社会的感受性とは?高い人・低い人の特徴と高めるための方法 | EQバンク
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2021.02.20

コラム

社会的感受性とは?高い人・低い人の特徴と高めるための方法

近頃よく耳にする「社会的感受性」とはなんでしょうか?

ビジネス上の関係において、コミュニケーション能力は非常に重要な役割を果たしています。コミュニケーションスキルは多くの要素を含みますが、中でも社会的感受性は重要な要素の一つです。

今回は、社会的感受性がビジネスやチームに与える影響や、それを高めていく方法について詳しく解説していきます。

社会的感受性とは「他者の感情を察知する能力」

コミュニケーションを取る男女

社会的感受性とは、他者の感情を察知する能力です。コミュニケーションにおいて、他者の感情を察知する能力は非常に重要です。相手の感情を読むことで、要求を理解したり、適切な対応ができるようになるからです。

他者理解

社会的感受性の根本は、他者を理解できることです。相手の立場になり理解することで、感情を的確に察知できるようになり、コミュニケーションを快適なものにすることができます

EQと同じ?

先ほどの説明を読み、社会的感受性はEQ(英:Emotional Intelligence Quotient)と似た概念なのではとお思いの方もいらっしゃると思います。EQとは、感情的知性のことで、

  1. 自己の自覚
  2. 自己の制御
  3. 社会的自覚
  4. 他者との関係の制御

という4つの項目で構成されています。

一方で、社会的感受性は他者の感情を理解する能力であるため、EQの中の「④他者との関係の制御」というスキルに当たります。つまり、社会的感受性はEQの中の1要素だと言えるでしょう。

社会的感受性の高さはIQよりも大切

喜ぶチーム

チームで仕事をする場合、IQが高い集団よりも、社会的感受性の高い集団の方が良い成績を残すことが判っています。

これまで、個人の能力を測る指標として「IQ」が最も優れているとされてきました。IQとは、情報処理能力の速さ、抽象的な思考を測る指標です。

数多くの研究により、IQの高さは個人の将来を予測する最も大きな因子になるとわかっていました。そのため、優れたチームもIQの高い人で構成された集団であるという見方が一般的だったのです。

しかし、最近の研究によるとチームの成績はIQでは決まらないということが、複数の研究により判明しました。

社会的感受性の高いチームは優れた業績を残せる

中でも代表的なのは、ウーリー氏らを筆頭とするマサチューセッツ工科大学、ユニオンカレッジ、カーネギーメロン大学のチームが共同で行った研究です。
実験では、約700名がチーム分けされ、問題を解決する作業を行いました。空間認知を使うパズルやディスカッションを交えた論理を問われる問題など、さまざまなタスクがありました。

その結果、終了時に最も成功率が高かったチームは社会的感受性の高い人が多いチームだったのです。

一方で、高いIQを持つ人がチームにいることは、成功率にさほど影響を与えないという結果になりました。IQテストでは高い問題解決能力を有していた個人は、集団の成績に寄与しなかったのです。

では、なぜ社会的感受性の高いチームは優れた成績を残すことができたのでしょうか?

「集団的知性」を高めることができる

ウーリー氏は、社会的感受性の高さが、チームの集団的知性を高めたからという見解を示しています。

集団的知性はGeorge Porらが提唱した概念で、集団で考えることで、偏見にとらわれない、より高い知性を発揮するという考え方です。集団は個人よりもはるかに知識を持っています。

さらに、知識はディスカッションすることで洗練され、最終的には個人の知識では不可能なほどの高いレベルの回答を出すことができるのです。

他者の視点に立つことができる

社会的感受性が高いチームは、平均的な社会的感受性のチームと比べてコミュニケーションを多く取っていました。また、一人ひとりが同じだけの発言権をを得ていました。

社会的感受性の高さがコミュニケーションの多さにつながる理由は、他者の視点に立つことができるからです。感情や考えることを理解しあいながら、自分を抑えて協調できるため、チームが上手く機能します。

社会的感受性の高い人・低い人の特徴とは?

握手するビジネスマン

では、どんな人が社会的感受性の高く、どんな人が低いのでしょうか?

