EQは「心の知能指数」と呼ばれ、自分の感情をコントロールしたり、他者の感情を鋭く察したりする能力です。発達障害を持っている子どもも、EQのトレーニングをすることで、周りの人と調和して社会を営む能力を育てることが可能です。
今回は、EQが高い人の特徴や、発達障害を持った人のEQの育てについて紹介します。
EQとは
「EQ」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?EQとは、自分の感情を理解しコントロールしたり、相手の感情を察して対応したりする能力です。EQが高い人は良い人間関係を築き、仕事やプライベートでも充実した人生を送れるといわれています。
EQは「こころの知能指数」
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」を略したことばで、1990年にアメリカの心理学者であるピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏が提唱した概念です。日本では「こころの知能指数」と訳されています。
EQの高い人材は、状況に合わせて自分の感情をコントロールでき、人間関係で無用な摩擦を生むことなく、良好な関係を築くことが得意と考えられています。
EQとIQの違い
EQよりも、「IQ」の方が耳にする機会は多かったのではないでしょうか?
IQとは「Intelligence Quontient」を略したことばで、知能の高さや思考の速さ、合理性など、いわゆる「頭の良さ」を示す概念です。能力の高さ・低さは、先天的な要素が強いとされています。
このように、IQが合理性を表す指標であることに対し、EQは感情を表す指標であることから、この2つはまったく異なる能力を表すといえるでしょう。
EQは誰もが持っている能力
EQは、感情を持った人間であれば、誰もが生まれながらに持っている能力です。IQとは異なり、遺伝的な影響は少ないと考えられており、幼少期の環境や、その後の過ごし方によって、EQの伸びは大きく異なります。つまり、トレーニングをすることによって伸ばすことが可能な能力です。
EQが高い人の特徴
高いEQを持った人には、共通してみられる特徴があります。ここでは、その代表的な特徴を紹介します。
考え方が柔軟
EQの高い人は、柔軟な考え方を持っています。
固定観念に縛られることもなく、自分の考えを人に押し付けることもしません。価値観の異なる人の話を聞いても「そういう考え方もあるのだな」と受け入れます。
また、状況に応じた行動も得意なので、想定外のトラブルに見舞われるときも冷静に判断し対応することが得意です。
共感力が高い
他者への共能力が高いのもEQの高い人の特徴です。
共感力とは、他者の気持ちを察したり、寄り添い同じ感情を持ったりすることをいいます。そのような行動をとれるのは、普段から周りの人に高い関心を持ち観察する習慣があるからです。
気持ちに寄り添うことは、周りの人との信頼関係を築く上でも大切なことなのです。
ストレスに強い
ストレス耐性が高いこともEQが高い人の特徴です。
たとえば、仕事の失敗で上司に叱責されることがあっても、自分の感情の動きを察してコントロールし、「次は成功させよう」とモチベーションを保ち続けることができます。また、理不尽な出来事に見舞われても、感情的に振り回されず冷静に対処できます。
優れた傾聴力
EQの高い人は、相手の話を良く聞き、相手が今どのような気持ちでいるのかを察することが上手です。
話を聞くだけではなく、声の調子や話す時の仕草などからも、相手が抱えている感情の手掛かりを探します。聞いている間は、申請に耳を傾けていることを示すためにも、相槌を打ったり、言葉を繰り返したりします。
異なる自分の意見があったとしても、相手の話は遮ったりせずに耳を傾けます。
素直
EQが高い人は、とても素直です。自分が失敗したり、誤った行動をしたりした際には、素直に謝ります。
また、失敗を人のせいにしたりせず、周りからの指摘も真摯に受け入れることが特徴です。アドバイスをもらい、改善のために努力します。
