「EQの知識を本で深めたいけど、どの本を読めば良いかわからない……」そう悩んではいませんか?
近年、ビジネスや教育の現場で広く知られるようになったEQ。日本でも、英語を翻訳したものから、基礎的な知識に関連するものまで、幅広い種類の書籍があります。
しかし、中には学術的な要素に特化した内容の本もあり、初学者には難解である可能性があることも事実。そこで今回は、EQの基本を学びたい人、実践的にEQを深めたい人それぞれに適したEQの本を紹介します。
目次
EQとは「感情知能」
EQは「Emotional Intelligence Quotient」の略称です。日本語で「感情知能」と呼ばれ、最近ではビジネス社会だけでなく、人間関係をより良くするためのコミュニケーションスキルとして重要視されている能力です。
EQが高い人は、次のような能力に長けている傾向があると言われています。
- 自分の感情の状態を正確に把握している
- 自分の感情をうまく管理できている
- 相手の感情を知覚する能力に長けている
つまり、EQとは「自分の感情を正確に知り、コントロールできるだけでなく、他者の感情の状態を知覚できる能力」と言えるでしょう。
EQを構成する3つの知能
EQは感情の単一的な部分だけで構成されているわけではなく、主に次の3つの知能から成り立っています。
1つ目の知能は「心的知能」です。心内知能とは、「自分の状態を自分で把握できる能力」です。自分の心を理解できなければ、感情の管理や表現がうまくできません。
2つ目の知能は「状況判断知能」です。状況判断知能とは「自分と相手の様子を客観的に把握できる能力」です。自分の気持ちを理解して適切に伝えられても、相手の状況を判断できなければ、良好なコミュニケーションとなりません。
3つ目の知能は「対人関係知能」です。自分の考えを素直に話すだけでは、相手から誤解されたり拒絶されたりする可能性があります。そのため、伝えたい内容をどのような順序で話すかという知識やテクニックの能力の要素も感情知能には含まれます。
EQが今注目を集めている理由
近年EQが注目を集めている理由の一つとして、ビジネス社会におけるコミュニケーション能力の重要性の高まりが考えられます。アメリカの学術研究においても、「IQが高くてもビジネスで成功するとは限らないけれど、社会で活躍する人の多くはEQが高い」と明らかになりました。
また、EQはIQとは違い後天的な能力であるため、大人になってからでも伸ばせることも、EQが注目されている要因の一つです。「人間関係をよりよくしたい」と願うすべての人々にとって、EQを向上させる学びの場やトレーニングなどが注目を集めています。
EQに関するおすすめの本6選
EQの本と言っても、初学者向けの内容から学術的な内容までさまざまです。そこで、ここではEQに関するおすすめの本6冊を、書籍の要約や対象ごとに紹介します。
EQ〜こころの知能指数
画像引用元:Amazon
EQ理論の先駆者ともいえる、ダニエル・ゴードマンの著作です。「EQとは何でありどうして重要なのか、何の役に立つのか、どうすればEQを高めるのか」について、体系的に理解できます。
この本は1995年にアメリカで出版され、1998年に日本語版の文庫化がなされましたが、原著が誕生してから25年が経った今(2020年)でもまったく色あせない名著です。むしろ、ダニエルゴールマン氏が危惧していたEQの不足や未熟さは現代においても如実であり、ダニエルゴールマン氏の見解はAI・IOT全盛の時代へと進む現代人に対するアンチテーゼともいえます。
EQを体系的に学びたい人におすすめ
本書は、EQの基本的な知識を学びたい人におすすめの本です。具体的なエピソードが充実しており、その事例は夫婦間のトラブルといった身近な話題から、科学的な議論や考察まで多種多様。「頭が良くても社会で成功するとは限らない」「頭がよい人間が人付き合いも上手とは限らない」といった主張の根拠を、誰もが理解できるようなエピソードと一緒に理解できます。
「自分自身の感情を知りコントロールする大切さについてなんとなくわかっているが、突き詰めて考えるチャンスがない」という人は、本書がEQの知識の導入としても役立つでしょう。
ただし、巻末に参考文献リストや引用がないので、芋ずる式に他の文献や書籍に当たりたい人は、自分で書籍を別に調べる必要があります。
EQ 2.0 :「心の知能指数」を高める66のテクニック
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「EQのテストを受けて、本書を読んでトレーニングし、6カ月後に任意で再度EQテストを受けて変化を確認する」という本です。