社会的感受性が低い人の特徴

社会的感受性の低い人には、次のような特徴があります。

  1. 話を聞かない:話を聞かず、割り込んだりするような人は社会的感受性が低い人と言えます。話を遮ってしまうことが気分を害してしまう行為だということを察知することができないからです。
  2. 偏見が強い:偏見の強い人は考えを単純化しすぎてしまいます。単純化してしまうと自分中心に物事を考えるようになるため、他者の感情を理解しにくくなってしまいます。

社会的感受性が高い人の特徴

続いて、社会的感受性の高い人には次のような特徴があります。

  1. 会話から手掛かりを得ることができる:社会的感受性の高い人は会話から手掛かりをつかむのがうまいです。話の内容に限らず、声のトーンや大きさから手掛かりをつかみ、適切な対応ができます。
  2. 傾聴できる:相手の話を遮らず、受け入れ、共感しながら真摯に聴くことができます。

社会的感受性が高いリーダー

社会的感受性が高いリーダー

チームにおいて、指導力や決定権を持つリーダーは非常に重要な役割を果たします。ここでは、社会的感受性の高いリーダーがいることによるメリットを解説します。

グループ全体の認知力が上昇する

社会的感受性の高いリーダーは、多くの人に発言権を与えることで、全体を活発にします。その結果、話し合いが活発になり、解決力と生産性を高めることができます

また、一人ひとりが仕事にエンゲージしてる感覚が持てるため、ストレスも溜めにくくなるのです。

アイデアが生まれやすくなる

皆が発言できれば、それに比例して出てくるアイデアの数も増えます。また、社会的感受性の高いリーダーの下では心理的安全があるため、安心してアイデアを出すことができます

雰囲気が良くなる

全員が積極的に参加することでチームとしての団結力が高まれば、雰囲気が非常に良くなります。さらに、社会的感受性の高いチームは高い成果を残すことができるため、相乗効果でより良い雰囲気ができあがります。

社会的感受性を高めることはできる?その方法は?

社会的感受性を高める方法

ここまで、社会的感受性がどのようなスキルであるかについて解説してきました。社会的感受性は、個人が活躍することはもちろん、素晴らしいチームを構成するために不可欠な要素であることがお判りいただけたでしょう。

ここでは、共感力を通して社会的感受性を高める5つの方法について紹介します。

小説を読む

社会的感受性を高める一つ目の方法は、小説を読むことです。トロント大学の研究によると、小説を読むことが社会的感受性を高めるのに役立つことが判っています。

キース・オートリー博士らのグループは、大量の読書家を集めて性格テストを行いました。その結果、読書家で作者の名前を多く知っている人ほど、共感力のテストの点数が高く、表情やボディランゲージから他者の感情の状態を読むテストの点数も良いということが判明しました。

小説をよく読む人ほど、社会的感受性が高いという傾向があったのです。キース氏は、次のように総括しています。

「読者は、小説の内容を自分自身の体験としてシミュレーションすることができます。現実ではない世界を追体験することで他人の理解を深めることができるのです。特に人間関係が複雑な文学小説ではより大きな効果を得ることができます。絡み合うキャラクターの心理や物語を推論することで、共感力はより高まります。フィクションは、作者から読者へ受け継がれ、脳内にもう一つの現実を作ることができるのです。

特に文学小説の効果が高いとされていますが、エンタメ小説であっても十分に社会的感受性を高めることが可能です。

また、ストーリー性があるフィクションであれば、小説に限らずドラゴンクエストのようなRPGでも、社会的感受性を高めることができます。文学系が苦手なのであればよりライトな小説やゲームからチャレンジしてみると良いでしょう。

高い評価を受けているドラマを見る

小説だけでなく、良質なドラマを見ることでも社会的感受性を高めることができことを、オクラホマ大学の研究が示しています。

実験では、学生を2グループに分けた後、

  1. 賞を取ったドラマ
  2. ドキュメンタリー映画

をそれぞれ見てもらいました。

その後、2つのグループは共感力のテスト受けました。その結果、賞を取ったドラマを見たグループは、ドキュメンタリーを見たグループよりも共感力のテストで高い得点を記録しています。

