私たちの生活と切っても切れできない「感情」。「楽しい」「嬉しい」など、心が浮き立つポジティブな感情もあれば、哀しみや怒りなどの、心の底でうごめくようなネガティブな感情もあります。
この感情があるからこそ、人間は豊かに生きていくことができるのですが、果たして人間はどのような感情を持っているのでしょうか?
目次
感情とは
感情とは、人間や動物が物事に対して持つ気持ちであり、人間にとって切り離すことのできない不思議な存在です。
感情は、喜びや怒り、哀しみ、驚き、恐怖などがあり、自分の意志とは関係なく湧き出してきます。思考や認知と密接に関わっており、身体とも相互作用で成り立っていると言われています。仕草や表情にも自然と現れる非言語コミュニケーションの一部です。
表情は意識して動かしているのではなく、コントロールするためには訓練が必要となります。
脳の最深部からやってくる
感情は、脳の側頭葉の内側にある、海馬の内前方で左右対称に存在する「偏桃体」が作り出しているといわれています。
偏桃体とは、脳の左右にあるアーモンドのような形をした神経細胞のかたまりです。偏桃体では、見たものや聞いたものから、それが生存に関わるものかどうかを瞬時に判断しています。
たとえば、命を脅かすような生き物を目の前にしたら偏桃体が興奮状態になりとっさに飛びのき、美味しそうなものを目にしたら食欲がわいてきます。偏桃体が興奮状態から抜け出すために、脳の前方の領域にある「前頭前野」と呼ばれる部位が、自動的に偏桃体の興奮を抑え、正常な状態に戻ります。
どのように役立つか
恐れなどの感情は危険を察知したときに逃げるよう促したり、怒りは身を守るためにエネルギーを蓄え強くさせたりします。また、理論だけではうまく説明ができない「予感」などの要素を導きます。
万端の準備で臨んだプレゼンテーション、絶対に失敗することはないと理屈ではわかっているにもかかわらず、人間は言いえぬ不安に焦りを感じるものです。「うまくいかないかもしれない、悪い予感がする」などの不安の感情が湧くことで、さらに入念に下準備をし、事なきを得るケースもあるでしょう。
また、感情が起きることによって、出来事を記憶することが容易になります。「あのとき、あいつがこんなことを言ったから、みんな大爆笑したな」など、楽しい気持ちが紐づいて忘れにくくなるのです。
人により感情は異なる
同じ出来事に遭遇しても、誰もが同じ感情を抱くわけではありません。経験や考え方、捉え方などがフィルターとなり、感情が生まれてくると考えられています。
たとえば、仕事でミスをして叱責された場合においても「また怒られて悲しい」「自分のためにここまで言ってくれるなんて嬉しい」「また怒られるのが怖い」など、人の数だけ違った捉え方が生まれるでしょう。
また、感情には文化的依存性が高いといわれ、アジアの文化圏では他者を煩わせないよう感情を隠す傾向があり、また西洋の文化圏ではポジティブな感情もネガティブな感情も隠さずオープンにすることが一般的なようです。
人間が持つ感情の種類
人間はさまざまな感情を持っています。感情が豊かな人もそうでない人もいますが、喜怒哀楽はすべての人間が持っている感情です。
ここでは、代表的な感情について解説します。
喜
「喜」とは「嬉しく思うこと」や「おめでたいこと」を意味します。何かしらを自分が為した結果として生じる感情であり、自分以外の誰かの行動だけによって起こる感情ではありません。
たとえば、「自分の作品が褒められた」や「自分がたくさん勉強した結果、資格が取れた」というときに起こる感情です。この感情を得たい場合には、積極的な行動や目に見えた努力が必要となります。
怒
「怒」は「憤り」や「不快である」などの感情を意味しています。自分を含む誰かの行動やことばに反発するもので、誰もいない場で、何も考えていなかったのに突然起こったり消えたりするものではありません。
また、一人では発散し難く、あまり長続きしない感情でもあります。これらの感情は「何故か理不尽に怒られたとき」や「嫌がらせを受けたとき」などに起こるものです。
哀
「哀」は「悲しみ」や「嘆き」、「後悔」などの感情を表しています。「哀」の感情は主に何かを失ったとき、またはその後に生まれ、たとえば、「誰か親しい人が亡くなったとき」や「大切なものを失ったとき」に起こる感情です。
基本的に現在から過去に向かう感情で、現在から未来に向かうことはありません。
楽
「楽」というのは「愉快であること」や「満足していること」を指しています。前述の「喜」に近いニュアンスの感情のようにも見えますが、実際は異なるものです。