巻末にEQテストを受けるためのコードが付属していており、それにアクセスしてテストを受けると、自分のEQの改善点が読むべき本のページと一緒に表示されます。
テストは2回受けられますが、中古本の場合はコードが使用済みで使えないかもしれないので、本書の魅力をフル活用したい人は新品を購入しましょう。
EQの能力を診断したい人におすすめ
本書は、EQを利用したテクニック本というよりは、自分自身のEQを診断して内省するのに有用です。EQについて多少の知識はあるが、なかなか生活の中で行動に活かせていない」という人が自分の現在地を知り、中長期的にEQを伸ばすのに役立ちます。
EQテストはかなりカジュアルで、15分ほどで回答可能です。「普段からこういう考えをしているか?」という問いに、NeverからAlwaysの5択から選ぶ形式になっています。特に個人情報を登録する必要はありませんし、問題数も20問程度なので気軽に測定できます。
できるリーダーは部下の「感情」を動かす
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著者の田辺康広氏は、航空会社職員として赴任したアメリカでEQ(心の知性)を知り、EQを普及するNPO法人を立ち上げた経験のある人物。本書は、ビジネスにおけるEQの導入事例やAI時代の共感型リーダーの必要性を予測する内容です。
日本人が現在、苦境に立たされている理由の一端を、高度経済成長やバブル崩壊の歴史も踏まえながら解き明かしています。そして、早急に取り戻さなければならない能力・生き方・知恵として、EQが説明されています。
EQをビジネスで活かしたい人におすすめ
リーダーを目指す人だけでなく、自分をよりよく活かしたい、自分をさらに理解したいと思っている人に読んで欲しい本です。特に、ビジネスで困難に直面している人や岐路に立たされている人には、指針やヒントを与えてくれます。
EQに関心があるけれど小難しい内容は嫌だという人や、EQの本は何冊か読んだけれども実践的でないと思っている人に向いている内容です。
EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方
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ダニエル・ゴールマンの世界的ベストセラー『Primal Leadership』の日本語翻訳版です。アメリカで3,800人の企業幹部を調査した結果をベースに、成功者たちがいかに感情を利用し組織を成功に導いたのかという考察が記されている点が具体性に富んでいます。
実例を示したうえで「自己管理」「社会認識」「人間関係」など、リーダーとなるため、あるいはリーダーを育てるためのポイントが明らかにされています。欧米有名企業の実態を豊富に盛り込んだ、実践的かつ画期的なリーダーシップ論です。
EQをリーダーシップに活かしたい人におすすめ
リーダーに必要な能力とは何かという疑問に答えてくれる本著は、EQの学びリーダーシップとして活かしたい人におすすめです。
すばらしい経営戦略があっても部下が動いてくれなければ意味はありません。逆に、部下の反発をかえば組織の状態が悪化する可能性もあります。本著では、いかにして部下のモチベーションを向上させ変化を引き起こせるか、そのためのアイディアや練習方法が詰まっています。
大切なのは目の前の人間関係と真剣に向き合うことだとあらためて認識できたできる1冊となっており、集団の規模や種類を問わず、リーダーとなる人やリーダーを目指す人達にはぜひ読んで欲しい内容です。
サーチ・インサイド・ユアセルフ
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Googleの社内プログラムとして実際におこなわれているマインドフルネスに関する入門書です。なぜGoogle社員は楽しく創造的に、柔軟性をもちながら優れた成果をあげられるのかという観点から、EQにおけるマインドフルネスを深く解説しています。
本書の内容は精神的な効果だけでなく科学的な根拠を含めて発信しているため、宗教色なく気軽にEQを高めることが可能です。
EQのマインドフルネスについて学びたい人におすすめ
EQを向上させるために、マインドフルネスを生活に取り入れたい初学者におすすめです。瞑想に関する書籍は具体性を欠くものも多く存在しますが、本書はかなり実践的にマインドフルの方法について論じています。
