EQとは、「こころの知能指数」と呼ばれる、数値化できない概念です。近年ビジネスでも必須の能力であると注目されています。
今回は、EQの概要やEQの高い人の特徴、EQの高さがビジネスにどのような良い影響をもたらすかについて解説しています。
目次
EQとは何か
EQとは「Emotinal intelligence Quotient」の頭文字を取って略した言葉で、「こころの知能指数」と和訳されています。アメリカの心理学者であるピーター・サロイ氏とジョン・メイヤー氏によって1990年に提唱され、その後ダニエル・ゴールマン氏の著書「Emotinal Intelligence」によって広く知られるようになりました。
ここでは、EQとはどのような能力なのか具体的に紹介していきます。
感情をコントロールする能力
EQとは、自分の感情をコントロールする能力です。
たとえば、ビジネスにおいて取引先とのやり取りの中で発生した怒りの感情を、そのままそこで爆発させてしまえば、その後の企業間の関係にも影響するかもしれません。そのような場面で、EQの高い人は、自分の感情を状況に合わせコントロールし、感情の爆発を防ぎます。
ビジネスシーンにおいても、業務の遂行が円滑化し、生産性の向上などを含めた企業への貢献度が高いのが、EQの高い人材の特徴です。
EQとIQの違い
EQよりも馴染みのあることばに「IQ]があります。
IQとは、「Intelligence Quotient」を略した言葉で、合理的・論理的な思考力や、言語能力の高さなど、いわゆる「頭の良さ」を示す指数です。IQの高い人は学歴も高く、仕事の能力も高いと思われがちです。
しかし、ビジネスにおいては、必ずしもIQの高い人材が良い成果を残しているわけではありません。なぜなら、仕事には必ず人間関係が付いて回るからです。
そういった状況からも、ビジネスを成功に導くのは、人と人との関係を良好に保てる、EQの高い人材といわれるようになりました。
トレーニングで高められる
IQは先天的な能力が重要と考えられています。しかし、EQは後天的に習得するものであるため、トレーニング次第で能力を伸ばすことが可能です。
EQは、自分の感情をコントロールするばかりでなく、周りの人たちの感情にも働きかけ、協力を得られる能力です。人は感情に左右されることが多く、何気ない一言が相手を深く傷つけてしまうなどの失敗も、多くの人が経験しているでしょう。
しかし、EQを高めることで、相手の感情に敏感になり、失敗は少なくなります。自らの能力を発揮するためにも、EQのトレーニングは大切なのです。
EQが高い人の特徴
EQの高い人は、周りの人に好印象を与える特徴をいくつも持っています。その一例を挙げてみましょう。
人間関係が良好
EQの高い人は、思いやりの心を持っているので、優しい人として周りの人に好かれ、信頼されています。困ったときにはお互いに助け合える、信頼関係が構築されています。
ストレス耐性が高い
EQの高い人は、相手の指摘を真摯に受け止める一方で、切り替えも早いため、ストレスに対しての耐性が高いことが特徴です。失敗はどんなに気を付けても起きてしまう、ときには避けられないものです。
自分の失敗でも、部下の失敗でも、反省すべき点は反省して、次の行動に移れるのがEQの高い人です。フィードバックやフォローを行い、再発防止に努めます。
逆に、ストレス耐性が低いと、相手の話を真正面から受け止めた結果、引きずってしまい次の行動に移れない場合があります。
人の話を良く聞く
EQの高い人は、人の話に真摯に耳を傾けることが得意です。相手の感情を理解するために、「今、どんな気持ちで話しているのか」を考えながら、終わりまで話を聴きます。
しっかり聞いていることを示すサインとして、相槌を打ったり、頷いたりします。話を聴きながら、仕草や表情の変化も意識していることも特徴です。
素直
EQの高い人は、自分のことを客観的に見られ、自分の強みや弱みも熟知しています。指摘を受けても前向きにとらえるので、ストレスも感じにくいのが特徴です。失敗した時も、言い訳をせずに素直に認め謝ります。
何事にも柔軟
EQの高い人は、一つの考えに固執せず、物事を柔軟に受け止めます。生活環境や社会情勢など、何を一つ取っても、永遠に変わらないものはありません。そのため、変化に対して適応することをストレスと感じることもないのです。
また、自分と異なる意見を持っている相手に対しても、否定せずに柔軟に受け止めます。新しい意見を知識として取り入れられるのです。
EQを構成する能力
EQは、以下の4つの能力によって構成されています。それぞれが機能することで、感情が調整でき、人間関係を良好に保ちます。
感情の識別
感情の理解とは、自分の中に浮かんだ感情がなんであるかを理解することです。「今、自分は焦っている」「動揺している」「怒りを感じている」などを認識することが、感情の識別に当たります。
感情の理解
感情の理解とは、なぜ自分がそのような感情になっているのかを理解することです。「持ち物を忘れて来たので焦っている」「叱られたから動揺している」「嘘をつかれたから怒っている」などを認識することが、感情の理解に当たります。
感情の利用
感情の利用は、自分の感情を、その場で問題解決に適する形に作り直すことです。「忘れ物は店で買えばいい、大丈夫」「叱られたのは、自分の成長が期待されているからだ」「嘘をついたのは、自分を悲しませないためかもしれない」など、感情を作り直すことが、感情の利用に当たります。
感情の調整
感情の調整は、上記3つを経て、最終的に自分の感情を調整することです。「次は忘れないように、前の日にチェックしよう」「叱られたことに感謝しよう」「自分を傷つけない配慮を受け取ろう」などが、感情の調整に当たります。
ビジネスでEQが必要な理由
ビジネスで求められるのは、頭の良さだけではありません。それ以上に、良い人間関係を作れる力や、人当たりの良さに代表される「人柄」が重要視されています。
部下や取引先とのコミュニケーションを再考させるためには、自分や相手の感情に敏感になり、適切な振る舞いをすることが求められます。自分の言動によって、相手がどのような感情を持つかまで考える必要がありますが、これらはEQを高める過程で自然と身に着くものです。
それらを前提に、ビジネスでなぜEQが重要視されているのか解説しましょう。
ビジネス環境での人間関係は生産性に直結する
EQの高い人材は、人間関係がおしなべて良好です。
人間関係を良くするためには、相手への関心を持ち、尊敬の念を持って接する必要があります。リスペクトされた相手も、自分に対して好意的な態度を取ってくれると考えられるため、良い信頼関係が構築できるでしょう。
また、EQの高い人は、企業の生産性アップに必要な要件を冷静に見極められます。企業風土などにとらわれず、感情を適切にコントロールして見極めを行えば、必要な施策や補強を実施し、生産性向上に向かえると期待できます。
このように、取引先とも良い関係が築き、仕事のあり方を冷静に分析することで、企業の業績アップや自分自身の成績にもつながるでしょう。
感情的な行動は信頼を失う
仲の良い友人の何気ない一言に、怒りがこみ上げ、平静を保てなくなった経験はないでしょうか?