「喜」はある意味で能動的な感情といえるのに対して、「楽」は受動的な感情といえるでしょう。「楽」は誰かの行動や、予想外の行動によって起こり得る感情です。たとえば「ふと出た自分のことばが、思い返してみるとおもしろかったとき」や「落語を聞いていて笑っていたとき」などに起こった感情が「楽」の感情といえます。
愛
「愛」が意味するのは「慈しむこと」です。愛は、友人間での愛情や男女の間での想い、子どもに対する慈しみ、そしてものを大切にする気持ちなど、さまざまなものに対して生まれる感情です。
「愛」の感情があるからこそ人間はこの地球上に繫栄し、進化を遂げたといっても過言ではないでしょう。
憎
「憎」というのは「誰かを恨むこと」を意味しています。「怒」は相手の行動に対する感情であるのに対して、「憎」は相手そのものを嫌悪し、排除をしたい感情です。大きい括りが対象となるために、この感情が消えるまでに長い時間がかかり、消えたとしても苦手意識が残ってしまう場合があります。
一時の感情でないぶん、しっかりと向き合うことが重要です。
ポジティブ感情とは
ポジティブ感情とは、喜びや愛情、安らぎ、興味など、良い気分と感じられる感情のことをいいます。物事を前向きに捉えて積極的になったり、行動や思考の幅が広がったりするといった効果を持ち、クリエイティビティの原動力ともなる感情です。
ポジティブな感情によってネガティブ感情を消し、回復力や対処力を向上させるとともに、幸せを向上させるといわれています。そのため、人間はできるだけ楽しい気持ちで生きられるように、ポジティブな感情を得られるような行動をします。
ポジティブ感情を持ちやすい人
ポジティブ感情を持ちやすい人は、普段から笑顔を絶やさず明るい雰囲気で前向きな行動を心がけています。人の失敗を責めず、自分の失敗も糧にし、自分らしく振る舞うことも特徴です。
また、他者を楽しい気持ちにさせる言動を自然に取ることができ、口にしたことは実行する有言実行の姿勢も見られます。
ポジティブ感情の効果
ポジティブ感情には、次のような効果があります。
視野を広げる
ポジティブ感情を持っていると、視野が広がり様々なチャンスを発見することが可能です。また、物事に対する考え方が柔軟で寛容になります。
モチベーションをアップさせる
ポジティブ感情を持つことで、仕事や課題に対してのやる気や前向きさがアップします。自分がプラスの感情を持つことで、他者にも良い影響を与え、チーム全体の士気も上がり、さまざまなアイデアが湧いてくるようになります。
自己肯定感が上がる
ポジティブ感情は、自己肯定感をアップさせるといわれます。
「自分のせいで失敗してしまった」と落ち込んでも、「失敗はしたけれど、その分自分は成長できた」などの切り替えがスムーズに行えることで、落ち込みの時間を短くし、前向きに歩き出すことができるからです。
ひとたび問題が起きたときに、自分がポジティブな面を見て行動していることが大切ですが、普段からそのような考え方をしている人は、ポジティブ感情を持つことに慣れています。
人を引き付ける
ポジティブ感情を持っている人は、気配りを忘れず笑顔を絶やさないようにしていることが多く、自然と周りに人が集まってきます。前向きに楽しむ姿勢は組織にも良い影響を与え、全体にポジティブな雰囲気が醸成されます。
ネガティブ感情を消し去る
ポジティブ感情の効果によって、ストレスや不安、焦りなどのネガティブ感情が打ち消す効果があるといわれています。
ネガティブ感情とは
ネガティブ感情とは、ポジティブ感情とは逆の怒りや悲しみ、不安や恐怖、孤独などの感情です。それは人間を危険から守るためのサインでもあり、たとえばイライラが募っているときには、リラックスが必要と教えてくれいます。
ネガティブ感情を持ちやすい人
ネガティブ感情を持ちやすいのは、自分にあまり自信がない人が多く、他者と比較し劣等感を持ちやすい人といわれます。他者の目線を気にしすぎる人は、悪口を言われたくない気持ちから、他者の目線ばかりを気にしてしまいがちです。
また、他者に頼ることが苦手で、心を開いたり信頼関係を築いたりすることが困難です。その結果、自分に否定的で前向きになるきっかけをつかむことができません。
ネガティブな感情の効果
ネガティブ感情は、大きなストレスがかかることを察知して起きる、いわばアラートのような感情です。早くこの場から離れないと危険であることを「不快感」として知らせており、その状況から離れさせようとします。