マインドフルネスは、日常生活全体をよりよく導いてくれるため、ビジネスパーソンやリーダーシップ関係なく、さまざまなバックグラウンドの人に試してもらえます。
「とりあえずマインドフルネスをやってみたい」という人でも、本書にはいろいろなマインドフルネスやり方が掲載されているので、自分に合った手法を試しながら実践的にEQを向上させることが可能です。
本当のかしこさとは何か
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日本心理学会による、日本のEQやSEL(社会性・情動スキルの教育)について書かれた本です。章ごとに、心理学に知見のある学者が日本におけるEQやSELの研究について書いています。
EQを学術的見地から学びたい人におすすめ
心理学の専門家で学術的な見地からEQについて深めたい人向けです。しかし、一般の人には難解な場合があり、実用のイメージは持ちづらいかもしれません。
ただ、日本発のEQ本は希少性が高いため、一般の書籍で物足りない人や専門的にEQについて学んでいる人にとっては、新しい気づきがあるでしょう。
日常生活でEQの能力を伸ばす方法
ここまで、EQを学べる本を紹介しました。では、日常生活でEQの能力を伸ばす方法はないのでしょうか?ここでは、読書以外に日常生活でEQを伸ばす方法について3種類紹介します。
感情日記をつける
1つ目の方法は「感情日記をつける」という方法です。日記を書く行為はEQを高めるために有効と言われています。自分の行動と感情には関連性があるため、日記を書く行為は「なぜその行動が生まれて、あの気持ちが生まれたのか」の客観的な分析に役立つからです。
日記を書く際には、漠然と出来事や感情を書くのではなく、「なぜ」「どうして」という理由も一緒に記入することがポイントです。理由を一緒に書くことで、自分の感情をより冷静かつ前向きな視点から見直せるからです。
怒りや葛藤などのネガティブな感情との付き合い方は、慣れないうちはなかなか直視するのが難しい場合もあります。しかし、紙に書いて可視化できるようになると、感情のコントロール力や感情の表現力が高まり、徐々にEQが向上していることを実感できるでしょう。
傾聴スキルを学ぶ
2つ目の方法は「傾聴スキルを学ぶ」です。人の話をしっかりと聴ける姿勢は、他者への共感力アップに寄与します。なぜなら、相手の感情の理解は、相手の思いを言葉で直接聴くとさらに正確な理解につながるからです。
そして、相手の話を聴く際には、とくに次のことを意識して聴いてみましょう。
- 相手が話しているときの気持ち
- 自分が相手にかけられる言葉
- 自分が相手にかけるべきでない言葉
- 自分は相手の話をただ聴くだけで十分である可能性
また、話を聴く際は、次のような言語以外の側面を意識してみると、より心地良いコミュニケーションを相手と取れるようになってきます。
- 相槌を適切なタイミングで打つ
- 相手の言葉を受け取って適切に返す
- 適度に相手の目を見る
このように、言葉だけでなく非言語の面でも相手の気持ちに共感している姿勢を示せれば、「自分の話をしっかり聴いてくれている」というあなたの熱意が、相手に伝わりやすくなります。
純文学を読む
3つ目は「純文学を読む」です。純文学は、傾聴スキルと同様に、EQにおいて重要な要素の一つである「共感力」のスキルアップに役立ちます。
ニュースクール大学の研究で、「大衆小説」「純文学」「ノンフィクション」などのジャンルにグループ分けをし、「他者に感情移入ができるかどうか」のチェックテストを実施しました。チェックテストの結果、純文学を読んだ実験のグループのみ、共感力が飛躍的に上がることが判明。つまり、純文学の「フィクションの中で複雑な心の機微を描いている」という特性が、読む人の心の機微をも揺れ動かしたと分かったのです。
したがって、「共感力を手っ取り早く高めたい」という人は、純文学に挑戦してみると他者への気持ちを理解することに役立つかもしれません。
まとめ
今回は、EQについて学べる本を紹介しました。要点は次のとおりです。
- EQの本を読むことをとおしてEQの能力を測定・トレーニングできる
- EQの本は難易度のレベルに差があるので、それぞれの理解度に合わせて選ぶ
- 本を読む以外にも「日記」「傾聴スキル」「純文学の読書」でEQは伸ばせる
EQは最近注目を集めているコミュニケーション能力なので、日本でも書籍から学べる機会が増えました。しかし、読者層に応じて、著作内容には適性があります。
ご自分のEQの理解度にあわせた有益な情報を得るためにも、今回紹介した内容をご参考になさってみてください。