優れたドラマは、文学小説同様に人間関係の描写に長けています。複雑な人間関係や感情を読む疑似体験をすることで、社会的感受性を高めることができるのです。

また、ほかの研究でも、ドキュメンタリー映画には社会的感受性を高める効果は確認されませんでした。やはり、社会的感受性を高めるためには質の高いドラマを見ることをおすすめします。

コミュニケーションのテクニックを学ぶ

社会的感受性を高める3つ目の方法は、コミュニケーションのテクニックを学ぶことです。コミュニケーションのために有用なテクニックは多く存在します。それらを学ぶことで、社会的感受性を高めることができます。

ここでは、コミュニケーションに役立つ2つのテクニックを紹介します。

  1. 傾聴の練習をする:傾聴とは話に集中して耳を傾けることですが、内容を聞くだけに限りません。正しい傾聴は相手の声のトーン、速さ、大きさなどに注意を払います。そうすることで、本当に言おうとしていることを読み取ることができるようになります。
  2. 質問する:人の気持ちが読めるようになるためには、本当にそういう感情だったのかということを後から聴くことが役に立ちます。もし引っかかる反応をされたときがあった場合、「そのときにどういう感情だったか?」といった質問を後にしてみましょう。正しかったとしても間違っていたとしても、フィードバックを受けて学びに変えることができます。

好奇心を持つ

社会的感受性を高める4つ目の方法は、好奇心を持つことです。好奇心を持ちオープンマインドで接することができれば、より多くに気づき、学ぶことができます。

好奇心を持って接することで、相手の表情やしぐさの機微をよく観察するようになります。観察力が高まると、今までは気づけなかった細かなサインの意味や隠れた意図がわかるようになってきます。

他者の傾向をつかみ、学べば学ぶほどニーズをよく理解できるようになります。学び改善していけば、さらに深い心理を読み取ることができるようになるでしょう。

自己認識力を高める

社会的感受性を高める5つ目の方法は、自己認識力を高めることです。自己認識力とは、自分の思考や感情に気づく能力と言えます。

自分の感情に気付くことで、より他者の感情を理解しやすくなります。ここでは、自己認識力を高めるテクニックを3つ紹介します。

  1. 自分の感情を良い悪いで見ない:感情を「良い」「悪い」で区別する人は多いです。しかし、感情をレッテル貼りをしてしまうと、自分が本当に何を感じているかわからなくなってしまいます。感情は大切なことを気づかせようとしています。感情にレッテルを貼ることを避け、振り回されることなく耳を傾けましょう。
  2. 感情を身体で感じる:感情が沸き上がると体に色々な感覚が起こります。胃がきゅっと固くなったり、呼吸が荒くなったりといった感覚に過剰反応してしまうと、感情を正確に把握することが困難になります。自分の感覚と感情の両方を認識し、何が起きているか捉えることで自己認識力高めることができるのです。
  3. 立ち止まって「なぜそう感じるか」を自問自答する:感情は脈絡なく沸き上がります。それがどこからきているかを探究することで自己認識力を大きく高めることができます。

出典:『EQ 2.0 (「心の知能指数」を高める66のテクニック)

まとめ

コミュニケーションスキルの一つである「社会的感受性」について、その役割を紹介しました。社会的感受性について、次のようにまとめることができます。

  • 社会的感受性はチームにとって非常に重要である
  • 社会的感受性が高いリーダーはチームのパフォーマンスを上げる
  • 社会的感受性は小説を読む、ドラマを見る、理論を学ぶ、好奇心を持つ、自己認識力を高めるといった訓練によって向上することができる

社会的感受性は、多様化していく世界にとってますます重要になっていくスキルと言えます。幸い、社会的感受性は鍛えることができるスキルです。今回紹介した内容を、日常生活やビジネス場面でぜひお役立てください。

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組織コンサルタント。累計1,000名超国内トップクラスのEQの専門家。(著)組織の感情を変える〜リーダーとチームを伸ばす新EQマネジメント。株式会社グロースウェル 代表取締役。

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