自分の強みと弱みを知っている
EQの高い人は、自分の強みや弱みを知っています。そのため、得意なことは率先して行動しますし、不得意なことは得意な人に素直に頼ります。
自分がより良くなるために、何を改善していくべきか知っており、取り組む姿勢を見せるので、周りからに信頼も得られます。このような行動が、組織全体を活性化させ、結束力を高めます。
EQが低い人の特徴
高いEQを持った人は、人間関係を円滑にします。逆に、感情に振り回されやすいEQの低い人材は、周りとの信頼関係を築くことが困難です。ここでは、EQが低い人の特徴を紹介します。
感情のコントロールが困難
EQの低い人は、自分の感情を抑えることが得意ではありません。そのため、状況や場面を考えずに自分の感情をストレートに表現します。
特に、「怒り」を抑えることが困難です。怒りを抑えることができないと、周りの人にネガティブな印象を与えることになり、人間関係が悪化します。
共感力がない
共感力がない人は、相手の気持ちを察することができません。相手や相手の価値観に興味を持つこともできず、しばしば自己中心的な発言をすることもあります。
このような行動から、結果的に「思いやりがない」と取られ、良好な人間関係を築くことが難しくなります。
自己中心的
自己中心的な人はチームワークができず、自分の考えで物事を進めようとします。気の乗らないことは断ったり周りに押し付けたりし、不機嫌になると、感情を抑えることなく当たり散らします。
そのような人と仕事をしたいと思う人は少ないことからも、人間関係を築くのが難しい人と思われてしまうでしょう。
喜怒哀楽が激しい
喜怒哀楽が激しいことも、EQの低い人の特徴です。自分の感情を冷静に分析したり、理性で捉えたりすることが不得意で、コントロールできずに爆発させてしまいます。
機嫌の良し悪しもはっきり表れるため、周りの人は気を遣って付き合わなければならず、信頼関係を築くことが難しいでしょう。
他者の失敗を許せない
EQの低い人は、ほかの人の失敗を許せず批判的で、徹底的に責め立てます。その割に自分には甘く、自分が失敗したときは人のせいにしたり、ごまかしたりもします。
EQと発達障害の関係
EQは、自分の感情をコントロールし、相手の感情を察する能力です。発達障害を持っている人の中には、自分や相手の感情に鋭くなかったり、興味を持てなかったりする人もいます。
しかし、EQはトレーニングをすることよって伸ばすことが可能な能力です。
発達障害とは
発達障害とは、生まれつき持っている脳機能の偏った発達と、それによる周りとの関わりのミスマッチで、社会生活に生じる困難や障害のことです。
大人になってから「発達障害」とわかる理由
子どもの頃は、「わがまま」「自己中心的」などと流されてきたケースでも、大人になってから改めて、コミュニケーションの不器用さから発達障害が判明する場合があります。社会に出てからの方が、仕事をスムーズに進捗させる「人間関係」の面を評価されるからです。
学校では、環境や周囲の友人関係に守られて、感情への関心無関心も「個性」として見えることが多いと考えられます。しかし、社会に出るとさまざまなルールの中で、自分の行動や感情のコントロールが必要です。
相手に対して思いやりや気配りの気持ちを持っていないと、人間関係はうまく作れません。そこに至って、初めて「発達障害」と気づくケースがあるといわれています。
発達障害のある子どものEQを意識した子育て
とはいえ、発達障害は「多様性」の中の一つであり、「周りの人と違うから良くない」などと考える必要はまったくありません。人間の体はそれぞれまったく異なり、同じ人など一人もいないのです。
以前の社会では、処理能力が高く合理的な考え方を持つ、IQの高い人材が、企業に利益をもたらすと考えられてきました。しかし、近年では頭の良い人材が成果を表すのではなく、そのような人材を采配するEQの高い人材こそが、成果をあげると考えられるようになりました。
EQは、トレーニングによって後天的に向上させることが可能な能力です。自分の心の動きに関心を持ったり、相手を思いやったりできる人間こそ社会でも活躍できる人材であり、幸せな人生を送ることができます。
