人間の理性的な行動をも支配する「感情」は、ビジネスの場面においても非常に重要な役割を持っています。
しかし、怒りや憎しみの感情は、時として仕事にも大きな悪影響を与えるものです。それらの感情も、自分である程度マネジメントできれば、時として推進力となることもあります。
今回は、感情のマネジメントについて詳しく解説していきます。
目次
感情とは
感情とは、人や動物が物事に対して抱く気持ちのことです。代表的なものには喜びや怒りや悲しみ、驚き、諦め、嘆き、恐怖などさまざまなものがありますが、感情の分類は、古くより今もなお議論が続いています。
さまざまな形で表現される感情とは、人間にとって一体どのような役割を持っているでしょうか?
目的を達成するためのツール
精神医学者アルフレッド・アドラーの説では、感情は2つの目的を持っているとされています。
その説によると、目的の一つ目は、ネガティブな感情で他者の行動を変容させることです。部下に対してすぐに怒る組織のリーダーは、結果的には場の空気も悪くなってしまうのにも関わらず、部下を威嚇し支配して言うことを聞かせ、思うとおりに操作する目的があると考えられます。
そしてもう一つの目的は、自分自身を奮い立たせることです。喜び、怒り、哀しみなどの感情が、自分自身の背中を押し、前へと進む推進力として突き動かすのです。
成長と共に細分化される
感情は、生まれたときにすべてを習得しているわけではなく、成長と共に細分化し増えていきます。
生後間もない赤ちゃんの感情は、「喜び」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「驚き」「恐れ」の6つといわれており、これらは「基本的感情」と呼ばれているものです。
その後、1歳の後半になると、「基本的感情」に加えて「照れ」「羨望」「共感」、そして3歳になる頃には、「恥」や「罪悪感」などの複雑な感情も徐々に見られるように成長します。
ビジネスにも影響する「感情」
感情的になることは、仕事ではあまり良い影響を与えません。
怒りっぽいリーダーがおり、ことあるごとに怒鳴り散らす組織は働きやすいとはいえず、組織を構成するメンバーは業績を上げるための努力をしようとは思わないでしょう。
しかし、メンバーへの気配りができ、寄り添うことができるリーダーだったとしたらどうでしょうか?自分を大切にしてくれるリーダーのためであれば、自分も頑張ろうというモチベーションを保つことができ、仕事自体もチーム一丸となることで良い結果につなげることができると考えられます。
「感情」が原因でつまずく組織は多い
人間の感情は非常に複雑に分かれています。
研究者によっては、感情の数は優に2,000を超えるともいわれ、しかも一定ではなく常に揺れ動いているものです。そのため、「喜び」や「悲しみ」など、一般的に言葉で表現できる感情でも、実際には一人ひとりにより、また置かれている状況により異なっています。
組織のリーダーがそのことに気づかないと、メンバーが持つ感情に対して無配慮な言動を取り、組織としてつまずいてしまうのです。
部下や仲間の「感情」に気づく能力が必要
そうした組織内でのつまずきを起こさないためにも、リーダーは部下や仲間など、身の回りの人の気持ちに気づくことが重要です。仕事の成功に喜びを感じたらそれを分け合い、失敗したときには次へ向かうモチベーションを失わないように尽力していくことで、組織の中での信頼関係が構築されていきます。
また、なんらかの理由で精神的にダメージを受けている仲間の様子に気づき支援することで、ハラスメントの防止やメンタルヘルスケアにも役立ちます。配慮あるリーダーの言動は、組織にとっても最も重要な要素の一つなのです。
業績にも影響する「感情」
コミュニケーションの不足によって、メンバーの人間関係がうまくいかない、他部署との交渉が上手くいかないなどの組織的なつまずきは、企業の業績にも直結します。逆に、メンバーのモチベーションをアップさせることができれば、効率の良い仕事やより大きな業績のアップにもつなげることができます。
そのためには、メンバーの感情の動きをしっかりと把握し、自分の立ち回りを決めていく必要があります。その立ち回りに必要な能力が「EQ」です。
EQとは
EQとは、感情の知能指数と呼ばれる概念であり、自分や他者の感情を把握し、適切な表現やコントロールができる能力のことです。
人の話に耳を傾ける、感情に支配されずに冷静さを保つ、自分の失敗は素直に認める、他者の失敗も無用に責めないなど、EQの高い人は人間関係を良くするさまざまなスキルを持っています。
組織のリーダーが持つべきスキルとして、ビジネスのシーンでも重要視されている能力です。
感情をコントロールする方法
EQの高い人は、自分の中に沸き起こる感情をもコントロールすることができます。他者の発言を不快に感じたとしても、怒りに直結させない思考の仕組みを築いており、怒りのみならず、その場に応じ必要な対応をするためにも、感情のコントロールは非常に重要なものといえるでしょう。
そこで、EQを高めるために、次のような習慣をつけてみてはいかがでしょうか?