人間の感情の中でも、特に「怒り」の感情には注意しなければなりません。どんなに温厚な人であっても、ひとたび怒りの感情に支配されれば、取り返しのつかない事態になることがあるからです。
ビジネスにおいても、「怒り」は失敗の原因は怒りにあることが多いと考えられるほど、破壊力を持った感情です。しかし、感情はコントロールできます。EQを高め、その場で必要な感情を生み出すことで、感情の爆発を防げるのです。
ハラスメントを防止する
相手が望まない気分を悪くする言動をとることをハラスメントと言いますが、EQの高さは、ハラスメントの防止に寄与します。ハラスメントの中には、発言者が無意識に口にしているシチュエーションも少なくありません。
しかし、相手の感情に寄り添うことが出来る人であれば、相手が望まない、気分を害する発言を抑えられます。ハラスメントの防止によって、職場環境も良好に保たれるでしょう。
リーダーシップを高める
EQは、リーダーには欠かせない能力です。リーダーは部下との日常的なコミュニケーションが求められ、部下の感情についてもよく把握しておかなければ、部下の気持ちに反した判断をし、信頼関係が崩れてしまうことも考えられます。
無意識にハラスメントを行ってしまうこともあるかもしれません。部下がついてこなくなってしまっては、リーダーとしては失格です。
このような事態に陥らないよう、リーダーは部下の感情を良く知り、気持ちの良い職場環境を整える必要があるのです。
EQを高める方法
ビジネスにおいて、EQがいかに重要かを解説してきました。では、EQを伸ばすためには、どのようなトレーニングをすればよいのでしょうか?
ここでは、簡単でありながら、効果を発揮するトレーニングを紹介します。
毎日全員に挨拶する
自分はあまり人とのコミュニケーションが得意ではないと考えている人は、まずは難しく考えずに、全員に朝の挨拶をするように心がけてみましょう。
コミュニケーションの始まりは、笑顔での挨拶です。徐々に慣れ、距離が近づいたと感じた人には、その他にも何か一言付け加えてみると良いでしょう。
感情の日記をつける
自分の感情を適切にコントロールするためには、まず自分の感情を理解しなければなりません。そのために一番有効な方法は、日々の日記をつけることです。
一日のうちに沸き起こった感情と、その時に起こった事柄を書き出すことで、自分自身の感情の流れが見えるようになります。また、その当時には感情的になってわからなくても、時間をおいて客観的に捉えると、違った発見があるかもしれません。
今までは認識していなかった、自分の意外な面にも気づけるため、日記には大きなメリットがあります。人には話せないような出来事も、日記であれば吐露できるので、日記を活用してみましょう。
相手の良いところを見つける
相手の良いところを見つけるのは、相手への尊敬に繋がります。そのためには、相手の話をしっかりと聞く必要があるのです。まずは、相手の話し方をよく観察してみましょう。
「わかりやすい話し方をする」「上手にまとめて話す」などのポジティブな面が捉えられたら、その人の他の面にも目を向けてみます。
率先して人の手伝いをしている、持ち物のセンスが良いなど、興味を持って相手を見ていれば、相手にもそれが伝わり、自分にとっても良い影響を与えるようになるでしょう。
本を読む
本を読むのも、EQを高める上で効果的です。ビジネス書籍などではなく、特に小説をおすすめします。
小説では、登場人物の行動や感情の動きが描かれており、それらの機微を感じるためにも向いています。長い物語を読むのが苦手な方は、短いものから始めると良いでしょう。
EQ研修を受ける
企業でEQ研修や講習会を実施するのも大切です。EQについて知らない従業員には、まず「EQとは何か」から学ぶ必要があります。
広くEQを認知させてから、個人のEQを測定し認識を促し、研修を実施していくのが効果的です。EQ研修はさまざまな企業・団体が開催していますので、インターネットで検索してみましょう。
まとめ
ビジネスでは、コミュニケーション能力が、成否のカギを握ることも少なくありません。自分の感情の調整能力の高さや、相手への気遣いが、コミュニケーションスキルに大きく影響します。
しかし、実際に自分がどの程度のスキルを持っているか、またどのような性格を持った人間なのかを把握している人はいません。そこでおすすめしたいのが、当社グロースウェルが提供する「EQGW」の受検です。
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EQGWを導入した企業からは、「怒りっぽい激情型の上司へのフィードバックの結果、怒りをコントロールできるようになった」という報告もあります。
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