や、EQについて講習を受けた社員が社内で広める形式など、導入の方法はさまざまです。
他にも、個人単位で受講できるセミナーもありますので、インターネットで検索してみると良いでしょう。
まとめ
社員のEQ向上のために研修の導入を検討されている企業には、当社グロースウェルが提供する「EQGW」の受検をおすすめします。
EQGWは、自分や組織のメンバーの感情パターンを可視化し、8つのパターンに分類、8項目の評価レポートとして提示するEQ診断です。受検者が活かすべき強みや克服すべき課題を、面談でフィードバックします。その後、必要であれば個別に研修を行うことも可能です。
EQGWでは、企業を支える社員の感情の使い方を知り、ビジネスにおいてより良い効果を得るために行動変容を促します。怒りのスイッチがわからない人や組織の雰囲気を悪くする人、非効率的な人が現場にいて困っているという場合や、自分自身がそのようなタイプでより良く変わりたいという場合は、ぜひEQGWの活用を検討してみてください。