感情を意識したコミュニケーション
発達障害の人のEQを向上させるには、コミュニケーションにおいて感情を表したり、意識させたりすることばを用いることが効果的だと考えられています。
たとえば、部屋を散らかしっぱなしで片づけない子どもには、「きれいに片付けると気分がいいね」などと伝えてみると良いでしょう。また、競争で負けて泣いてしまった子どもには「●●ちゃんに負けて、悔しいね」などと励ましてみます。
今起きていることと、本人が持っている感情を紐づけることが、自分の気持ちに気付くためのヒントとなります。続けていくことで、周りの人の感情にも興味を持ち、気付くことができるようになるでしょう。
賢いことが大切なことではない
賢いこと、つまりIQが高いことが、その人の幸せにつながるわけではありません。自分や周りの人の感情を理解し、人と上手に関わっていくことが、その人の人生を広げ厚みを持たせ、幸せを運びます。発達障害は多様性の一つと捉え、より生きやすくするためにも、EQの向上を手助けしていきましょう。
発達障害を持った子どものEQを向上させる子育て
発達障害を持った子どもが生涯幸せに過ごすためにも、EQの向上はなくてはならないものです。次のような子育てが、EQをより向上させます。
自分で考えて行動する習慣づけ
子どもが自分で考えて、自主的に行動する習慣をつけましょう。
たとえば、夕飯を食べたら食器を下げ、お風呂に入る約束になっているとします。大人が声をかければ簡単ですが、そこはぐっとこらえ、指示する前に子どもから自分から行動するように見守りましょう。
自主性が高まると、自分で見通しを立てる能力が育ち、試行錯誤の中でよく考えて行動する習慣がつきます。そのためにも、失敗を叱らないようにする、干渉しすぎない、成功体験を重ねて行くなどに気をつけ、大人も見守る習慣を身につけていきましょう。
絵本の読み聞かせ
絵本をたくさん読み聞かせてあげましょう。
教育的な示唆のある本を読むのではなく、子どもが好きで、最後まで聞いていられるくらいの長さのものがおすすめです。大好きな絵本を読み聞かせすることで、大人が子どもを大切に思っていることが伝わり、子どもの自己肯定感が上がります。
また、物語に没入し、登場人物の立場になることで、子ども共感力の向上を期待できます。
好きなことを応援
子どもが興味・関心を持っていることを応援しましょう。大人から見たら無謀なことでも、応援されることで自己肯定感が上がり、困難に打ち勝とうとするチャレンジ精神が成長します。
人と触れ合う機会を作る
自分や相手の感情に興味を持たせるには、人と関わることが重要です。関わる中で自分の中に生まれる感情や相手の様子を目の当たりにすることから、感情を推測するトレーニングになります。
また、人と関わることで、社会では自分の意思だけを通すのではなく、折り合いをつけることが大切であると学ぶ機会が得られます。
ありのままの子どもを受け入れ肯定する
ありのままの子どもを受け入れ、良いところも悪いところも肯定しましょう。大人に受け入れられることで、自分をいう存在に自信を持ち、好きになります。
自分を好きになれないと、常に人と比べてしまい、自分に自信が持てなくなります。
自己肯定感が高ければ、自分の行動に自信を持ち、躓くことがあっても、成果が出るまでチャレンジする粘り強さが得られるでしょう。
まとめ
EQは概念であり、目で見ることはできません。しかし、当社グロースウェルが提供する「EQGW」を受検することによって、個人のEQを可視化することが可能です。
EQGWでは、個人のEQを詳細に調査し、その人が持つ感情のスタイルを分析します。調査結果から具体的な行動指数の提示を行い、面談でのフィードバックを行い、EQを高めるための行動へとつなげていきます。
利用者の中では「感情が数値で見える化されたことで強みに気づけた」「ポジティブな感情をもつようになった」など、自分を理解するきっかけになったという声が多く寄せられています。自身の強みや弱みを知り、自分の感情のクセを仕事やプライベートで生かしていくためにも、ぜひ「EQGW」の導入をご検討ください。