また、ネガティブ感情はストレスとしても現れるため、「逃げる」「解決する」などの対応をしない限りは増加するほか、血圧や心拍数の上昇など、身体に与える悪影響もあります。
ネガティブ感情は、決して悪いものではありません。誰もが少なからず持っており、受け入れてうまく付き合っていくことが重要です。
プラスに置き換える考え方
ネガティブな感情に支配されていると感じる人は、持っている感情を別のことばに置き換えてみましょう。たとえば、「劣等感を感じやすい」人は、「他者の良いところを見つけられる」人です。
「何をやってもうまくいかないと思う」人は、「いつも現状をより良くしようと思っている」人ではないでしょうか?ことばを置き換えるだけでも、受け止め方は大きく変わります。
また、イライラするとき、何かに気持ちをぶつけたいときは、運動をして気分転嫁することもおすすめです。走ったりジムで発散したりするのも良いですが、少し散歩に出かけるだけでも気持ちが切り替わります。リフレッシュしてネガティブな感情を忘れてしまいましょう。
感情に振り回されるのは損
マイナスの感情に振り回されると、自分らしさを失い持っている能力も存分に発揮できなくなってしまいます。人間関係の悪化にもつながりかねませんので、振り回されないようにすることが重要です。
ここでは、そのための方法をお伝えします。
人と比べるのをやめる
「どうせ自分がやってもできない」など、人と比較して自分を卑下しても何も生まれません。それよりも、「自分がやり遂げたこと」を思い出してみましょう。自分だけではなく、他の人にも影響を与えたことがあったかも知れません。
そして、他者は「仲間」であり、「敵」ではないことを思い出しましょう。仲間の成功を妬むことはやめ、ほめることが大切です。その成功の秘訣を尋ねて、ひらめきを得るのも良いのではないでしょうか。
感情を切り離す
感情に浸っても、成功は近づいてきません。成功にまつわる感情以外はすべて切り捨ててしまうことも一つの手段といえます。
自分のゴールを用意して、そこへ向かって成すべきことを淡々と行いましょう。
原因を探り感情をコントロールする
ネガティブ感情に支配されそうなときは、ネガティブな感情のもとになっている原因を書き出し、探ることも有効な手段です。何が起きてネガティブな感情が起きたのかを知っておくと、次に同じことが起きた時も冷静な対処ができます。
感情に振り回されずコントロールすることで、周りに悪い影響を与えず人間関係も良好になっていくでしょう。
EQを高めて感情をコントロールしよう
自分の感情を知り、コントロールするには、感情の知能指数と言われる「EQ」を高めることが有効です。ここでは、EQについて紹介します。
EQとは
EQはアメリカの心理学者ダニエル・ゴールドマンによって提唱された「心の知能指数」を示す概念で、正式には「Emotional-intelligence Quotient」です。
人間は感情を発生させずに生きることは不可能ですが、高いEQを持っていることで、自分の感情を把握しコントロールすることが可能です。また、他者の立場に立って物事を考えることができるため、寄り添った対応を行い、信頼関係を深めることができます。
効率的なビジネスを行うためにEQは必須のスキルといわれており、特にリーダーが高いEQを持っていることは、企業にとって大きな武器にもなるものです。
自分や他者の感情を把握する
自分の感情の一日の動きやクセなどを知っておくことで、他者と適切なコミュニケーションが取れるようになります。特に、企業などの組織単位での仕事をする場合には、リーダーのEQが高いと、チームのメンバーの状況などを把握しやすく、円滑に運営できるといった点でも重要な役割を担います。
まとめ
EQのスキルを高め、感情のマネジメントができる社員を育成するためには、当社グロースウェルが提供する「EQGW」の導入がおすすめです。
EQGWは、組織と自分との感情を見える化して分析、具体的な行動指数を提示することで、自分の生かすべき強みを発見することができる研修です。個人面談や詳細分析などでフィードバックを行い、感情をコントロールする前向きな行動特性を高め、EQの効果的活用につなげていくことができます。
たとえば、怒りっぽく組織を委縮させてしまうリーダーに研修を導入することで、自身の感情への鈍感さに気づかせるなど、感情のコントロールにつながる第一歩を歩き始めることにも成功しています。すべてオンラインで対応が可能な研修ですので、御社でのEQの活用を目指し、EQGWの導入をぜひご検討ください。