感情をことばにして表現する
自分の中に沸き上がった感情をストレートに表現する前に、まずは別のことばに置き換え文章にしてみます。綺麗に内容をまとめる必要はなく、自分で把握ができれば問題ありません。
文章に書き出すことで、「こう言われたからこう感じた」「こんなことがあったからこう思った」などの、感情が起こった原因にたどり着くことができます。感情が沸き起こった瞬間からの流れを把握することで、自分の感情のくせを把握できるのです。
表情、ボディランゲージをコントロールする
人間は、怒りの感情に囚われているときは、特に態度に出やすくなるものです。気づかぬうちにイライラして机を指で叩いたり、言葉遣いが荒くなったりするなど、身に覚えがあることも多いのではないでしょうか?
こうした態度が相手に伝わると、ことばにせずとも不快感を与え、印象もとても悪くなり、コミュニケーションを取ることに対し壁を作る結果となります。怒りを感じたときこそ、態度に表さないような意識が必要なのです。
アンガーマネジメント
怒りの感情は、相手に対しての攻撃性が強まったり、自分を責めるなどの悪影響があったりする一方で、怒りをバネにモチベーションを高めることもできます。
しかし、攻撃性ばかりが目立ってしまうと、自分にとっても組織にとっても悪影響を与えることは言うまでもありません。そこで、「アンガーマネジメント」に注目してみましょう。
アンガーマネジメントとは、沸き起こった怒りの感情をコントロールするためのスキルで、代表的な方法には以下のようなものがあります。
6秒黙る
たとえば、相手が自分に対して何か腹の立つような発言をしたとします。それを聞いたあなたは、怒りに支配されて反射的に反論を口走ってしまいそうになりますが、そこでぐっと我慢をしてみるのが一つの方法です。そして、そのまま6秒間ほど口を閉じてみましょう。
人間の怒りとは非常に瞬間的なもので、この6秒の間ぐっとこらえると理性が戻り、心がすぐに冷静になります。その後は、相手のペースに乗せられず、穏やかな気持ちで対話ができるでしょう。
自分の怒りのパターンを知っておく
自分はどんなことを言われ、何をされたら怒るのか、自分の中の怒りのメカニズムを知っておきましょう。そのためには、怒りの感情が起きたときにその経緯を書き出しておきます。
少し時間をおいてから振り返ったときに、その怒りは自分にとって必要なものだったかを考えてみます。必要のない怒りは自分にとって意味がなかったものと考え、次に同じパターンが発生したときには、心の中で処理してしまいましょう。
感情の発生をパターン化しておくことで、怒りの感情を引きずらずに処理することができます。
怒っている対象を特定する
怒りの感情が起こったときには、自分が何に対して怒っているのかを明確にしましょう。理由を考えると、自分の目的は一体何だったのか、予想や期待と異なったために怒りが湧いてきているのかなどに気づくことで、怒りは緩和されて対応策や新たな選択肢が出てきます。
対象さえわかり対処の方法が出てくれば、あちこちに当たり散らかしたり、長々と怒りの感情にと囚われたりすることを防ぐことも可能です。
感情のマネジメントはリーダーの必須スキル
以前は、感情はビジネスの場に持ち込むものではないとされていました。しかし、自分の感情をコントロールしたり、他者の感情を思いやったりすることは、人間関係を円滑にすることはもちろん、ビジネスでも非常に重要です。
とはいえ、感情とは自分の意志で押さえられるものではありません。一日の間でも、朝は憂鬱で何をしても落ち込みやすかったり、午後になると積極的になってちょっとやそっとのことでは落ち込まなくなったり、しかし夜が近づくとイライラが募り言動が粗暴になったりするなど、人によってもさまざまです。
そのような自分の特徴を知ったリーダーは、たとえばミーティングはできるだけ明るいうちに行い、夜はコミュニケーションをあまり取らないようにするなどの工夫をすると良いでしょう。
自分の感情の動きに合った組み立てをすることで、余計なトラブルを回避できる可能性が高くなります。そして、メンバーの感情の状態をある程度把握しコミュニケーションを適切に行っていくことで、理想的な感情マネジメントを駆使したリーダーシップを発揮できるのです。
感情のマネジメントは部下のモチベーションをアップさせる
EQの高い人は、疲弊している仲間、悩んでいる部下に声をかけるなどを積極的に行っています。声をかけることで、「悩みに気づいてもらえている」と安心を与えることもでき、自然と相談もしやすい環境が構築されていくでしょう。
仕事で行き詰まりを感じている部下には、自身に合った適切な目標を立てたり遂げさせたり、失敗することを恐れるような環境から、チャレンジがしやすい環境へと変化させるなどの方法が有効です。安心して働ける環境へと導くことで、モチベーションをアップさせることができるでしょう。
組織のモチベーションを下げてしまうリーダーの特徴
反対に、組織のモチベーションを下げてしまうリーダーもおり、決定的な特徴があります。
たとえば、ちょっとしたことでも激昂したり、すぐに部下を叱責したりするリーダーは、組織を無意味に緊張させ疲弊を招くでしょう。
感情はEQを鍛えることでマネジメントが可能
EQは、生まれ持った要素ではなく、成長の段階で鍛えられていく能力です。特に、幼い頃に両親から無償の愛をたっぷりと受け取ることが大切といわれています。
しかし、生まれつきの能力が大きく影響すると言われる「IQ(知能指数)」とは異なり、大人になってからでもEQは鍛えることが可能です。EQのトレーニングは決して難しくはありません。
たとえば、朝は必ず全員に挨拶する、自分の中に生まれた感情と向き合い原因を探って感情の方向性を変えるなど、普段の生活の中に少し取り入れるだけでも十分に鍛えられるのです。
EQは、幼少期に親の愛情に包まれて成長した人が高い値を持っているといわれています。しかし、EQはIQ(知能指数)のように、持って生まれた能力が大きなウェイトを占めるものではなく、後天的に鍛えて伸ばすことが可能なスキルなのです。
難しいトレーニングは必要がなく、企業での計画的な研修や日々の生活の中に要素を取り入れることで伸ばしていくことができます。
まとめ
EQのスキルを高め、感情のマネジメントができる社員を育成するためには、当社グロースウェルが提供する「EQGW」の導入がおすすめです。
EQGWは、組織と自分との感情を見える化して分析、具体的な行動指数を提示することで、自分の生かすべき強みを発見することができる研修です。個人面談や詳細分析などでフィードバックを行い、感情をコントロールする前向きな行動特性を高め、EQの効果的活用につなげていくことができます。
たとえば、怒りっぽく組織を委縮させてしまうリーダーに研修を行うことで、自身の感情への鈍感さに気づかせるなど、感情のコントロールにつながる第一歩を歩き始めることにも成功しています。すべてオンラインで対応が可能な研修です。貴社でのEQの活用を目指し、EQGWの導入をぜひご検討ください。